ベアフットランニング・裸足ランをやる前に知っておくこと
クリストファー・マクドゥーガルの『BORN TO RUN 走るために生まれた ウルトラランナーVS人類最強の“走る民族"』という本により、ベアフットランニング・裸足ランニングは爆発的に流行りました。
あの本は人間の本能を揺さぶる完璧な構成でして、かく言う僕もピエール瀧並にハマってしまいました。
で、初版発行が2009年なんですが、結局ブームは消え去ってしまいました。
ベアフットランニングをやったところ、『足が痛い!』『逆に故障した!』なんてことになり、アメリカでは裁判にもなったとか。
でも、これってベアフットランニングをきちんと理解していないからなんですよね。
今回は裸足で走ることについて、初心者が理解しておくことを書いていきます。
いきなりやると確実に故障する理由
『BORN TO RUN』にあるとおり、現代人の足は過剰なクッション性を持つランニングシューズによって守られています。
ナイキだけでなく、あらゆる靴により人間は「歩かされている」状態です。
こちらも名著『GO WILD 野生の体を取り戻せ!』であったとおり、人類はもともと狩猟採集生活に適した体や脳を持っています。
まだ武器を持たなかった時代の狩猟(人類史で一番歴史の長い狩猟方法)とは、「相手が疲れて動けなくなるまで追いかけ回す」ことでした。
人間は足も遅く、腕っぷしも弱く、武器になる牙や爪もありませんが、全哺乳類最強の熱発散システムを持つ生まれながらの長距離ランナーです。そんな人間の集団に追い込まれた動物は、いずれオーバーヒートして動けなくなります。
チーターは足が速いですが、20秒ほどしか走れません。人間は足が遅いですが、少し練習しただけでフルマラソンを走れるようになります。
そんな時代から、人間は裸足で草原を走っていました。
ベアフットランニングとは、この本来の人間の姿で走ることを推奨する概念です。
ここで注意するのは、原始の時代の「狩猟ランニング」がその根拠にあることです。
狩猟採集民にとって、現代のマラソンは『超高速』です。あんなペースで、しかもアスファルト舗装された硬い道を走るように人間の足は出来ていません。
しかもシューズによって飼いならされた現代人の足はなおさらです。
それで急に裸足ランニングを行うと、普通の現代人は100%故障します。
これはフォアフット走法(ツマ先着地)などのフォーム以前の問題です。
ベアフットランニングの正しい理解
そもそも狩猟採集民は、心拍数を極力上げないで獲物を追い続ける走り方を行っていました。
問題はスピードではなく、如何に長距離ペースを落とさず走れるかです。
長距離追われた動物が、筋肉・心肺活動により発生した熱を処理できずに倒れるまでがゴールになります。よってタイムや42.195kmのような明確なゴール設定はありません。
ランニングする前に読む本 最短で結果を出す科学的トレーニング (ブルーバックス)
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こちらの本で紹介されているのが「ニコニコペース」
ニコニコしながら楽に走れるペースを維持すればフルマラソン完走も簡単!というのは、人間本来の狩猟ランニングだといえます。
ニコニコペースは心拍数を抑え、ランニング効率に徹した走り方です。これであれば人間はかなり長距離を走ることが出来ます。
もちろん普段から鍛えていないと、1km10分とかのペースになります。
プロのマラソン選手は1km4分でもニコニコペースです。人間は鍛えればこんな芸当もできるんですね。
やっと本題ですが、「ベアフットランニングはこのニコニコペースで走るくらいの速さで行うべき」です。
ベアフットランニングは普段使わない筋肉を酷使するために故障すると思われていますが、そもそも足の負担が増すにも関わらずニコニコペース以上のスピードを出していることが原因です。
たしかにベアフットランニングでは、踵接地ができなくなります。クッション性のないシューズでは、踵接地すると痛いので強制的にピッチの上がったフォアフット・ミッドフット走法になります。
これにより、ふくらはぎの筋肉にかなりの負荷がかかり、翌日筋肉痛で動けなくなったり、アキレス腱炎になったり、そうしてベアフットランニングを辞めていく人が多いです。
が、そもそもベアフットランニングとは、ニコニコペースで芝生の上を走ることから始めるべきなんです。
ランニングシューズを履いて走る現代のマラソン=目標タイムやゴールの設定されたハイスピードで走るスポーツ
ベアフットランニング=人間本来の走法
これを理解していないと、故障に繋がります。
ベアフットランニングで好記録を出している人は、足の筋肉をかなり鍛え上げた熟練者であり、彼ら彼女らをいきなり真似するのは初フルマラソンでサブ3目指すようなものです。
なのでベアフットランニングは「速さを求めるのではなく、人間本来の走りができる」と捉えたほうが良いです。
ベアフットランニングのメリットは?
