中判フィルムのランニングコスト
今回は中判カメラ沼の入り口でウロウロしているそこのあなたのために書きます、「中判フィルムカメラのランニングコストについて」です。
その前に中判フィルムの実際の写真をご覧ください。
さあ、中判フィルムの写りで驚嘆と悲哀のため息をつかれたそこのあなた!
今から「このご時世、フィルムカメラを愛する哀戦士が気になるお財布事情」を詳しくひけらかします。
やっぱりね、これだけの写真が撮れるんだから、お金はかかります。まあ当たり前ですね。ちなみに僕は大満足ですよ。
それでは、中判フィルム代、中判フィルム現像代など、実際に掛かった費用からランニングコストを引き出してみましたので発表します。
中判フィルムの値段
今回は「FUJIFILM PRO 160 NS」です。
いわゆるブローニーフィルム、120フィルムってやつです。
プラウベルマキナ67の下にある巻物みたいなやつです。
35mmフィルムがM3の上にあるやつですね。全然見た目違いますね。
「FUJIFILM フジカラーPRO 160 NS」は5本入りで3500円です。
一本700円、これでも一番安い中判カラーネガフィルムの一つなんですよ。
そして35mmフィルムだと、24枚とか36枚とかフィルムに撮影枚数が書いてありますが、中判フィルムはカメラによって撮影枚数が変わります。
センサーサイズ云々言う人は中判フィルムを始めたらいいと思う。全然大きさが違う。 https://t.co/oe4yPBlYNN
— 𝕥𝕠𝕤𝕙𝕪𝕚𝕖! (@toshyie) 2020年4月11日
親愛なる𝕥𝕠𝕤𝕙𝕪𝕚𝕖!さん(@toshyie)の画像をお借りして説明しますと、35mmフィルムはデジタルだとフルサイズって呼ばれてまして、カメラの基本のサイズです。
中判フィルムカメラは、6×4.5、6×6、6×7、6×9などなどカメラによってフィルムサイズが違いまして、同じ中判フィルムでも撮影枚数が変わってしまいます。
さっきの巻物で、カメラのサイズに合わせて撮っていくわけです。
6×4.5=16枚、6×6=12枚、6×7=10枚、6×9=8枚なんて具合です。
サイズの違いは、単純に言ってしまうとデカけりゃデカいほど画質や解像度やボケは良くなります。
35mmフィルムに比べて6x4.5で2.7倍、6x6で3.5倍、6x7で4.4倍と単純にサイズが大きいので、要するに界王拳なんです。
デジタルカメラもセンサーサイズの大きさが、マイクロフォーサーズ、APS-C、フルサイズのように違いがありますが、それと同じようなものです。
ちなみにプラウベルマキナ67は6×7なので10枚しか撮れません。だって界王拳3.5倍ですからね。
ということは、フィルム代だけで撮影1枚70円です。あはは。
中判フィルムの現像代
さあ、次は中判フィルムで一番厄介な現像問題です。
都市部のカメラ屋でも、なかなか中判フィルムの現像は即日でやってくれません。
たいてい、どこかの工場へ送られてしまいます。嗚呼かわいそうなブローニーちゃん。
そしてこの現像代が本当にピンきり。
例えばInstagramで有名な山口県の山本写真機店さんだと、
現像代=1本600円
データ化=1本500円
プリント=1枚KG70円
もしプラウベルマキナ67で撮影したフィルムを、現像・データ化・プリント(10枚全部)すると、フィルム1本で1800円です。
なので、撮影1枚につき180円になります。
これに送料が、スマートレター(180円)かレターパックライト(360円)くらいになります。
ちなみにデータ化ですが、フィルムスキャナーを持っていれば不要です。
残念ながら僕の「Nikon フィルムデジタイズアダプター ES-2」を使ったフィルムデジタイズは、中判フィルム非対応でした、トホホ。
