とりあえずこれ読んどけってレベルのおすすめベタ小説と解説
今週のお題「読書の夏」
らしい。世界一周旅行から帰国して、映画と読書三昧という旅行前と一切変わらない生活をしている僕です。
小説はあまり読まないが、暑っ苦しい夏にはさらっと読めちゃう小説の方が良いだろうと思い、中でもベタでこれ読んどけば通っぽくなれてヴィレッジヴァンガードで「フフッ」って言えるような小説ば選んだとですタイ!
1984
はじめてのディストピア小説。
人口国家ソ連のしかもスターリン絶対王政期という歴史上最もイカれた時代が好きな人にはおすすめ。
読み始めは共産主義やファシズムが陥る全体主義的で僕みたいな不真面目な売国奴は速攻強制収容所にぶち込まれそうな政治体制に対するアンチテーゼのような小説だと思っていた。
しかし「二重思考」「2足す2は5」「青年反セックス連盟」なんていうハイセンスな造語を入念に読み込んでいくと、ふっと寒気がしてくるのだ。
めちゃくちゃな監視社会への風刺のようで、現代社会の知っているようでわかっていない思考の片隅にある巨大な権力の影響を炙り出す。
そう感じさせられるのも、ジャーナリストであったジョージ・オーウェルだからこそ書けた本当に見てきたかのような架空の世界だ。
冷戦の始まりに出されたこの小説が、東西両陣営で読まれ、どちらにも都合よく受け止められたというのがまさに二重思考だったともいえる。
こういう寒気がする小説が好きだ。あとジョージ・オーウェルの破天荒さも好きだ。
異邦人
冒頭主人公のママンが死に、最後は主人公が死刑にされるという話。
こんなあらすじだけ見させられたらどうなるか?
昨今の日本のドラマだったら、ジャニーズっぽい主役とその家族とのハートフルな愛情とそこに咲くAKBっぽいヒロインとの恋、そしてEXILEっぽい友人たちとの絆が織りなす涙無くしては見られない続編映画化間違いなしの感動作品になるだろう。もちろん番宣でTV局ジャックだ!
しかし、カミュはそれを太陽のせいにした。
こんな活字にすると期待が膨らむあらすじが、カミュとその時代にかかると「ゆとり世代みたいな男がただぼーっと過ごして死刑台に上がる」という何とも不条理な世界が出来上がる。ママンが死のうが悲しいのは悲しいけど明日デートなんだな、うん。
ゆとり世代を予言していたと云われる問題作「異邦人」を読んで、アラブ人と喧嘩しに行こう!
アルジャーノンに花束を
白痴だった主人公の知性がある実験によって飛躍的に向上していくというブラックジャックもびっくりなお話。
そこに知性というフィルターを通して見えてくる人間の汚い本質が描かれている。これを見るのは二重に辛い。過去の自分が受けていた仕打ちに気づいていく主人公と、変わっていく主人公に対する周りの人間の反応、この二つの目線がいやらしいほどにリアルなのだ。
このリアルさを醸しだすのは「気付き」という人間関係に置いて一番残酷な瞬間を丹念に描がいているところだ。おふざけと遊びといじめはほぼ同じ。そこには微妙な人間関係によって作られたパワーバランスがある。例えば物を隠される=いじめ、とはすぐに決め付けることはできない。主人公のように傍から見ればいじめであっても、友達が遊んでくれていると思っているようなことだってあるのだ。
「アルジャーノンに花束を」ではそんな複雑な人間関係の作り出す空気を突如乱すことで、今まで隠されていた感情が爆発していく。主人公がパン屋を追い出される場面ほど悲しいものはない。
ちなみに日本語訳が秀逸すぎるというマニアックな評価もある。戸田女史ファンは必読だZE!