正しい理解をした上でベアフットランニングを行えば故障せずに数々のメリットを引き出すことが出来ます。
フォームが良くなる
まずフォームが良くなることは有名です。
前述したとおり、踵接地ができなくなることで、フォアフット・ミッドフット走法になりピッチの上がったフォームになります。
フォアフット・ミッドフット走法は、簡単にいえば足の筋肉だけでなく、アキレス腱などの腱のバネを使うことで効率が良くなります。
アフリカ出身の選手がメダルを量産しているのは、このアキレス腱が長いことだという学説もあります。ケニアなどの選手は、標高の高い地域で生まれ、未舗装の道を裸足で走る生活をしています。
もともとアキレス腱が長いことに加え、幼い頃から足が鍛えられているんですね。
足の筋肉が鍛えられる
足の筋肉も鍛えられます。
故障とも繋がりますが、ベアフットランニングは普段使わない筋肉もかなり使っています。
ベアフットランニング経験者ならわかると思いますが、ほんの数キロ走っただけで、翌日地獄の筋肉痛です。
僕は調子に乗って、ベアフットランニング歴の浅いうちに激坂含めた8kmコースを走っただけで1週間走れなくなりました。
それくらい現代人の足はシューズに守られているんですね。
なのでベアフットランニングで鍛えれば、人間本来の強い足を獲得できます。それは故障しづらい強い足になるともいえます。
偏平足にならない本来の足が手に入る
土踏まずを見てもらえばわかりますが、人間の足はアーチ状になっています。
運動=筋肉ではなく、人間はけっこうバネを使っています。先程述べたアキレス腱もその一つで、腱によるバネ効果はランニングでもかなり使われています。
足裏のアーチは、着地の衝撃を抑制したり、蹴り出しの反発にも使われています。
ですが現代人の足はシューズに守られているので、衝撃が過剰に抑制されています。骨や腱は衝撃から体を守るためにもあるので、衝撃が無くなると衰えてしまいます。
扁平足や外反母趾などもその典型で、要するに足の衰えなんですね。
こちらはベアフットランニングでなくても、昔ながらの草履で歩くだけでも効果はあるようです。
足のアーチが崩れてしまうと、衝撃が足首や膝に向かうことになり、それが故障に繋がります。
バランスが良くなる
足裏は感覚センサーが密集している場所。
人間はこのセンサーで足裏の情報を読み取り、バランスを取っています。
ですが最近の「過保護なシューズ」は、この足裏センサーが全く機能していません。
足裏が鍛えられていないということは、感覚も鈍っているということであり、健康青竹踏みが痛くてたまらない原因でもあります。
バランスは目だけでなく、体中の感覚器をフル活動させて成り立っています。
裸足で走ることで、足裏に的確な刺激が入りバランス機能が向上されます。
ベアフットランニングの始め方
それではベアフットランニングの始め方を書いてみます。
①「BORN TO RUN」を読む
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まずはモチベーションを上げましょう(笑)
②ベアフットシューズでゆるく走ってみる
いきなり裸足だとすぐさま故障してしまうので、まずはベアフットシューズでゆる~く走ってみます。
ベアフットシューズとは、クッション性のないソールがフラットなシューズです。
ビブラム5フィンガーは、ベアフットシューズブームの火付け役。
5本指仕様で、アウトソールは登山靴でも使われているビブラムソールです。
5本指に分かれているので、かなり足指やふくらはぎに力が入ります。
ビブラムソールなのですべりにくいのも特徴です。
ランニング用以外にも、トレイルランニングやトレーニング専用モデルもあります。
結構な値段なのがデメリットですが。
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メレルもベアフットシューズでは有名なメーカー。
トレイルグローブは、前足部と踵部の高低差が0mmなので、裸足感覚でトレーニングやランニングを行うことが可能なシューズです。
普段履きにもおすすめ。
ベアフットランニング入門者におすすめな2980円というお値段!
