幻の広浜鉄道今福線~それはそれは悲しい山陰人の夢の跡~

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皆様は広浜鉄道・今福線をご存知だろうか知りませんよね。

D750を購入し、ついにフルサイズ一眼デビューした僕は、おニューのカメラを引っさげて、地元の被写体になりそうな数少ない場所にやってきたのであります。

そこは車で山道を延々と走った先にいきなり現れるTHE遺構感が半端ないところでありました。

 

D750のオーバースペックさに圧倒されながらも、練習がてら撮った写真とともにお送りいたしますです。

 

 

山陰人(石見人)の夢

今福線は広島と浜田を結ぶ広浜鉄道の島根県側のルートとして昭和8年、旧国鉄山陰本線の下府駅から石見今福駅までが着工されました。しかし、工事がほぼ完成した昭和15年、太平洋戦争のため中断されました。

 

戦後、今福線旧線とは別に浜田駅を起点とする今福線新線として工事が再開されましたが、昭和55年、国鉄の慢性的赤字経営の影響により、工事が中止されました。その後、工事を引き継ぐ事業者も現れず未成線として終わり「幻の広浜鉄道」と呼ばれるようになりました。※浜田市HPより

   地図はこちらから→今福線研究分科会 - 島根県技術士会

 

こんな辺境の線路ですので消えて当然とお思いの都会の皆様、我々山陰に住むものの(特に島根県西部:石見人)山陽側への憧れなど知る由もないでしょう

 

 

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「都会の人にはわからんのですよ」

そうだよ!あんたらは新幹線はあるし、三車線の高速道路はあるし、国際線もビュンビュン飛んでるし、リニア?ふざけんな!

未だに山陰は高速道路すらつながってねえんだぞ!

特急という名の快速ディーゼル車がちんたら走る山陰線と、お爺ちゃんが時速四〇kmで走る曲がりくねった国道九号線しか俺たちにはない。あとは山だ。最近はそこもクマに支配されている。

 

 

・・・取り乱しました。

兎にも角にも山陰人は年中どんより雲に覆われたジメジメして雪ばっかり降る土地から、はるばる中国山地を越えた山陽側に大いなる憧れがある。

一年中天気は良いし、雪は降らんし、新幹線はあるし、パルコがあるし、コストコはあるし、一部リーグの野球チームや一部リーグのサッカーチームがある。

そんな夢の結実がこの広浜鉄道今福線のはずだった。

戦争と国鉄の赤字のおかげでおそらく真っ先に消されたであろう我々の夢の跡を、D750で撮っていく・・・悲しい旅だ。

 

 

広浜鉄道今福線でGO!

いよいよD750初めての撮影旅行はもちろん大曇天という日本海側らしいお天気の中スタート!

浜田市側からスタートして山道をウネウネと行き、宇野町から宇津井町へ向かう県道301号へ向かうと・・・

 

 

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ズドン!

アレン・ギンズバーグが好みそうな見事なセメントの塊が、突如として現れる。

遺構は遺構でも挫折感が出ていてかなり良い。

軍艦島のような盛者必衰感はなく、圧倒的な挫折感

もう現状の山陰のすべてがこのセメントの塊にあるね。

官僚機構の極致であるWWⅡの総力戦体制と国鉄によって無いものとされたこの悲しい姿、これは俺達だよ~と悲痛の訴えが聞こえてくるとか来ないとか。

せめて映画館くらい欲しいよね(半径90km内映画館絶滅)

 

 

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もうこれ以上なくそびえ立っているね。

もうここまで来ると三島由紀夫の世界だよね。

 

 

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先ほどの地点から川沿いをうねうね行くと、またまたいきなり現れる。

この大自然のレコンキスタ真っ最中のド田舎では、まさに文明の最後の砦のようだ。

頑張れ!クマに負けんな!