別にデータ化しないでもいいんですが、こうやってブログやSNSで写真を使いたい場合はデータ化が必要になりますね。
しかし、さすがにランニングコストやばすぎですね。
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貧乏サラリーマン(でも宵越しの金は持たない主義)なので、今回は初回ということもあり、格安現像店を利用しました。
フラッシュさんです。楽天やYahooでも利用できます。
ここは、びっくりするほど安いです。
なんと、現像・データ化・プリント(10枚全部)で750円ですよ。
もう一度読んでください、現像だけじゃなくてその他もろもろ含めて750円。
安い理由はとにかく経費節減です。
データ化したCDや梱包材は無機質極まりないし、細かな補正等は応対してくれません。
また発送曜日が決まっているので、運が悪ければ1週間以上待つことになります。
でもね、これだけ安くやってくれてますし、普通に現像して普通にプリントしてくれます。
そんな貧乏サラリーマンのくせに中判フィルムカメラに手を出す僕のような不埒者にとって強い味方「フラッシュ」さんで、今回は一気に中判フィルム2本と35mm1本を現像・データ化・全プリントしてもらいました。
ちなみに35mmフィルムも全込かつ全36枚プリントで610円、現像だけなら250円です。
ということで、フラッシュさんなら1枚75円で現像とデータ化とプリントしてもらえます。
ちなみに、なぜ現像するだけでこんなに値段が違うのかと言いますと、山本写真機店さんのような所は写真の補正やプリントの種類などを細かく調整してくれます。
山本写真機店さんは、Instagramで#ヤマプリというハッシュタグがあるくらい人気です。
対するフラッシュさんは、普通に現像してプリントしてくれますが、細かな調整は効きません。
そこは使い分けなので、僕の用途ではフラッシュさんが最適でした。
結局、フィルム代+現像代(データ化+プリント)は?
プラウベルマキナ67(6×7)の場合、フィルム代1枚70円+現像代(データ化+プリントL)1枚75円=1枚145円
これに送料(一気に何本も頼めば安くなる)が加わります。
中判フィルムは良いものになると5本で5000円前後になります。
またプリントサイズによっても値段は変わります。
なので、だいたい1枚200円前後と考えていただければ計算しやすいんじゃないでしょうか?
※ちなみにランニングコストを激安にするには、自家現像という手があります。
自分のおうちで自分で現像するという究極のカメラ愛です。
自家現像についてはまた書いてみたいと思います。
でもね、これ格安でしょ。
中判カメラに手を出す前は、このランニングコストにビビってました。
でも撮れ高を見たら、一発でそんなこと忘れてしまいます。
この猫も杓子もコスパ時代において、中判フィルムカメラ趣味というのは時代を逆行するどころか浦島太郎ですよ。
でもでも、とにかく撮ってみて、写真をプリントしてみてください。
デジタルカメラの高画質高画素とは次元が違います。デジタルカメラより良いという意味ではなく、全く違う世界なんですよこれがまた。
↑作例はこちら
センサーサイズの違いで到達できる新しい世界。
結局、プロカメラマンや沼地獄仙人の皆さまが、大判カメラ(スーパーサイヤ人)を使う理由がわかりました。
そしてフィルムの情報量のポテンシャルがやっぱりすごいと痛感しました。
デジタルで5000万画素とかありますが、フィルムは等倍で見ればデジタルには勝てないかもしれません。
でも質感が違います。
要するに、これは最高級の自己満足製造機なんですよ。