耐久性に難あるようですが、格安なのではじめてのベアフットシューズにはオススメです。
ベアフットシューズは、「クッション性の少ない、ソールがフラットなシューズ」という定義がありますが、特に正解のない分野でもあります。
が、市販されているほとんどの靴はいわゆる「過保護な靴」なので、ベアフットランニングができるような商品は数少ないのが現状です。
シューズを手に入れたら、まずは小走り程度で2~3km走ってみてください。
できれば芝生や柔らかな土の道がベストです。
絶対にアスファルト舗装の上をハイペースで走ってはいけません。
ベアフットランニングは、「徐々に慣らしていく」が鉄則です。
それでも思っていた以上に足が甘やかされていたことに気づくでしょう。
③慣れてきたらベアフットランニングを自分なりに定義する
筋肉痛と戦いながらも、足が本来の走りに目覚めてきたらベアフットランニングを自分なりに定義すべきです。
ベアフットランニングでフルマラソン完走を目指す人もいれば、ベアフットランニングは下肢の筋トレ、ランニングフォーム修正、リラックス目的などなど用途を考えます。
ベアフットランニングの最も大きな誤解はここではないでしょうか?
ベアフットランニングだけをやれば良い、ベアフットランニングでマラソンを走れば良い、そんなのは大間違いです。
マラソンがダイエットや健康が目的の人もいれば、サブ3を目指してアスリートのように実施されているのと同じように、ベアフットランニングも目的を定めるべきです。
「BORN TO RUN」やベアフットランニングの第一人者の発言だけを見ていると、何だか走るのはベアフットだけしてろというベアフット至上主義化していますが、そんなことはないと思います。
僕はベアフットランニングは筋トレとリラックス効果を目的に行っています。特にベアフットランニングはリラックス効果がすごくて、そこは「GO WILD 野生の体を取り戻せ!」にも書かれていたとおりです。
ですがベアフットランニングでマラソンに出たり、トレイルランニングをしてみようとは思いません。そのレベルに達していないのもありますが。
ある程度慣れてきたら、自分に合ったベアフットランニングの目的を定義してみましょう。
④ベアフットランニングを極める
Myベアフット定義が「ベアフットを極める」となった場合は、裸足でウルトラマラソンを走るという神の次元まで突き進んでください!
最強のベアフットシューズはワラーチです。
ワラーチとは、「BORN TO RUN」にも出ていた走る民族タラウマラの人たちが履いているサンダルです。
ルナサンダルが有名ですが非常に高価なので、ビブラムシートを買って自作する人もいます。
さすがに裸足でアスファルト舗装の道やトレイルランニングを走り続けるのは困難なので、ワラーチは最低限必要な「保護」ではないでしょうか?
超人たちは、この薄いワラーチだけでトレイルランニングの大会に出るほどです。
いやあ尊敬します。
まとめ
ベアフットランニングは、「人間本来の走りであり、スピードやタイム重視の現代マラソンとは全く違う」けども「ベアフットランニングだけが正解というわけではない」と捉えていたほうが幸せになれます。
現代マラソンはタイムを競うスポーツであり、本来の走るという行為とはニュアンスが違います。
ベアフットランニングは、人間本来の姿であり、正しい身体の使い方や精神的なリラックス効果を得ることができます。しかし、そのまま現代のマラソンやランニングの感覚と同一視するのは間違いです。
個人的にですが、山道をビブラム5フィンガーで走っているときが一番心地よいです。
自然の中を裸足で走ることは、やはり本能的な快感物質が出るんでしょうかね。
科学的な根拠はありませんが、ベアフットランニングはマインドフルネスとしても最高だと思います。
やはり現代人の生活は、人間という生き物にとって相容れないものになっているからでしょうか。
要するに、ベアフットランニングは楽しい!ということです。
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