マラケシュの一日
4月1日~5日
マラケシュというところは、ぼーっと過ごすには調度良い所だ。
この時期は寒くも暑くもない。そして天気は良い。
宿のテラスで買ってきた果物を食べて読書したり昼寝したり。
とくにコレという観光地もなく、でも物価は安いので南米から流れてきたものの休息地としては最高かもしれない。
ただ休んどけといわれるとなかなか暇なものだが、なんせフナ広場では刺激的なイベントが毎夜あるのだから退屈はしない。
「今日は何を食おうかな」
朝からこんなことを考えながら、面倒な客引きの巣食う屋台街を思い浮かべる。
そんなマラケシュで、僕らは久々の休息をねんごろにとっていた。
マラケシュの一日は、これ以上ない寝ぼけ眼から始まる。
僕達の宿の部屋はイスラム建築にありげな小さい窓しかない。
中庭に面した小さい窓なものだから光が入ってこない。
朝がいつ来たのかなんて気づきもしない。
意識がはっきりしてくると腹の虫がぐうぐうなっている。
宿から一番近いキオスクでたまごサンドとシロップ牛乳を飲む。2人で100円ちょいだ。
それから果物屋でオレンジとキウイを買い、宿に戻って読書なんかして過ごす。
風呂に入って一息ついているともう夕方だ。
洗濯物を干し、夕暮れのフナ広場に向かう。
19時前後に屋台が立ち始めるので、その間をぷらぷら散歩する。
ちょっとでも立ち止まったり、目が合ってしまうと早速客引き連中に囲まれる。
これほど鬱陶しいことはないと思えるくらいの最上級のウザさ。一方的な駆け引き、へりくだったと思えばわざとらしい舌打ち。時には審判が見ていない時のサッカー選手みたいなわざとらしい物理的攻撃なんかもある。
客引きについていき、席に着こうものならもう相手にされない。あとは早く食って金払って消えてくれと言わんばかりの態度だ。
だけどこれがあるから、フナ広場は刺激的で飽きさせない。
屋台を2軒はしごして、最後はハリラというスープで〆る。
まだ小腹が空いているのでほっつき歩きながらデザートを探す。
ケーキとコーヒーを飲んだら喧騒の余韻を引き込みつつ宿に帰って寝る。
これがマラケシュの一日。
とくに何をしたわけではないが、これがマラケシュという町の楽しみ方だ。
ただ歩いているだけでも、そこら中で喜怒哀楽まざりあった人間の感情すべてが見られる。
客の取り合いで小突き合いの喧嘩をする客引きの兄ちゃんたち、横目でちらっと見ただけで金を巻き上げる大道芸人と喧嘩する白人、オレンジジュース屋の胡散臭い笑顔、金をよこせと言わんばかりの乞食、ミントティーを囲んで談笑する親父達、その真ん中にいる。
そんなマラケシュの風景
マラケシュ、たまりません。