これは撮った本人、プリントを見た本人にしかわからない境地です。
そしてこの自己満足こそが、最高の写真をもたらしてくれるわけです。
あ~これだから写真はやめられない。
おすすめ沼リンク
おいでませ中判!一枚たった200円で至高の自己満足が得られます。
一家に一台プラウベルマキナ67運動推進委員会パンフレット
プラウベルマキナ67という中判カメラ
プラウベルマキナ67(PLAUBEL makina67)という中判カメラについて語っていきます。
リンクのような言い訳をしながら、プラウベルマキナ67という中判カメラを買いました。
プラウベルマキナ67とは、興味のない人から見れば「WW2のドイツ軍の弁当箱かな?」と思われるでしょうが、れっきとした日本製カメラであり、カメラ沼界隈では『ある意味伝説のカメラ』と畏敬の念を込めて呼ばれております。
何が伝説かと言いますと、
①特異な誕生秘話
②他に類を見ない唯一無二の変態カメラ
③伝説プライス
でしょうか。
今回は僕が愛でてやまないプラウベルマキナ67、通称『撒金無』=マキナちゃんについて書いてみようと思います。
①特異な誕生秘話
プラウベルマキナ67は、非常に複雑な家庭に生まれております。
まずプラウベルとは、1902年創業のドイツのカメラメーカー。
それが1975年、日本の「カメラのドイ」の土居君雄社長にブランドごと買われます。
この「カメラのドイ」は、土居君雄社長が一代で築き上げた巨大カメラ販売店(当時日本3位)であり、あのヨドバシカメラと熾烈な競争を繰り広げた大企業。
そのカメラのドイが1978年に生み出したのが、プラウベルマキナ67というわけです。
はい、良い質問です。
意味がわからないでしょう。ここがポイントです。
「カメラのドイ」はカメラ販売店であり、カメラメーカーではありません。
プラウベルマキナ67は、カメラマニアである土居君雄社長が作り上げた「ぼくのさいきょうのかめら」なのです。
土居君雄社長は、小西六(のちのコニカミノルタ)の天才技師内田康男に設計を依頼し、さらに小西六に頼んだくせに裏でNikonにレンズを注文しているという金持ちの道楽・・・もとい世界最強のカメラマニア魂を発揮して生まれたのがプラウベルマキナ67です。
Plaubel Makina 67 Chief Designer, Yasuo Uchida / 内田康男
そんなプラウベルマキナ67の生みの親の一人、内田康男さんのインタビュー。
昭和のおおらかで破天荒な時代が感じられるお話です。
要するに、
ブランド:歴史あるドイツのプラウベル
設計:小西六の天才内田康男
レンズ:日本が誇るNikonのニッコール
どうですか!
こんなめちゃくちゃなカメラ、昭和の時代にしか作れませんよ!
まさに夢のオールスター、巨人大鵬卵焼きです。
②他に類を見ない唯一無二の変態カメラ
そんな複雑な家庭に生まれ育ったプラウベルマキナ67は、もうキレッキレのグレッグレ、そんじょそこらのカメラには纏えない「ヤバいオーラ」を放っています。
新宿カメラ街界隈曰く、変態カメラ(褒め言葉)であると!
じゃあどこが変態カメラなのかを探ってみましょう。
Nikonの中判レンズ『ニッコール80mm F2.8』
まずプラウベルマキナ67の代名詞といえば「ニッコール80mm F2.8」※4群6枚 マルチコート:フィルター径58mm
あのNikonの数少ない中判カメラ用レンズであり、アラーキーや石川直樹や金村修が惚れ込んだ名玉です。
しかも80mm固定という潔さ!35mm換算で約40mmという焦点距離。
さらに後述する蛇腹のおかげで、不要反射光の吸収減衰に大変優れているらしい。う~ん意味はわからんがなんかかっこいいじゃないか!
