メルズーガでサハラ砂漠に呑まれる
4月18日~
トドラ峡谷を辛くも抜け出し、目指すはメルズーガ。
ティネリール-エルフード 民営バス30DH
エルフード-リッサニ グランタクシー8DH
リッサニ-メルズーガ グランタクシー15DH
と聞かされていたが、やっぱりモロッコ。
エルフードのリッサニ行きタクシー乗り場で強敵現る。
麦わら帽子をかぶったオヤジがタクシーの元締めか料金徴収係かしらないが「20DH!!」とふっかかてくる。モロッコでふっかけられることはあいさつと同義であるので、適当にあしらうもこのオヤジ強かった。結局これもモロッコお約束「外国人料金」なのか、15DH払わされる。あとから来た日本人も粘って10DHだった。
こういったボッタクリは当たり前だが物価の安い国でよく起こる。でも大した額ではない。
先進国はちゃんと掲示板や値札通りで物事は進んでいく。でも高い。
物価が高いということはそういったものも含まれているのだ!
と、思うと少し物価が高い国でも仕方がないかなと思えるようになった。ありがとうモロッコ。
メルズーガ
ついに辿り着いたサハラ砂漠。
アラビア語でサハラとは砂漠という意味なので「砂漠砂漠」になってしまうけど気にしない。
アフリカ大陸の3分の1を占拠するサハラ砂漠は、遠目でもわかるくらいの砂丘が出迎えてくれる。
砂漠から徒歩10分のワイルドネスロッジでツアーを組み、砂漠に向かう。
サハラ砂漠ツアー
午後5時にラクダみたいなおじさんがラクダを連れてやってきた。
これからこのラクダちゃんたちと1泊2日砂漠ツアーである(250DH)
これが噂のラクダちゃん
あらゆる旅人のおしりを痛めつけるというラクダの乗り心地はサハラからの渇いた風のウワサで聞いていた。
ラクダは前足と後ろ足を同時に出して歩くため揺れがひどいという。
コブにつかまってラクダに乗り込む。ちなみにコブに水が入っているというのは間違いである。
僕の愛駱駝は一番後ろの一番ちっこい奴。
やる気がなく、常に皆から遅れ、前のラクダに半ば引っ張ってもらい、そのくせカーブではショートカットするという非常に人間臭い奴だったが普通に臭い。
ラクダの噂には続きがある。
「15分で飽きる」と。
バカな!
砂漠でラクダなんて贅沢なひとときをたった15分で飽きるとは情けない奴らだ
10分で・・・飽きた
※写真はセクシーなラクダちゃんの正座ヒップ
ケツ痛い。酔う。下りが怖い。うんこしまくり。
一応毛布が敷いてあるが背骨が激しい揺れとともに股間を襲う。
江戸時代の拷問みたいだ。
ラクダの背骨で尻を削り取られながら、シルクロードを歩んだ昔の人々をとても尊敬してきた。
おそらくマルコポーロの尻はガッチガチだったと思う。
毎日こんなに揺らされていたら「ジパング」と聞き間違えるはずだ。ラクダの乗り心地には遠い日本も影響している・・・ことはない。
砂漠には道がある。
何もないはずの砂漠。しかし、道があるのだ。
ラクダのウンコロードだ。そこら中コロコロ落ちている。
それが黒いまだらの道を成していた。
ラクダの下をフンコロガシが忙しそうに駆け抜ける。
これも実際に行ってみないとわからないことだ。
1時間半ほどラクダに激しく揺られるとテントに着いた。
テントは思っていた通りの感じではあったが、意外に過ごしやすかった。
しかし生憎の悪天候。
風が強く砂が吹き荒れ、夕日も星ももっさりとぼかしてしまった。
チリのアタカマ砂漠は好天に恵まれたが、サハラ砂漠は何かと運が悪かった。
ツアーもスペイン人のバカンスと重なり一日待ち、さらにフェズ行きのバスも満員でさらに1日待つ羽目に。この旅始めての「停滞」というやつだ。
朝5時半
快晴である。
風の音しかしない延々と広がる砂漠に佇む。
砂漠は怖かった。海と似ている。
「ここで置き去りにされたら・・・」という妄想が頭の中に勝手に湧いてくる。
朝日に照らされた砂丘の波を見ても、その思いは拭えなかった。
サハラ砂漠の砂は浜辺の砂よりもずっとサラサラであった。
そのあまりの細かさは旅人たちのカメラの内部に入り込み破壊してしまうほどだ。
砂は気持ちのよいほどサラサラとすぐ流れていく。
水のようななめらかな砂に足を置くと、砂はゆっくりと沈み足を呑み込んでいく。
砂漠の真ん中で足をうずめていると、自分がちっぽけな針のように思えてくる。
巨大な砂漠は何かひとつの物体のように見えた。
ラクダとおじさん
さすがのラクダはこの砂漠の中にほっとかれていても何食わぬ顔で反芻し続けていた。
ベルベル人のおじさんは慣れた手つきでラクダに縄をかける。
砂漠の民は強い。
朝の砂漠の寒さに震える僕に笑いかけたおじさんは用意が終わると砂の上に寝っ転がった。
帰りも1時間半ラクダを存分に堪能した。
日が差し始める9時半に宿にたどり着く。
尻と腿を引きずられるような痛み。
たぶん2,3日は続くであろう。
ラクダは何事もなかったようにくちゃくちゃ反芻をし始めた。
ベルベル民族音楽
15分位で演奏が終わるとだるそうに座り込んだ。
これもベルベル人らしさ。
ツアーやバスの混雑でだいぶ時間を持て余したので、久しぶりに読書に没頭する。
砂漠の町は日中何もしない。それにかぎる。
そして僕らは迷宮都市フェズに向かう。
サハラ砂漠に行く人への推薦図書
砂漠ではなく浜辺が舞台なのだが、「砂」をここまで哲学的に、そしてグロテスクに書けるのはさすが安部公房といえる。
物語はある不思議な浜辺の集落に主人公が閉じ込められるという変わった状況から始まる。
そこにはヒッチコックの「鳥」のような内臓からゾワゾワくる恐怖を砂が演出している。
この本を読んでいけば、サラサラのサハラ砂漠の砂を足に感じた時にちょっと気持ち悪くなるに違いない。