100年の孤独
百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez)
- 作者: ガブリエルガルシア=マルケス,Gabriel Garc´ia M´arquez,鼓直
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/12
- メディア: 単行本
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ガルシア・マルケスが死んだ、というニュースを見た。
名前だけは知っていた。南米のノーベル文学賞作家だ。ちょうど南米を旅して、南米のグロテスクさを味わったので、帰国してから読んでみた。
まさに南米だった。ページから南米エキスが噴き出している。マフィアの抗争で血生臭いメキシコとアメリカの国境から、アルゼンチンは最果てのウシュアイアまで、それを全部ぶち込んで煮込んだだけなのが「100年の孤独」。
こんな小説あって良いの?ってくらい内容は魑魅魍魎のカーニバルだ。
そこにはわかり易さのかけらもない。同じような名前の登場人物達、リアルとあり得ないのごった煮、飛びまくる時系列、死人が蘇り、呆気無く人が死ぬ。フリップもテロップも芸人のコメントも評論家の解説も無い。というか読んだらそのまますぐに記憶のブラックホールで塵になる。
たぶん南米の地に足を踏み入れないと、本当の「100年の孤独」は理解できないだろう。南米の自然と歴史と人々を実際に体感しなければ、ただのわかりにくい通好みの南米版千夜一夜物語に成り下がってしまう。
まあかくいう僕も「族長の秋」は挫折しました。※序盤でいきなり金玉はやられた
まだ南米の奥深さが足りないようだ。
人間失格
太宰治はたぶんクソ面倒臭い奴だったであろう。
ほぼ自伝のようなこの「人間失格」において、終始クズな主人公を描きながら終始言い訳に努めている。最後の最後で主人公は〇〇〇〇になってしまうが、その瞬間すらどこかニヒリスティックで生活臭のする悔恨はない。
こんな本が何十年も売れ続けてるということが、「日本人」を見事に現している。
別に外国人に日本がすごいとか大好きとか言わせている番組を垂れ流すのではなく、「人間失格」をただ読み耽っていればよいのだ。そうすれば長引く不況や少子化問題や新国立競技場問題なんか気にせず日本人はこの調子で生き長らえることができる。
そこが日本人の強さだと思うんだけどなあ~
クール・ジャパンは太宰なのに。
砂の女
養老孟司みたいな昆虫マニアが砂の穴っボコに落っこちて未亡人と砂を描き出す毎日を送るという話。
なんか星新一的トンデモ設定だが、このトンデモ設定の中で女性の艶っぽさを書かせたら安部公房が史上最強だ。
海原雄山にペヤング出しちゃうレベルの無茶苦茶な設定であればあるほど、安部公房は燃えるのである。
砂とけだるい熱さだけで女性の艶かしさをここまで表現しちゃうんだから、もはやマッドサイエンティストだ。
日本の作家はここのところが強い!
女性を書かせれば、触覚の谷崎、情景の安倍ってところか?漫画だったら触覚の高橋留美子、情景の山本直樹か?ん、逆か?
とりあえず体中がジャリジャリしてくる小説。
海辺のカフカ
「とりあえず読んどかないとなぁ」という理由で買われる作家第一位の村上春樹。
世界一周旅行中たくさんの本屋に立ち寄ってみたが、MANGA以外は村上春樹くらいしかなかった。
村上春樹作品は大概読み終わって数日すると内容が海馬から綺麗さっぱり消え去っている。
いつも僕の中では「なんか僕というガリガリでもマッチョでもなくかといって太っているわけでもないJAZZが好きといえば好きな頭が良いんだか悪いんだかよくわからないモテるけどかといってモテすぎるわけでもない調度良いくらいにモテる言いたいことも言えないこんな世の中に住む主人公が、イカれた女とイチャイチャする話」としか残らない。
とにかくこんな発泡スチロールで出来た男が、突如姿を消した衝動的に殴りたくなるような七面倒臭い女を追い求めるナット・キング・コールが主役の話ばかりなのだ。
でも、村上春樹は魅せる。
気づけば読了している。そしてJAZZとか聴き始める。サンドイッチを作ってみる。レコードとか欲しくなる。やれやれ。ボブ・ディランも良いね。レイモンド・カーヴァー。え?100万ドルトリオ知らないの?・・・いかんいかん!
破戒
被差別部落出身の教師が、自らの出生をひた隠しにしながら苦しみまくる話。
今の世の中では殆ど聞かれなくなってはいるが、明治時代には目に見える形で超然とそこら中にあった話なのだろう。まさかの牛に腹を突かれて死ぬという悪魔超人もびっくりなお父さんと主人公の関係が居たたまれない。
クライマックスの主人公の題名通り戒めを破る独白シーン。この絶望と晴れ晴れしさが混在する息苦しい場面は、あらゆる小説の中でもトップクラスの表現だと思う。
あと「まんがで読破シリーズ」の破戒の出来は素晴らしい。まんがで読破シリーズらしく小説版をおおはしょりしてはいるが、その編集が完璧に近いのでこちらもおすすめだ。
- 作者: 島崎藤村,バラエティアートワークス
- 出版社/メーカー: イースト・プレス
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家畜人ヤプー
JAPANESE HENTAIの極致。
もう放送禁止用語でしか表せない創造力の限界突破した彼方の作品。タイムマシンがあったなら、これを書いていた時の作者に是非あってみたいものだ。
前半と後半で作者が違うとも言われているが、特に前半の飛ばしっぷりは鬼気迫るヤバさがある。
トンデモ設定の中身は宇宙人と人体改造とウ◯コと中二病全開だが、中二では絶対に超えられない底知れぬ知識とメタファーな世界が見事に構築されている。
「俺、白人の彼女できちゃった!」なんて友だちに言われたらぜひプレゼントしてみよう!
まとめ
一部マニアックな小説もありますが、ベッタベタな本です。
最近は小説も読み始めだしたので、MY積ん読ゾーンが電撃戦の如く恐ろしい速さでその版図を広げており、目下嫁との生存圏闘争が始まっています。夫婦間に鉄のカーテンが降りる前に、本棚でもDIYしようかと思っています。