さらにさらに完全機械式レンズシャッターです。
露出計用に電池を使いますが、電源が一切必要ナシでシャッター切れます。
これね、デジタルカメラ世代には意味がわからないと思いますが、僕はフィルムカメラはまさにここがポイントだと思います。
デジタルカメラはSDカードの容量までなら何千枚も写真が撮れます、ですがバッテリーが無くなったらただのプラスチック文鎮です。
機械式シャッターであれば、フィルムがあるだけ撮れます。そうそう壊れませんし、電気のことを何一つ考えずに撮影に集中できます。
これ、山やってる人なら共感してくれる人が多いと思います。
ちなみに一番大事なレンズの描写についてですが、発売時の昭和辛口レビューでも高評価であったとか。
このレンズこそが、土井社長が無理矢理ねじ込んだ伝説のレンズなのです。
また作例ができたら貼っておきます。
鋼鉄の中判弁当箱
中判6×7カメラにもかかわらず、
高さ115mm、幅162mm、 奥行56.5mm、重量1250g
この携帯性こそがプラウベルマキナ67の最大の長所です。
登山に持っていったんですが、まさにお弁当箱くらい。プロテインバーより薄いんです。
蛇腹を出すと写真のようになります。
蛇腹をたたむと、とてもコンパクトに。
なので中判カメラにもかかわらず、片手で持てちゃいます。
このコンパクトさの所以は、レンズシャッターと蛇腹のおかげです。
シャッターがレンズに組み込まれているのでボディが激薄にできます。
さらに蛇腹を利用することで、携帯性にパラメータ全振りしています。
中判カメラはやはり大きなカメラが多いです。ハッセルブラッドのようにスタジオカメラとして使われていたものが多く、気軽に屋外で、しかも登山なんかで使うのは難しいカメラです。
ですがプラウベルマキナ67は、中判フィルムの高画質を気軽に使えるカメラなんです。
なので、登山などの風景写真だけではなく、都市でのスナップに使っている写真家も多いです。
ちょっと写真の縮尺がおかしくなってますが、「Lowepro ノバ 140AW 2.9L」に入れても余裕があるくらいコンパクトです。
登山カメラ、旅行カメラとして重宝されたポイントがここです。
登山写真家の石川直樹さんが使っていることでも有名です。
エベレストやK2などの極地で高画質の写真が欲しい場合、故障しにくい機械式シャッターでコンパクトになる中判カメラ「プラウベルマキナ67」という選択は非常に理に適っていると思います。
その他:レンジファインダーカメラと無愛想な露出計
形状を見てもらえばわかると思いますが、レンジファインダーカメラです。
LeicaM型と同じで、一眼レフカメラしか使ったことがない人からすると「ボケが見えへんがな」「構図決まらへんがな」「キャップ付けたまま撮ってしまうたがな」といわれるあれです。
レンジファインダーカメラのメリットは、構図外も見れて、慣れればピント合わせが決まりやすいところでしょうか。
正直、M3を持っているのでプラウベルマキナ67のファインダーはショボいとしか言いようがありませんが、昭和の金持ちの家の窓みたいで懐かしい気持ちになります。
露出計は簡素なボタンを押すと+か◯か-で伝えるという無愛想な中央部重点測光方式。
実際に使ったところ、精度は想像したより良かったですけど、よく壊れるらしい。
まあ機械式シャッターだし、脳内露出計を鍛えましょう。
③伝説プライス
この存在自体が希少なプラウベルマキナ67ですが、中古価格はむっちゃ高いです。
なんせ実際に購入した僕が言うのですから説得力あるでしょう!
まず値段のおったまげな理由は、先程書いた①特異な誕生秘話と②他に類を見ない唯一無二の変態カメラが影響しています。
特異な誕生秘話からして、コレクターズアイテムになるために生まれたかのようなカメラです。ドイツの歴史あるメーカーが日本のカメラ会の永ちゃんに買い取られ、その時代の最高の技術をメーカー飛び越えて組み合わせたカメラ。
こんなカメラ、他にありますか?男の中の男ゼンザブロニカくらいか?こちらは格安。
そして、他に類を見ない唯一無二の変態カメラの宿命ですが、全く売れなかったという希少性です。
販売台数自体極端に少なく、兄弟機であるプラウベルマキナ67Wに至っては3500台しか世に出ていませんので半端ないプライスがぶら下がっています。
