マラケシュ屋台食い倒れ紀行
モロッコといえばマラケシュ、マラケシュといえばフナ広場、フナ広場といえば屋台。
そう、モロッコとは屋台なのだ。
一日中騒がしいフナ広場。その喧騒がピークに達するのは19時前後の屋台が立ち始める時間。
もうもうと立ち込める煙、強引な客引きたちの叫び、大道芸人のめちゃくちゃな演奏、そして腹の底に喰らいつくような臭い。
広場を埋め尽くす勢いの屋台は喧騒の中に突如として現れ、人々を引きずり込む。
無数にある屋台は適当に立っているようで何となく場所が決まっている。
屋台には番号がふられており、1~140番台くらいまであるのでその多さが想像つくだろう。
ヤギの煮込み、魚貝の揚げ物、ケバブにスープ・・・所狭しと並んだ屋台にはこの世のすべての料理があるのではないかと思ってしまう。
店先に並ぶ食材は新鮮な野菜や魚から、ヤギの頭や脳みそにかたつむりなんかも平然と置いてある。
珍しさもあって近づこうものなら「世界一鬱陶しい」といわれる客引き連中に絡まれる。
飛び交うテキトーな日本語は誰に教わったのかは知らないが、蝿も恐れをなすほど彼らはへばりついて離れない。肩を引っ張り、腕を掴み、適当にあしらえば去り際に暴言を吐かれ、そして仲間内で喧嘩し始める。
はじめは小さな客の取り合いから始まったのか、それとも元からこんな感じなのかは知らないが、これもフナ広場の一風景だと思い込むしかない。
そんなフナ広場に毎日通った我らが勝手に食い倒れ紀行と称してうまいおすすめなものを片っ端から羅列する。
とにかく安くてうまい、そしてウザい屋台街にようこそ。
イカの唐揚げ
新鮮な魚やイカをカラッと揚げてレモンを絞って食べる。
シンプルすぎるがこれほどうまい食べ方はない。
もちろん手で食べる。あつあつのイカを指先で摘んで一口でも食べてしまえばもはやモロッコの魅力に取り込まれてしまう。
意外に美味しかったのが揚げたものを潰したナス。
これをパンにつけて食べると柔らかい食感とナスのジューシーさがたまらない。
旅先で出会った日本人に「マラケシュに行くなら、絶対食べて下さい!!」とか「あれを食べに行くためだけでモロッコに行っても良い」と言っていたが大げさな話ではない。なんせ一度食べてからというもの、足繁く通ってしまったのだから。
人気店は14番。地球の歩き方にも載っている名店。いつも混んでいる。
98番も地元の人がワイワイしている。
料金はイカと魚の揚げ物とパンのミックスセットで25DH(300円くらい)
でもなぜかナスを強制的におかれるので30DHくらいになる。
ヤギの煮込み
ヤギの生首にプルンとした脳みそが並ぶグロテスクな店構えはヤギの煮込み料理屋。
ツボに入った熟成カレー風味のだしに漬け込んだヤギ肉はトロットロでしかもそんなに臭くはない。
目の前で小刻みに震える脳みそももちろん食べることができる。
たくさん店があり、店によって少しずつ味が違う。
だいたい20H~
目の前で豪快に砕かれるヤギの塊、そしてトロンとした目のヤギの生首に脳みそを眺めながらエキゾチックな食事が楽しめる。
チキンのカレー煮込み
真っ黄色のトロッとした汁がたっぷり入った寸胴から取り出される巨大なチキン。
ぐつぐつ煮られたチキンは、フォークで押さえるだけでさけるチーズみたいに簡単に切ることができる。
中まで染みたカレーがこぼれないように柔らかいチキンを食べるのはなかなか難しい。
見た目は油っぽいがなかなかさっぱりした味。とにかくチキンが柔らかい。
この料理を扱っている店はあまり多くはない。
95番の店は店員も気さくで味もよかった。
チキンは30DH~、セットで豆スープも頼める。
タジン
言わずと知れたモロッコの代表的料理
