リマ-クスコ格安バスの旅 「格安にはそれなりの訳があるもんだ。」

1月30日

 

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前日にワラス-リマ、リマ-クスコのバスチケットを購入した。

あのフランス人がわざわざ取ってきてくれたバス会社の運賃表やパンフレットで安いものを買った。

なんせ最初のリマ-ワラスで超高級デラックスハイパーファーストクラス(社長ソファー・リクライニング160度)82ソルなんてことをしてみたかったからしてみたせいで、ここからは貧乏バス旅なのはアインシュタインでも3歳児でも導き出せる結果なのであった。

 

ということでカラバというバス会社に。

ワラス-リマ-クスコで90ソル。30時間以上の長バス旅で3000円いかない。

破格の安さは地獄を意味する。しかしファーストクラスの7時間82ソルが相殺されるのだから仕方がない。一回だけ乗ってみたかったんだファーストクラス・・・

 

29日22時ワラス発。バスは普通の大きさでリクライニングもあまりできない。しかし寝るだけなのでそこまで苦痛もなく、となりの可愛い女の子と喋ったりしながらリマに着く。

5時半でもリマは暖かい。標高を一気に3000mも下げたわけだから肺が破裂しないか心配だ。

しかしこのあとまた富士山の頂上近くまで一気に標高を上げるわけだから、肺がストライキを起こしても文句は言えまい。

10時までボロいバス会社の椅子でつまらないスペインのお笑い番組を見たり読書をしたり。

 

10時になってやっとボロいバスに乗り込み、一路クスコへ!

と、思いきやここからが格安バスの旅。

いろいろなバス会社に乗り込み、客を拾っていく作業が始まる。

これがまた、何社も周るのだ。新入営業社員ばりの会社巡りで客は少しずつ増えていき、我々のバスは一気に地元民の憩いの場と化す。

格安バスだから外国人は僕達だけであり、あとは家族連れのインディヘナな皆様。荷物も野菜やら家具やらで移動サーカス団のような有り様に。

車内は1歳から80歳位のおばあちゃんまでゴチャ返し、もちろん食事もないので皆様が持ち寄る家庭の味で車内はさながら市場のようなニオイが漂う「ALWAYS 3丁目のアンデスの夕日」状態。

 

子供の鳴き声、それを叱るお母ちゃんの怒鳴り声、トイレに行く度に僕の坊主頭を愛でるオヤジ、手をプルプルさせながら蜜柑の皮を剥くおばあさん、大音量で携帯から気持ちBluetoothで音楽を聞く兄やん、ゲロを吐くガキんちょ、なぞの健康食品売りオヤジのオンステージ30分、荒れ狂う運転、転がるペットボトル、じっと僕の荷物を見つめるワイルドなおじさま、虚空を見上げる嫁、それが格安バスの旅なのだ。

 

 

しかし外の景色は想像を超える世界だ。

なんせ海が見えるのだ。大西洋のすぐ横を延々と走る。鳥取砂丘が何百個あっても敵いそうにない大砂漠をひたすら走る。久しぶりのむっとした暑さ。子どもたちも海を見て興奮している。

2時間も走れば荒涼とした大地。安っぽいSF映画で見たことのあるような大地だ。

砂の塊なのかよくわからない巨大な山、転がる巨石、風化して半分砂になった家、くねくねの道をバスは正面衝突寸前で車を避けながら進む。

 

 

夜になると高度が増していき、ワラスで見たような風景になる。

そして寒い。一気に車内の温度が急落し、窓は曇り、子どもたちが死んだように眠り始めた。

ダウンを着ていたがさすがに寒くなるも、一向にブランケットを配るお姉さんが現れない。

 

まさか!そう思った時、まるで雪山で遭難してしまったような焦燥感に襲われた。

格安バスの旅はブランケット一枚配られなかった。なんてバカなのか。いつも与えられていたものはサービスだったのだ。「当たり前」はお金を出した奴しか言えない言葉だったのだ。

 

 

僕らは自らの「ただ与えられてきた人生」への反省の念を込めて、寒さに震えながら標高3000mを超えた。

ちなみに前のおやじは半袖で寝ていた。