変わりゆくホーチミン

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ホイアンから26時間もバスに揺られてホーチミン。
長えよベトナムさんよ!ちなみにベトナムは日本の0.8倍ほどの大きさ。ホイアンはちょうどド真ん中にあるので日本でいえば岐阜くらいか。ホーチミンは福岡くらいとするとけっこうな距離ではある。

それにしても26時間は長い。夕方6時に出発して、朝ニャチャンというリゾート地で1時間待たされて、そこからバスを乗り換え12時間。26時間もあれば加山雄三はサライを2時間も歌う羽目になる。

 


ホーチミンはベトナム最大の都市ではあるが、首都ではない。首都は北にあるハノイ。あちらは政治の都市、こちらは商業の都市という感じらしい。

ホーチミンというのは言うまでもなくベトナム独立の立役者のホー・チ・ミン(通称ホーおじさん)の名である。旧名はサイゴン。安保世代と僕のような戦争映画マニアであればこちらのほうがしっくりくる。

 

長らくフランスの植民地であったベトナムは、第2次世界大戦終決のドサクサにホーおじさんが独立を宣言した。そんなことヨーロッパでひいこらいっていたフランスが許すはずもなく、どえらい勢いで攻めこまれることになる。その後、7年間も熾烈な戦いが繰り広げられ、最終的にディエン・ビエン・フーでフランスを超絶ブラック人海作戦で粉砕し見事独立を勝ち取る・・・かにみえた。

 

ドミノ理論を盲信するUSAはそんなことは許さない。南ベトナムの中心地サイゴンに傀儡政権を作り、無理矢理国家を分断してしまう。かくして始まったのがベトナム戦争だ。
超大国USAを執拗にローキックだけで攻める武蔵のように闘いぬいた北ベトナムは、ついに判定勝ちでアメリカを追い払う。そして念願の国家統一。共産党率いる北ベトナムは、アメリカと資本主義の拠点であったサイゴンをホーチミンと改名したのであった。

 

 

 

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そんなホーチミンだが僕はこれで3回目。
なんせ記念すべき初海外旅行がベトナムはホーチミンだったからだ。
あの頃はビビりまくって空港で半泣きになったりしていたが、今やホーチミンは馴染みのTSUTAYAくらい詳しい。
「嫁よ。ホーチミンはまかせんしゃい」
そう自慢気に言い放った僕がずんずん歩いて行くと・・・・

 

 

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あれ?
町のメインストリートが無い。
超高級ホテルひしめく町の中心部と日本でいう銀座のドンコイ通りを結ぶメインストリートには高い壁、そして見慣れた国旗。
どうやら日本企業主体でこの町のド真ん中に地下鉄を建設するようだ。地下鉄の上には超高層ビルと大型ショッピングモールまでできるという。


しかしなんでまたこのベトナムで一番華やかなメインストリートをぶっ潰すのか?
僕の行きつけだったぼったくらない国営デパートや築100年以上の歴史あるホテルまで更地にしてしまうそうだ。う~んこういうところが独裁政権の良い所なのかもしれない。


ああ、変わりゆく東南アジア。
2年前のアジア一周旅行からがらっと変わってしまった都市が多い。とくにバンコクやホーチミンなどの郊外の建設ラッシュはすごいものだった。
旅行者からすると東南アジア的な雰囲気が鉄骨とセメントでかき消されてしまいそうであまり好ましくはないのだが、これは豊かさの象徴であって現地の人からするといらないお世話だ。しかしこういった急激な発展はどこもかしこも同じような景色を創りだす。ちょうど日本の地方都市がどこも「イオンモールとその他」になってしまっているように。

 

 

ホーチミンといえばショッピング

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嫁さんに六本木にいる海老蔵くらい大見得を切ってしまったのに、道がさっぱりわからない。
迷いながらもホーチミン散策を楽しむ。
ホーチミンといえばショッピング。女性は特に楽しいはずだ。かわいい雑貨が(交渉によっては)大変安くお買い求めができる。

 

 

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ショッピングに疲れたらスイーツ。
ベトナムはフランス植民地だった名残でスイーツがとても美味しい。
おしゃれなカフェでバインフランと呼ばれるプリンとコーヒーで休憩するも良し、ちょっと路地に入ったところにあるチェー屋に行くも良し。

 

 

 

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男性諸君!決してホーチミンは女性だけが楽しい町ではない。
ここはヤンシン市場。ちなみに僕が世界で一番ウキウキする市場でもある。
なんとここはベトナム戦争時代の米軍の分捕り品が売っているのだ。

 

 

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市場の正面は工具などを売っている店ばかりで少々入りづらいが、奥に行くとそこには・・・

 

 

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「これはアメ公のヘルメット、これは戦闘機の照準器でこいつは爆撃機のなんかの部品、これはアメ公のジッポだよ~」
あやしい日本語を話すおっちゃん達が寄ってきたらそこはパラダイスだ。ホコリまみれのガラクタ(嫁曰く)を汚い雑巾で叩きながらおっちゃんが薦めてくる。

 

 