なんせ1970年代後半といえば、AE撮影やオートフォーカスのようにカメラが勝手に撮ってくれる利便性が流行の最先端であった時代です。
それまで完全フルマニュアル機械式カメラしかなく、お世辞にも一般庶民が使うにも買うにも敷居が高かったカメラが、オイルショックを経て庶民にも使いやすいように改良されて世を斡旋し始めた時代において、こんな異端児を出したんだから売れなくて当然です。
中判カメラという時点でプロ用ですので、AE撮影(自動露出)なんか要らないと言った内田康男さんの判断は中古市場で花が咲いたようです。
さらにカメラのドイの倒産や修理サービスが困難となり、そしてそもそもフィルムカメラ事業全体の超縮小、その中でもさらにイロモノの中判フィルムの存在ミクロ化、これにより伝説的な希少性を得たのでした。
僕が手に入れたのもまさにここです。
このカメラこそ、現代というアイデンティティが確立しづらく、自己承認欲求が満たせない、グローバリズムにより到来した没個性的無味乾燥な世界において、最高の自己満足増殖装置なのです。
リンクの記事でも書いた通り、完全機械式でマニュアル撮影、しかも無駄にランニングコストがかかり、結果は現像するまでわからない、そんな悪条件こそ現代に失われた主体性を感じ取ることができる行為なのです。
そしてユニクロのようなファストファッション的大量消費社会において、これほど我が強く個性的過ぎて浮きまくっている製品は存在しません。
昭和のギラギラした感じが集約したこのプラウベルマキナ67こそ、近代資本主義の行き着いた先の先にいる怪物なのです。
プラウベルマキナ67の歴史とストーリー、デジタルカメラにはないじゃじゃ馬的使いづらさ、時代に逆行した消費活動、そしてフィルムカメラの持つ一発勝負の芸術的感覚、この全てが現代社会に疲弊している狩猟採集民の末裔への最高の餞なのです。
そして私はプラウベルマキナ67の元に召されるであろう!https://t.co/dpBcsVeQTd
— 鉄人96号 (@tetsujin96) 2020年4月5日
↑中判カメラを買うまでの言い訳#はてなブログ #写真好きな人と繋がりたい #ファインダー越しの私の世界 #写真で伝えたい私の世界 #カメラ好きな人と繋がりたい #フィルムカメラ #プラウベルマキナ67 #makina67 pic.twitter.com/CCpQkGdOJo
そして私はプラウベルマキナ67の元に召されるであろう!という宣言に嘘偽りはありません。
これはプラウベルマキナ67並みにイカれた誕生秘話と変態スペックを持ったとある人間(ニュータイプ)の演説をもじったのですが、これ悲しいけど本音なのよね。
現代に不要とされたからこそ必要である思想、それがプラウベルマキナ67なのです!
・・・と嫁に言ってはみたものの、相手にされず枕を濡らし、毎夜酒を片手にマキナを磨く。
作例
まあともかく写真見てってよ。
登山との相性は中判カメラ界最高
贅沢なひとときを噛み締めて撮れ!
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なぜなのか、中判。
終わりの始まり、それがLeica
言わんこっちゃない、LeicaR
なぜ私が中判カメラを買ったのかと、それに対する言い訳
題名の通りですが、中判カメラを購入しました。
もうね、これは仕方がないんですよね。
運命のLeicaM3を手にしたときから決まっていた、運命と書いて「さだめ」なんですよ。
そんな「さだめ」である中判カメラへの道を書いてみようと思う。同じさだめを共有する皆様のために人柱となります。
フィルムカメラへの目覚め、それは沼
この時は人生最後のカメラとまで思ってました。
お値段の方もそれくらいしましたしね。
初めてのフィルムカメラ、そしてレンジファインダーカメラです。
一応デジタルカメラ世代なんで、フィルムカメラってのはどうも非合理的かつコスパ最悪だと思ってました。
このご時世、35mmフィルムは一本1000円前後はしますし、現像はカメラのキタムラで600円、それで24枚か36枚しか撮れません。
それにレンジファインダーカメラ、一眼レフカメラに慣れているととにかく使いづらい。
なんせキャップ付けてても気づかないでシャッター切っちゃいますからね。ボケもわからない、どんなにピント合わせたつもりでも構図がズレてたり・・・
