ワルザザートとアイト・ベン・ハッドゥとビールと

4月11~12日

 

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マラケシュは不二子ちゃんみたいな町だった。

一見美しく華々しいが、一度ハマりこんだら骨までしゃぶり尽くされそうな怖さがある。

そんなことよりルパン3世実写化というニュースがもっと怖い今日このごろ、我らはワルザザートへ旅立つ。

 

ワルザザートまでは5時間近い道程、そして有名なゲロ吐き道。

ぐねんぐねんの山道、恐るべくは吐きまくる現地モロッコ人。

「もうね、吐きまくりですよ」

そう教えてくれた日本人旅行者は真横で吐かれたという。

やはり日本人は乗り物慣れしているので吐くといったらよっぽどのこと。ネパールの長距離バスでネパール人のゲロの大合唱という惨劇を目の当たりにしてからというもの、ゲロ吐き道の恐ろしさは身にしみている。

僕は車酔いは強いほうだが致命的な弱点がある。

『もらいゲロ』だ。もらいゲロとは他人のゲロに連鎖反応をしてしまうパブロフの犬なみのそれはそれは悲しい選ばれし者の宿命である。

なので生まれて初めて酔い止めを飲んだ。子供の頃から酔い止めなんぞを飲む女々しい輩を鼻で笑っていたが、異国のバスの中でもらいゲロをしてしまうという孫の代まで持ち込みそうなトラウマを背負い込む勇気がなかった。

 

酔い止めのおかげで8時半の出発からぐっすり眠り込んだ。

・・・眠る?

子供の頃から健康だけが取り柄な僕は、一年に10錠も薬を飲まない。それも正露丸

風邪などは精神力で看破する。今まで精神力で看破できなかったものはインフルエンザと盲腸だけである。

そんな薬いらずの親孝行な身体は、毛利小五郎レベルの薬が効きやすい体質だった。

「・・・気持ち悪い」

バスから降りて程なく、酔い止めのせいで気持ち悪くなってしまった。酔いを止めすぎてひっくり返って気持ち悪くなった。本末顛倒だ。

眠気と吐き気でふらふらしながらもツアー会社に向かう。

 

 

 

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ワルザザートには日本人御用達のツアー会社があるのだが、サハラ砂漠2泊3日ツアーが1500DHとむっちゃくちゃリッチなシロモノであった。

ということでちゃんと調べた結果、自分たちで砂漠近くまで行ってしまえば安くなるらしい。まあ時間はあるしそうすることに。

 

 

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ワルザザートの町は特に何もない。

すぐ近くにアイト・ベン・ハッドゥという世界遺産があるので、翌日CTMバスチケットをとってから向かった。

 

 

アイト・ベン・ハッドゥ

 

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目指す世界遺産ワルザザートからバスとグランタクシーを乗り継いで向かう。

地球の歩き方の仰るとおり、ワルザザート民営バスターミナルからマラケシュ行きのボロバスに乗る。

モロッコ全般にいえるがモロッコは旅人にやさしくない。看板や通り名はほとんど見当たらず、現地の人用の必要最低限な表記しか無い。しかもあったとしてもアラビア文字かフランス語なのだ。

ちょいとよった旅人なのでもちろん文句をいう資格など無いので、ここは黙って己の力で行くしか無い。モロッコは久々に「旅っぽい旅」ができる。

といっても方向ド音痴のため迷いまくり。人に聞いても英語がさっぱり。とくにワルザザートは街並みが似通っているため何度も迷子になった。

民営バスターミナルでとりあえず聞きまくりボロバスに乗り込る。

 

 

アイト・ベン・ハッドゥに近い町OuedMalehで下りる。5DH

そこからグランタクシーというものに乗るのだがこいつが曲者。

ボロい日焼けたベンツっぽいのがグランタクシーだが、料金があってないようなもの。要交渉だ。

乗り合いタクシーに近く、人数が多ければ多いほど安くなる。

行きは地球の歩き方曰く10DH。交渉するも運転手のおじさんはちんぷんかんぷん。

そこに寄ってきた英語ペラペラな怪しいおやじ。

2人でゴニョゴニョしたあと「往復だと2人で50DHだ。向こうで1時間待ってやる」といってきた。

普通なら往復40DHだが一時間待ってくれて+10DHということで、まあ良いかなと思い乗り込む。

アイト・ベン・ハッドゥまでは20分くらいガタガタ道を行く。

 

 

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アイト・ベン・ハッドゥに到着。運転手のおじさんは金を出せと言ってくる。

「ここで待ってくれるんじゃないの?」

運転手のおじさんは他の客がまだいるのに先払いだとかいうので、説明してみるももちろん英語は通じない。

結局おじさんは10DHずつ受け取って行ってしまった。

「まあ、待たせてゆっくり見れないのもつまんないし、また拾えばいいか」

と、あとで後悔することも知らずにおじさんを見送った。

 