そこら辺の食堂から屋台、高級レストランまでタジンまみれだ。
ごく少量の水と野菜や肉をつかった蒸し料理。
食材の中の水分を使ってじっくり時間をかけて調理されるため、栄養素が抜け出さず身体にも良いヘルシーな料理でもある。
野菜はほっこり、肉はさっぱりとしてとても食べやすくクセもない。
小さい目のタジンが20DH~、大きめは30DH~
牛肉、鳥肉、魚、野菜のみという風に自分で選べる店も多い。
クスクス
世界最小のパスタ。
パスタというか細かいもち米といった食感。
肉や野菜を選べる店もある。
モロッコでは金曜日にクスクスを食べるという風習があるらしい。
なので金曜日まで待ってやっとの思いで26番の屋台で食べたのだが・・・
甘い。めっちゃ甘い。食べられないくらい甘いのだ。砂糖と野菜の甘味がねちっこくてたまらなかった。
26番の屋台の味付けがそうなのか、もともと甘いのがクスクスなのかはわからないが、とにかく甘かった。
30DH~
屋台からレストランまでどこでも置いてある。
金曜日にしか食べてはいけないというわけではない。
イワシの唐揚げ
日本では高級食材になってしまったイワシ。
そんなイワシの間にスパイスを挟んで揚げ、唐辛子とレモンと共に食べる。
単純だがこれがうまい。
とにかくイワシの味が濃い。そして骨までサクサク食べられる。
この地中海の新鮮なイワシ料理がマラケシュで一番たまらなく美味しかった。
屋台街の話だと最初に言ったのだけれども、この店は屋台ではない。路地にある小さな汚い食堂だが、地元民が詰めかけている。
場所が少しやっかいで、広場西側のオレンジジュース屋台通りの後ろにある花屋の方からクトゥビア方面に抜ける細い路地の真ん中くらいにある。
イワシの揚げ物定食が20DH、イワシサンドも売っている。おすすめはやっぱり定食。
たまごサンド
町中のキオスクでも売っているたまごサンド。
柔らかい丸いパンにゆで卵を潰して入れるだけ。トッピングでチーズやチリソースなどもある。
けっこうボリュームがあるのでお腹が空いた時は重宝する。
モロッコの人たちはこれにシロップ入りミルクのセットが大好きだ。モロッコのファーストフード。
屋台ではたまごサンド職人がいて恐ろしい早業で卵をパンの中にすり込んでいく。
キオスクで2DH~、屋台だと6DH~
ハーフサイズもある。
ケーキとコーヒー
広場からクトゥビアに抜ける広い通りにあるPatisserie Des Princesというスイーツ店。
いつも白人おば様が詰めかけている。
表にはモロッコでは珍しいアイスクリームの機械がある。
ケーキやクッキーも売っており、クオリティーは高い。
奥が喫茶店になっており、ここのコーヒーがとても美味しかった。
ケーキは15DH前後~
コーヒーは10DH~
少し高級な店で店の中は静かだ。フナ広場の喧騒に疲れた時におすすめ。
モロッコ風お好み焼き
お好み焼きともチヂミともいえる。
おばちゃんが生地に挽き肉とハムとオリーブを混ぜ、それを平たくして鉄板で焼く。
けっこう油っこいモロッコのお好み焼きは、オリーブが効いて少しスパイシーな味がする。
12DH。けっこうボリュームがある。
こちらもクトゥビア方面に抜ける通り沿いにある。
スイーツやコーヒーなどが上記の店より安くいただける。
オレンジジュース
モロッコでこれを飲まなければ何も始まらない。
新鮮なオレンジを絞った生ジュースはどこでも売っている。
オレンジジュース屋の店主たちは面白い人が多いので、会話を楽しむのも一考。
4DH。グレープフルーツだと10DH。
生姜茶
怪しげな黒い液体。
濃い目の生姜汁にたっぷり砂糖が入った生姜茶だ。