・・・でも、最高でした。
M3のすべての所作の美しさ、Leicaレンズのうっとりする立体感ととろけるボケ。
フィルム写真はデジタルデータにはない「何か」がありまして、デジタルカメラ的な画素数では図りきれない美しさがあります。
そうです、これこそが『自己満足』です。
家族や友人に写真を見せましたが、「ふ~ん、なんか違う気がする」くらいでした。
ですが、この自己満足のために、自分の親より年上のカメラにけっこうな大枚を叩いているわけです。
なぜカメラやレンズをいくつも買うのかと聞かれたら、「お宅には鍋が何種類ありますか?」と問う。
— 鉄人96号 (@tetsujin96) 2020年3月24日
「調理の用途によって、大きさの違う鍋がいくつかあるはずです。それと一緒なんです」
そう答えると、たいてい意味がわからないと言われ、iPhoneで良いじゃんと捨て台詞を吐かれる。#レンズ沼
これがいわゆるカメラ沼、レンズ沼というやつで、傍から見たら完全に妖怪の類です。
そんなこんなですが、M3のおかげで主体的な撮影道具としてのフィルムカメラに目覚めました。
いや、カメラという機械にヤラれました。
デジタルカメラは生活家電
フィルムカメラを嗜むと、「デジタルカメラは家電」とよく言われる意味がやっとわかりました。
10年前に使っていた冷蔵庫覚えてますか?覚えてませんよね?愛着もクソもないです。
なんせ食べ物や飲み物を腐らないように冷やしてくれていた存在であり、特別思い入れもないはずです。
冷蔵庫は機能で買いますからね。便利で省エネなら良し。
まさに三種の神器ですが、僕はデジタルカメラ=神器になったのだと思います。
もちろんこのデジタルカメラにはスマホも入ります。
スマホの登場、そしてSNSの普及で、現代人にとってデジタルカメラは無くてはならない存在を超えた、あって当然な最低限度の生活家電になったのです。
そうなると、各社スペック競争になります。瞳AFなんてまさにですね。
そこには写真を撮る行為ではなく、万人受けしやすい機能、もっといえば誰でもまあまあな写真が簡単に撮れることが至上命題になります。
写真を撮ることではなく、失敗させない、カメラが何でもやってくれる、そんな需要がカメラに求められます。
ということで、カメラは家電になりました。
決して悪い意味ではなく、カメラが身近になったがための適応といえるでしょう。
ですが、上記リンクのような撮影する際の「主体感」は無くなりました。
カメラに任せればたいてい撮れますし、自宅に帰ってRAW現像すれば良いなと頭の片隅にいつもチラついていますよね。
それが主体感の喪失、生活家電と化したカメラの宿命です。
趣味性の高いデジタルカメラもありますが、中古市場を見てみましょう。
5年前のデジタルカメラは半額以下です。そうです、機能が売りのデジタルカメラは、消耗品、流行品なのです。
フィルムカメラの所有感
そんなことを考えていたのは、要するにLeicaR8を買う言い訳だったんですね。
なんせLeicaM3買って半年経ってませんからね。しかも一眼レフカメラですよ。デジタル一眼レフカメラ持ってるし、貰ったNikonF3も控えているにも関わらずですよ。
これはレンズ沼ですね。M3でLeicaレンズ=Summicronを使ってしまった瞬間、ライカレンズが何たるかを悟ったわけです。
なので不人気なLeicaRですが、Leicaレンズが安く買えるというので飛びついたわけです。
あとLeicaを手にした時の所有感、これもたまらなかったです。
デジタルカメラは機能で買いますが、もはや機能に対する経済体制が崩壊しかけのフィルムカメラは判官贔屓的な哀愁もあり、さらにLeicaのLeica足る重さ、ズッシリ感、これ一度手にしたらヘロインよりヤバい中毒性のある所有感を知ってしまうんですな。
Leicaレンズの現代レンズにはない設計思想、そしてLeicaの所有感により、フィルムカメラに完全に目覚めてしまいました。
フィルム写真の情報量と自己満足
noteでLeicaM3とR8で撮った写真をアップしています。
見ていただいたらわかると思いますが、やはりフィルムは良い。
いわゆるデジタル画素でいえば、正直1000万画素くらいじゃないでしょうか?
