バックパッカーが日本社会へ順応するまで~③世界で見た労働観
「ああ、働きたくねえ」
これが帰国間近のバックパッカーの口癖だ。
もちろん世界一周の旅とか言って結局は好きなことして遊んでいるだけなので、精神的には夏休み終了を嘆く小学生とそこまで変わらない。
特に僕はヨーロッパや東南アジアのゆるい労働観に汚染され、完全に上図のような心境だった。
でも日本人に生まれたからこそこんな旅ができた。もちろんそれは日本の経済力のおかげである。
だがそれを維持するために日本人は働き詰めなのも確かだ。
世界GDP3位の輝きは、自分や家族との時間を犠牲にして成り立っている。
今回は世界で見てきた労働観を書いてみようと思う。
※これは労働意欲の低すぎる病的放浪癖を持ついちバックパッカーの無力な当て付けであり愚痴であり明日仕事行きたくねえなあ~
世界の労働観
帰国してハローワークで色々見てみたが、やはり現実は厳しい。
給料が良いと思えば年間休日90日、殺す気か!
世界を旅して思ったのは、殆どの国の人が「働いてやってる」というオーラを隠しもしないでプンプン振りまいている。
これはヨーロッパでも貧困国でもそうだった。
超高級店以外だととにかくやる気が無い。仕事中に私語やスマホや・・・昼寝?
上司に文句を言われるとふてくされて帰っちゃったりする。
この前起きたイギリス史上最高額の宝石泥棒事件。
日本で驚かれているこの警備員の言葉こそ、世界では当たり前の感覚なのだ。
さて日本はどうだろう?
コンビニに行けばありとあらゆるサービスが格安ででき、アマゾンで物を買えば1日で届き、電車は時刻通りにやってきて、富士山の頂上でも自動販売機で冷たいジュースが飲めて、愛社精神や過労死なんて言葉がある。
これは日本のすごいところであり世界からも評価されている。
が、しかしそれは本当に幸せなのだろうか?
やっと最近こういったブラック企業体質を問題提起するような風潮になってきた。
こういった点はどんどんやってしかるべきだろう。
最近の若者に昭和の高度成長期スタイルの労働観はもう通じない。
なぜなら世界基準からしてもこれは異常な環境だからだ。
※もちろん貧困国では日本よりももっと酷い現状もある。グローバル化によって富める国は増えてきたが、結局は先進国から見た派遣社員のような扱いでしかない。貧しい国ではグローバル化によって格差が広がり、政情が不安定になっている。
仲良しこよし東洋人
働くことについてちょっと面白い話がある。
政治的にはかなり仲の悪い極東国家(日本、中国、韓国、台湾)だが、バックパッカー同士異国の地で出会うとこれがとても仲が良くなる。
やっぱり見た目や文化的にも近いからか、なぜか同じ東洋人に会うとホッとするのだ。
そんな東洋人のバックパッカーは、ヨーロッパの人たちと全く違うスタイルなのだ。
なぜか?それは東洋人はとにかく忙しい。
先程も述べた日本の労働環境とどんぐりの背比べだからだ。
東洋人のバックパッカーは僕のように仕事を辞めた者か学生しかいない。ヨーロッパ人がバカンス休暇でワイワイしている横で、東洋人バックパッカーは目ぼしいところを写真を撮ってはすごい勢いで次の目的地へ向かっていく。
僕らには次が無いからだ。
ヨーロッパの人たちは毎年一ヶ月ほど好きなところへ旅行に行ったり、家族でゆっくり過ごしている。
だが僕らはこんな長期旅行は学生時代か仕事を辞めるかしかない。
「なぜ東洋人は観光地で写真撮っただけですぐ次に行ってしまうんだ?もっとゆっくり楽しめばいいじゃないか?」
これはスペイン巡礼の時にフランス人に疑問を呈された言葉だった。
そこにいたのは僕ら夫婦と韓国人の大学生たち。
僕らは顔を合わせて笑った。
「東洋人は忙しいんだよ」
ということで東洋人の若者たちは国家間の関係が悪くとも、共通する忙しさのおかげですぐに仲良くなれる(^O^)
東洋の国々では日本はまだ楽な方だ。中国ではものすごい格差が広がり、韓国は恐ろしい競争社会だ。
なので東洋の国は一様に少子化問題を抱えている。
これはヨーロッパよりもかなり深刻だ。
東洋の若者はみんな同じ悩みを抱えている。
だから若い人同士飲み屋で身近なことを話しあえば、ヘイトスピーチみたいなことはすぐ無くなるだろう。
かくいう僕も旅で一番仲良くなったのは台湾人と韓国人だ。
旅の別れ際、僕らは同じことを言って別れた。
「ああ~働きたくねえ」と(笑)
ヨーロッパのバカンス休暇に憧れる前に
そんな羨ましいヨーロッパの労働スタイル。
しかし疑問が沸かないだろうか?