 

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アイト・ベン・ハッドゥはモロッコで一番美しい町だといわれているらしい。

そのステレオタイプなアラビア~ンな雰囲気の元要塞村は「アラビアのロレンス」や「グラディエーター」といった映画のロケ地にもなった。

一面砂漠のようだが、アイト・ベン・ハッドゥの目の前には川が流れている。川の手前がおみやげ屋やレストランになっている。

 

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川が子どもたちの遊び場なのは世界共通

 

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川を渡った方の入り口では入場料金の記載がないにも関わらず、ガキンチョが金を徴収に来る。しかし新設された橋側から入ると何も言われなかった。あとでわかったが、ガキンチョが徴収していたのはアイト・ベン・ハッドゥ内にある施設のものだった。紛らわしい。

 

 

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要塞というだけあって中は迷路のようだ。

というかモロッコに来てからというものどこも迷路に思える。マラケシュもエッサウィラも巨大な迷路だった。ここまで自分の居場所がどこかすらわからなくなるのはモロッコが初めてだ。

アイト・ベン・ハッドゥ内はちゃんと看板があるのでそんなに迷わない。

世界遺産だがまだここで生活している人もいる。なので道かと思って入り込んだら人の家だったりする。日本でいえば姫路城の中に住んでいるようなものなので、そう思うとうるさくてかなわないだろう。

 

 

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頂上の砦に向かう。

糞暑い中やっとこさ登り切ると素晴らしい景色が迎えてくれる。

荒野にぽつんぽつんとあるオアシスや、ブロックみたいな家々が見渡せる。

 

 

頂上からの景色

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意外に小さいアイト・ベン・ハッドゥは1時間くらいあれば大抵は回れる。

駐車場に戻ると、グランタクシーが一台もない。

ひなたぼっこ中のおっちゃんに聞くと「その辺に走ってんの捕まえな!」

てっきり駐車場で見慣れた客引き共が手ぐすね引いて待っていると思っていたが大失敗だ。

なぜなら、たくさんの競争を勝ち抜かせることによって適正価格で乗れるからだ。

わいわい僕達を取り合うおっさんたちに任せておけば自ずと安く乗れるのだが、走り行くタクシーはそうも行かない。

 

何度か止めるも案の定のふっかけである。

バス亭からここまで来る時は10DHだったタクシー代が、60DHからひどいのは100DHだ。

完全に足元を見透かされている。

よくよく考えるとワルザザートからの乗合バスをあそこで降りたのは僕達だけだった。

周りにうじゃうじゃいる白人グループは皆ワルザザートから来たであろうツアーバスだ。

そう、こんな移動方法で来る奴が少なすぎるのだ。だからタクシーは待っていない。

需要と供給。資本主義国家に生を受けたくせにその大前提を忘れていた。

 

 

その後、たぶんちゃんとしたタクシー会社所属っぽいタクシーでワルザザートまで一人40DHで帰った。

やはりバス停から往復で頼んで待っていてもらうか、ワルザザートからツアーかグランタクシー往復で来る方が良いだろう。

 

 

 

そんなアイト・ベン・ハッドゥは行き帰りで凄い疲れた。

その疲れを癒やすのは「お酒=アルコール」である。

この町はお酒が売っておるのだ。イスラム教国家ではお酒はあまりよろしいものではない。

だがワルザザートでは中心街のスーパーマーケットに普通に売っているらしい。

これは行くしかあるまい。南米で水より飲んでいたビールちゃんは体からすっかり抜けきっていた。

 

 

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中心街のド真ん中にそれはあった。

路地の奥まったところの鉄格子のさらに奥にあるのかと思っていたが至ってオープン。

しかもけっこう混んでいるではないか。

モロッコ人が大量にワインやビールやウイスキーを買い込んでいる。

でも買う量が尋常ではない。ホテルかなんかの仕入れなのだろう。

それでも中には確実にお家で楽しむようのビールを買って帰るおっさんたちもいるので、モロッコは多少ゆるいんだろうか?

ビールは一本15DH(180円くらい)だから高い!コーラ500mlが5.5DHなのに。

でもちゃっかり4本買って帰る。帰り道もかなり早歩き。

本当はその場で一気飲みしたい気分だが、さすがにイスラム教国家でそれは厳禁だ(日本でもじゃ!)

ちなみに氷も売っており10DH、ウイスキー類は日本と同じくらいの値段。

 

 

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待ちに待ったモロッコビールのお味は・・・微妙。

STORKの方は多少いけた。値段の割にはあまりうまくはないが、なんせ2週間ぶりのアルコールだ。血管にビールが流れていくのがわかる。嗚呼、アル中になるまいか・・・

 

 

 

 

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そんなワルザザートの夜は宿のレストランで親父達に混じってサッカーを見るのであった。