簡単には画素数化できないらしいですが・・・
写真趣味者の方、一度で良いからフィルム写真をプリントしてみてください。
高画質ではないですが、立体感、存在感が大迫くらい半端ないんです。
これは撮影時の試行錯誤(マニュアル露出やマニュアルフォーカス)、36枚という撮影枚数制限による不安、そしてそもそもちゃんと撮れているかどうかすら現像しないとわからないという恐怖感、この全て溶け込んだ写真だからなんです。
なので、撮影者本人が撮影したプリント写真を見ると、情報量がトルコアイスくらい濃厚なんですね。
無理矢理データ化するとしたら一枚1GBくらいに感じます。
デジタルカメラであれば、同じ場面で連射しまくって100枚撮ってRAW現像すれば自分なりの「決定的瞬間」は作れます。
ですがフィルムカメラは、
「マニュアル撮影での主体感」✕「撮影枚数制限」✕「フィルム代と現像代による経済的精神的負担」✕「撮影から現像までのタイムラグ」=自己満足
という公式が成り立ちます。
これはたまらんですよ。
デジタルカメラは、結果だけが求められます。タイムラプスや長時間露光などの労力のかかる技術はありますが、撮影自体は作業的ですし、保険がたくさんあります。
フィルムカメラは過程>結果です。撮るだけでも大変ですからね。
なので結果ではなく、撮影自体を楽しみたい趣味人にはフィルムカメラがおすすめなんです。
もちろんデジタルカメラは、結果=作品創りがメインの人には最高です。
カメラは過程と結果を分けて考えるツールになったのだと思います。
半自動運転ができる車が売られている時代に、あえてマニュアル車を選ぶのと同じように。
中判カメラこそ最高の自己満足製造機
そして先程の公式に当てはめると、中判カメラこそ至高の存在だと思いませんか?
35mmフィルムカメラだと、
「マニュアル撮影」✕「撮影枚数制限(24or36枚)」✕「フィルム代(1本1000円前後)と現像代(最寄りのカメラ店・600円くらい)による経済的精神的負担」✕「撮影から現像までのタイムラグ(最短一時間)」=自己満足
中判フィルムカメラ(6×7)になりますと、
「マニュアル撮影での主体感」✕「撮影枚数制限(10枚)」✕「フィルム代(1本1000円前後※10枚しか撮れないのにだよ)と現像代(現像してくれる店に送付・1本1000円前後)による経済的精神的負担」✕「撮影から現像までのタイムラグ(すんごい時間かかる)」=絶頂自己満足
もちろんこの公式に当てはめると大判カメラが最強でしょうが、あちらはすでに非現実世界のオーパーツとなっておりますので、アマチュア庶民がギリギリ楽しめる最凶ラインは中判カメラではないでしょうか?
もちろんもちろん、現像を自分で行うという手もありまして、僕もそろそろやってみたいと思っておりますが。
こんなラマヌジャンもドン引きなイカれた公式を発見したので、僕は毎夜うなされることになります。
「う~ん、67か?う~ん、66だろうか?ランニングコストは?うう~ん、ハッセル・・・いやブロニカ、いや絶対ブロニカ買ったらどうせハッセル買うやんか・・・ううう、69・・・」
そして、そして結局買う羽目になるのをわかっていながら悶え苦しむこと1ヶ月。
購入=物欲度✕情報収集量✕情報収集にかけた時間 VS 諦める=経済的負担✕将来設計(人生100年時代+老後2000万円)✕家族からの白い目
この公式により、僕は購入>諦めるとなり、中判カメラを購入したのだ。
これは数学的に証明できる結果であり、要するに真理なのだ。
で、我が家に届いたのはプラウベルマキナ67
いいですか皆様、プラウベルマキナ67ですよ。
もうどうにでもなれや!はははは!
そして私は父ジオンの元に召されるであろう!
※プラウベルマキナ67購入直前、某ウイルスに対する経済対策として国民に10万円配布するという怪情報が流れていたのであった。
レビューはこちら
我慢できない人には先に作例をどうぞ!