なぜこんなに休んでいるのに日本と同じくらいの経済規模を誇っているのか?と。
最近こそバリバリ働く東洋やアジアの国が猛追してきてはいるが、それにしてもおかしい。
その疑問はヨーロッパを歩けばすぐに分かった。
それは移民のおかげだった。
ヨーロッパは移民が溢れかえって大きな問題になっている。
この前のパリのテロ事件を言うまでもなく、移民による問題が噴出している。
ヨーロッパでは移民排斥運動が起こり、フランスでは極右政党が跳躍したりしている。
僕が出会ったヨーロッパの人たちも皆同じことを言っていた。
「移民のせいで治安は悪くなるし、あいつらに税金を皆持って行かれている」と。
ヨーロッパでは日本より出生率が高い国が多いが、彼らに言わせるとそれはほとんど移民の人口増加だという。
移民の人達は税金で補助を貰いながら、子供をたくさん作ったり故郷から親族を呼び寄せているという。特にイスラム教徒の移民は女性は働かないので子育てがしやすいらしく、夫の給料と補助金を貰いながらたくさんの子供を産んでいくという。
「俺達はいずれ奴らに食いつぶされる」
ドイツ人のおじさんはそう言った。
だがヨーロッパの人たちがバカンス休暇を取りながら高水準の生活を維持できているのも偏にこの移民のおかげである。
彼らが人がやりたがらない仕事をして貧しいながらも暮らしているお陰で経済が回っているのだ。
それを今更増えすぎたから帰れというのはどうなのだろう?
世界を周って見た世界
旅を終えて思ったのは国の雰囲気や国民性というものは、その国の経済の回し方の指向が形作っているのではないかということだ。
今の社会をものすご~く大雑把に分けると、
①東洋の国々のように、高水準な生活を維持するために働き詰め。
②ヨーロッパのように、個人主義と社会の階層化(ライフスタイルを充実させるための仕事はするけど嫌なことは移民にやらせちゃえ)
③発展途上国のように、先進国に労働力を捧げて格差を広げながらもチャンスに賭ける。
という3パターンがあるような気がする(アメリカは①と②の中間か)
①は生産力が強く経済的には成功しており(地域差はあるが)生活水準も高い。その分、苛烈な労働待遇や格差や少子化などの経済的な問題が多い。
②は労働者の権利や家族との時間は守られているが、移民や低所得者とは昔の階級的対立に近いものがあり治安の悪化やテロが起こっている。
③は経済成長し国を豊かにするために激しい発展競争を繰り広げるが、地域格差や環境・民族問題が噴出している。
これは実際にその国を歩いたり、いろんな国の人と話して何となく感じたことだ。
ちょっと仲良くなって話してみると、
①の国の人は「きついから働きたくない」「忙しくて休みがない」と言い、②の国の人は「次のバカンスどこ行こうかな」「日本はイスラム教徒がいないの?いい国だねえ」とか言い、③の国の人は「車がほしい」「iPadがほしい」「留学して勉強したい」なんてことをよく言っていた。
あと自分の国の政治をどう思うかと聞くとこれもまた面白い。
①の国は「金に汚い」「人気取りばっかり」、②の国は「弱腰」「やる気が無い」、③の国は「賄賂ばっかり」「汚職まみれ」
全て僕の知り合った人の統計なので全く根拠はないが、でも話を聞いていると面白かった。
それとグローバル化による競争の激化で豊かな国は増えたように思えるが、何だか同じような風景がコピーされていくようにも感じた。
3年前僕は一人でアジアを旅行した。そして去年、また同じルートに近いところを通ったが、アジアの発展は目醒ましかった。バンコクやホーチミンには高層ビルが立ち並び、ネットが全然つながらなかったネパールやラオスでは田舎のゲストハウスですらWIFIが普通に使えるようになっていた。
もちろんその国にとっては良いことだが、何だかこのままでは世界が日本のファスト風土のように同じような景色で埋まっていくような気もした。
見慣れた店、見慣れた商品、同じような町並み・・・
まとめ
要するに働きたくないと日本の労働環境に嘆いていたが、まあどこも似たり寄ったりでいろいろな問題を抱えている。
①の国はこれから高齢化&少子化でお先真っ暗、②の国は民族・宗教対立でテロの標的、③の国は熾烈な競争と環境破壊・・・う~んどこも大変だ。
こんな無理ゲーどうしようもないなあと思ったが、一つだけできることがある。
若い人たち、選挙に行こう!
ということだ。
日本の若者の政治への関心の低さは世界的に見ると異常だ。
某汚職まみれの国で学生のデモを見た。軍隊が周りを囲んでいて物々しい雰囲気だったが、若者たちは必死に主張していた。
政治運動しろというわけではなく、せめて選挙くらいは行かなければと思った。
別に自民党に入れようが共産党に入れようが新党を立ち上げようが山荘に立てこもろうがとにかく意思表明すべきだ。
とりあえず自分の意見を表明しておかないと、「あの時何も言わなかったじゃん!」と開き直られても言い返せない。
そしてやっぱり若い人が元気な国は、みんなが明るい。
そして僕は多分どの国にうまれても『働きたくねえ~』といってそうなダメ野郎ということを痛感した世界の車窓からでした(^O^)