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特にここで人気なのはミリタリーウォッチとジッポだ。
ミリタリーウォッチは当時のアメリカ軍官給腕時計。ゼンマイ式で若干ちゃちい作りだ。別名ディスポーザブル(使い捨て)時計と呼ばれていた。

これはとてもアメリカらしい理由で、「どうせすぐ壊れるし修理するのもコストかかるから安くてまあまあな物をガンガン作っちゃおう」という悲しい誕生秘話がある。
僕は以前ここでディスポーザブル時計を買った。値切りまくって20ドルくらいで買ったが日本に帰ってすぐに壊れた。店員は本物だと言ってはいたが怪しいものだ。本物だとしてもプラスチック製で壊れやすかったようだし、真意の程は定かではない。

 

続いてジッポ。
僕はタバコは吸わないので全く興味はないのだが、ここでは一番の売れ筋らしい。しかしもちろん大半は偽物だ。ジッポなんてパチもんなら5ドルくらいで売っているので騙すには持ってこいだろう。心得た店では「レプリカモデル」なんて言って汚いジッポを売っている。
「こっちは本物だから高いで~す。こっちはレプリカだから安いで~す」なんて言ってくる。始めからパチモノを見せる辺りが小憎らしい。そして多分本物というのも怪しいけども。

どちらも「本物」なら50ドルくらいから。頑張って値切れば半額くらいには落とせそうだ。

 

 

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僕が買ったのは軍隊ワッペン。
このちゃちいクオリティーがたまらない。煤けて汚れているが店員曰く本物らしい。店員には「これはベトコン(南ベトナム解放民族戦線)、これは南ベトナム軍、これはUSA・・・」と教えてくれる。

軍隊では各部隊にオリジナルワッペンがあり、パラシュート背負った虎や爆弾を掴んだ鷲なんかのデザインが色々と想像力を膨らましてくれる。1枚100円なので、日本に帰って革ジャンにでもつけてみようかな。
あと店員曰くベトコンが使っていたというコップ。眉唾ものだがマジ顔の店員とコップのデザインが気に入ったので購入。

 

 

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やり手の店員さん。

他にもガスマスクや飯盒、水筒、軍靴、ナイフ、錆びた銃弾、爆弾を入れていた箱、火薬を詰めていた筒、グロい写真、謎の家族アルバム、当時の芸能人のプロマイドなどなど怪しいシロモノがザクザク置いてある。目利きならば掘り出し物があるかもしれない。
本当ならガスマスクとか爆撃機の照準器とか救急バックなんかが欲しいのだけれども、荷物になるし高そうなので泣く泣く我慢だ。「おしん」ばりに後ろ髪を引かれながら泣きそうな顔をしていると、嫁が退屈そうに言った。
「・・・これ売り物?」
嫁よ。そこが男のロマンなのだ。

 

 

 

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他にも骨董品店が並ぶレコンキエウ通りや、おみやげ屋だらけのベンタイン市場などなど、楽しいスポットは多い。
ちなみにベンタイン市場の土産屋のボッタクリかたは異常なので一度体験するのも良い。けどベトナム女性はキレたら手が付けられないのでほどほどに。一度値切りまくったところガラスのコップを振り上げて追いかけられたことがある。

 

 

 

そして夜はデタム通りでビールを煽る

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バックパッカーは安宿と飲み屋が犇めくデタム通りに群がる。
ここは安宿、両替屋、ツアー会社、コンビニ、レストラン、居酒屋、洒落たバー、お姉ちゃんの店が立ち並ぶバックパッカーにとって最高の居心地を誇る。

 

 

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デタム通りではビールが瓶で50円くらい!

プラスチックの椅子が適当に並べられている店だらけ。客引きの嵐に巻き込まれてみるのが楽しい。

揚げ春巻きなどのつまみも100円くらいなので、喧騒の中でわいわいやるのがデタム通り。


ホーチミンはそこまで広くはない。これほどまでぎゅっと詰まっているのはなかなか無いだろう。なので、ここを基点に回れば良い。

 

 

ジャパン・フェスティバル

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ベンタイン市場の近くを歩いていると見慣れた言葉が。
日本語が飛び交っているではないか。看板にはジャパン・フェスティバルと打ってある。
それにしてもすごい人だかりだ。

 

 

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ステージでは謎のコスプレした人がいる。

 

 

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いろんな県や会社のブースがある。

 

 

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なぜかアイドルもいた。
この生写真のためにも頑張って出世してくれ。

 

 

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フードコーナーにはたこ焼きや焼きそば、ラーメンなんかが売っていてさながら日本の縁日のようだ。
客層はほとんどが若者。
特に化粧品メーカーのブースが女の子で猛烈に混んでいた。
あとなぜかハンコ屋さんブースが大盛況だった。

 

 

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それにしてもホーチミンは何回来ても飽きないところだ。
飯も酒もうまいし安い。ホテルもダブルルーム12ドルでホットシャワー、エアコン、冷蔵庫、テレビ付き。
ということで結果3日間もだらだら過ごしていた。
これはすべてホーチミンが悪い。うん。