 

 

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見事な蜂の巣まで携えている姿、涙なしには見られません。

しかしこの風合い、いい仕事してますな~

 

 

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さらに宇津井町に入ると見事な橋脚の連なりが。

完遂していたらさぞかし見事な景色だっただろうに。

姿なきものを支える姿、これぞまさしく遺構の中の遺構。

彼らが支えるのは、「地元民の悲願」であり「予算の都合」である。

 

こんな天気だとさすがのフルサイズでも明暗差がひどくて白飛びしちゃうのねと実感。設定が多すぎて試行錯誤。

まあフルサイズっぽくて嬉しい悩みでもある。

 

 

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山道を登るとトンネルの後。

千と千尋の神隠し感が全開すぎて、怖くて入りませんでした。

僕の名前の都合上、湯婆婆様にどこを取られても「犬の名前」っぽくなってしまうので・・・

 

 

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大曇天ではあるが、僕はコントラストがキツ目のどす黒いプリントしたら黒がもったいないなあって写真が好きなので、この光の具合は調度良くもある。

 

 

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ちょっと露出を弄るとこのベタ黒さ!

二次元と三次元の中間を塗りたくったようなベッタベタ感。

 

 

 

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いやあここは何とものどかを越えた「都会のやつが憧れそうな田舎」である。

一生草刈りをやり続ける根気があるならどうぞ。

 

 

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棚田と石州瓦。これぞ石見の国。美しい。

 

 

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っていきなり五連アーチ!

さっき通った道路がリサイクル品だったとは!

いや、有効活用、先人の教えとしておこう。

 

 

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圧感の一言。

のどかな田舎にそびえる巨大構造物の存在感たるや、なんとなく世紀末である。

 

そして写真が歪んどる!

まだまだ勉強勉強。

 

 

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またトンネルがあったのでWB弄ってわざとらしい青色にしてみました。

もちろん入ってません。

僕はオバケの存在を信じないからこそ、もし本当にいた時のことを考えると躊躇してしまうのです。

この哲学的テーゼについて理解しない不埒者が、僕に怖い映画のDVDを押し付けてきますが、もちろん見ません。

 

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四連アーチ。

こう見ると今にも蒸気機関車が走ってきそうだが・・・

 

 

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明暗差が激しいのでマニュアルで撮ってみました。

う~んなかなか難しい。

 

 

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怖すぎる。

ゴールが何となく見えるからこそ、何か入ってもこれるんじゃないかと思ってしまう。

希望は即ち恐怖なのだ。

 

 

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秋に来たら紅葉も流れていて良さ気な場所。

カレンダーの11月とかに良さ気な場所。

山村紅葉がいそうな場所。

 

 

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現在地震計が設置されているとか。

 

 

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すぐ上には浜田道(高速)が見える。

しかし先程の橋脚に比べ、なんと覇気のないことか。

でもでも我々石見人の山陽側への抜け道ですので、いつもお世話になっております。

 

 

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線路が張られる予定であったところは、THE農道として軽トラがビュンビュン走っております。

 

 

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佐野町に入り、線路であったであろう道をたどると四連アーチ発見!

 

 

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兵どもが夢の跡、いや国鉄どもが夢の跡でもある今福線。

今もひっそりと、そして迎える史上類を見ない文明撤退戦の橋頭堡として未だ存在し続けている。

このあたりも過疎化で小中学校は統廃合を繰り返し、EUもびっくりの集合体となっている。

過疎化により田が荒れ、里山が廃れ、熊や猪や鹿が進撃を始めた。

過疎地域の先兵は、立体機動装置を持たないJAの帽子をかぶったおじいちゃん達である。

 

はあ~この辺にイオンモールできねえかなあ~

 

 

まとめ

Nikon デジタル一眼レフカメラ D750

Nikon デジタル一眼レフカメラ D750

 

やっぱりフルサイズだから何でもプロっぽく撮れるという初心者らしい希望的観測は叶わず。

むしろ、バッチリキッチリ写ってしまうからこそ粗が目立つ。

でもでもなかなか楽しい小旅行であった。

一応RAWでも撮ってはみたが、RAW弄りはまた今度に。

なんせ僕のパソコンが旧式すぎて、おそらくフォトショなんか入れたらア・バオア・クー状態になるのだ。

ということで、とりあえずはコツコツ練習といこう!