テオティワカンの階段の傾斜は、ばあちゃん家くらいだった
1月20日
朝食のパンを平らげ、本日はテオティワカン遺跡へ向かう。
月曜日はほとんどの美術館や博物館が休館となるので、郊外遺跡見物は月曜日にかぎる。
メキシコシティは古代アステカ・マヤ文明からフリーダなどの近代芸術までかなりのクオリティを誇る芸術都市だと今更気づいた。
そんな芸術の民族のご先祖様の「作品」を見に行こう。
もう慣れきった地下鉄に乗り、北バスターミナルへ向かう。
今回は初の乗り換えであるが、人に聞きながらいけば迷わずつけた。
北バスターミナルはものすごく広い。
日本のバスターミナルといえば乗り場の集合体であるが、こちらは巨大な建物がまるで心臓のようにメキシコ中にバスを送り出している。
テオティワカンへのチケット売り場は正面から入って一番左にある。
往復一人42ペソ×2
ボロっちいバスは定刻通りに走りだした。
バスはすぐに高速道路に乗り、まっすぐな道を行く。
車窓からはメキシコに来て近くでは初めて見る山があった。
メキシコシティは高度2,000mの盆地でありながら、遥か遠くにしか山は見えない。
日本海と山とトンネルの郷から来た僕にとってはそれだけでも素晴らしい景色なのだ。
しかし、その山(といっても小高い丘程度)の周りはスモッグで覆われている。昨今大気汚染が深刻なメキシコシティ。小さな山の頂上からすぐ下でスモッグが層になってポカポカ浮いている。
工場といえばカマボコ工場くらいしかない大気汚染とは無縁な超弩級僻地県から来た僕にとってはスモッグもワクワクする景色なのだ。
郊外に出るとレンガ造りの灰色の家々が山にこびりつくように密集していた。
サボテンが生える荒涼とした大地に灰色の人工物が群れをなすように一体化している。
日本ならちょっと走れば山や川や海が見えるので新幹線に乗っていても車窓だけで楽しめるが、メキシコは同じような風景がくどくどと続く。
たまに乗ってくる客と物売りに何度か起こされていたら、どうやらテオティワカンについたようだ。
テオティワカンとは紀元前2世紀から6世紀くらいまでに栄えていた超巨大文明都市であり、その頃で人口20万人もいたらしい。
日本人が遥か遠くでせっせと稲作を学んでいた時期から、この巨大都市は作られ始めたというのだから驚きだ。
当時世界有数の人口を支え、なおかつ下水道まであったらしいので最早宇宙人の存在が臭い漂う。
バスから降りてすぐにその巨大な出で立ちが露わにされる。
エジプトのピラミッドと違い、頂上は平らになっておりここに神殿や儀式をする場所があったという。
荘厳かつダイナミックに作られた巨大都市は今や世界的な観光地の一つであるが、観光客を戒めるために作られたのかと見紛うばかりの苦難の遺跡でもある。
砂の大地と石でできた遺跡は高所乾燥地帯特有の強烈な日差しから身を守る遮蔽物が一切なく、その中で南北5キロもあったという「死者の大通り」を歩かなければならない。
「死んでからもこんな道を歩くなんて死んでも嫌だ。」とパラドックス的ぶつぶつを繰り返しながらとぼとぼ歩く。
そして先程から視界にはいらないことはない超巨大「太陽のピラミッド」にとりかかる。
なんせ階段は200を超え、さらに傾斜は田舎のばあちゃん家くらいあるので歴史的バリアアリーだ。
しかし儀式にも使われていた神聖な階段であるし、神との対話を行うにはこれくらいの傾斜でへこたれているようでは相手にされまい。
今にも泡を吹きそうな豊満なメキシコおばさんを抜かしながらも、一歩ずつ確実に登っていく。中腹で少し休めるスペースが有り、ここで自販機を置けば一本200円でも売れるなあなんて思いながら高山病にならないよう大きく息をする。
なんとか登り終えると壮大な景色が待っていた。
360度遺跡に囲まれている。かつてはここで神聖な儀式が行われていた。20万人を見下ろしてこの巨大都市の頂上にいるのはどんな気分だったのだろう。
茶色と青のコントラストの中で遺跡が線を作る景色は人工的な美しさを感じた。
急な階段を何とか下り終え、コンドルが如く迫り寄る物売りをくぐり抜け、ギャーギャー騒ぐ課外授業の子どもたちの荒波を抜け、月のピラミッドへ。
ここからは太陽のピラミッドをとても凛々しく見ることができる。
規則正しい数学的な遺跡の中に鎮座する太陽のピラミッドが実は超古代兵器であり変形して超巨大ロボットになる・・・なんて想像するのは日本人だけか。
帰りのバス乗り場を間違えるも門番のおじさんに助けられ1時間揺られてメキシコシティに戻る。
強い日差しで久々に半袖で歩いていたテオティワカンから帰るとやはりメキシコシティは肌寒い。
夕方からはスーパーに向かった。
ここで海外自炊を経験しておくことにした。これからの旅程では自炊が大きなカギを握る場面があるからだ。
サンフェルナンド館近くにWalmartがあるが、今日は南にあるスーパーに行くことに。
シウダデラやサンジャン市場が物色できるしせっかくだから色々歩いてみることにした。
けっこう歩いてサンジャン市場についた。
ここは地元の人のための市場といった感じで肉や野菜がそのまま切り売りされている。
今日はステーキでも食うかと意気込んで肉屋ゾーンに行くと、鳥のような豚のような生き物が丸裸にされて山積みされていた。
「わ・・・わんちゃん。」
丸裸にされているのになぜわんちゃんとわかったかというと肉球がついていたからにほかならない。
スーパーはサンジャン市場すぐ南側にある。
かなり大きい規模のスーパーだ。荷物をロッカーにあずけてから入る。
メキシコはけっこう日本並の物価なのでサンフェルナンド館でも自炊派の人も多い。
今回はパスタと日用品を買い、悩みに悩んだくせに結局コロナビール6本セットを買った。1本100円ちょいなのでビールは安い。
日も暮れてきてこの辺は治安があまりよろしくなさそうなので急いで帰る。
強盗も怖いがその時は早くビールが飲みたかったのだ。
コロナビールといえばやっぱりライムを絞ってラッパ飲み!ということで本場っぽくいただいた。