とても濃いので胸やけしそうになるが、段々ぽかぽかしてくる。
4月頭の寒いマラケシュの夜にはたまらない。
デザートはこちらも生姜入りのねっとりしたアンコみたいなもの。
見た目の割には美味しかった。
生姜茶、デザートともに5DH
ハリラ
モロッコのソウルフード。
肉や豆などをじっくり煮込んだトロミのある栄養満点スープ。
ラマダーンのあとにまず食べられるようにとても胃に優しい。
ハーブが少し効いている濃厚なトマトスープのような味。
なぜか食後に決まって食べに行っていたハリタにどっぷりハマってしまった。
123番のハリラはトロッとして味が強くて美味しかった。
1杯3DH。
ミントティー
日本の麦茶的存在のミントティー。
モロッコ人が何人か集まってだべっているその真中にはいつもミントティーがある。
中国茶を沸かし、それを大量のミントと砂糖が入ったやかんに入れるだけ。
とにかく砂糖をバンバン入れる。角砂糖5,6個ではすまない。
でも甘ったるいように思えるが、暑いモロッコでは何よりも美味しい。
ポッドセットは5DHくらい。
写真は屋台内にあるミントティーで、大きなコップにそのままミントと砂糖を突っ込んでいる豪快なミントティー。5DH。
マラケシュ・フナ広場屋台攻略
その1、地元民で混んでいて、しつこい接客しない店はハズレがない。
どこに行っても同じだが、地元民が押しかける店は大抵美味しい。
人気店は足の踏み場もないくらいギチギチに詰め込んでいても、行列ができているほど。
さらにしつこい客引きで満ち溢れている屋台街だが、人気店ではそんなことに構っていられないのでほとんどしつこくない。
地元民で混んでいて、接客態度がそっけない店が美味しい店だ。
その2、しつこい客引きの対処法
一度体験すればわかるだろうが、日本なら即刻連行されるくらいのひどい接客だ。
日本人と見るや日本で最近流行った一発ギャグなんかを言いながら近づいてくる。
目の前に立ちふさがり通せんぼすることぐらい序の口で、身体を掴んで引っ張って行ったり、平気で嘘をついてくる。
怒ったり無視するとたまに攻撃してくる面倒な人間もいる。
僕も目の前に立ち塞がられ邪魔だったので押し通ったら肘打ちをくらった。女性にセクハラしたり強引に引っ張っていく輩などもいるらしいので注意が必要だ。
一番の対処法は「finish!もう食べちゃった」というのが一番だと思った。
もちろんそんなことをしても、必ずしつこく言い寄ってくる。
そういう時は笑顔で「モロッコ料理は最高だね」というと「だろ!」とか言ってウインクして立ち去ることが多い。
北風と太陽作戦でしつこい客引きを遠ざけよう。
その3、値段はしっかり確認しよう
初めに確認したのに当然のごとくボッてくるのがモロッコでもある。
客引きに聞いた値段が全然違ったり、支払いが自分がはじめにメニューを頼んだ人と違ったりするとボッてくる場合もある。
さらに勝手に頼んでないメニューをおかれたり、しつこく他のメニューを頼むように聞かれるので、曖昧に返事をすると面倒なことになる。
なのできちんと確認し、きっぱりと断る態度を見せなくてはならない。
それでもあとあとになって値段が違ってくることがあるが、実際大した額ではないのでそういうものだと思って旅を楽しむのがモロッコなのかもしれない。
※本気で喧嘩している白人を何人か見た。
その4、目当ての店が見当たらない
僕らは最初の日に人気の14番の店に行こうとしていたが、いくら探しても見つからなかった。
だが、次の日には平然と営業している。
屋台も休みや出店時間の違いなどがあるようなので、知っておいたほうが良い。
また「ああ、その店は今日は休みだよ」と嘘を言ってくる輩もいるので注意しよう。
そんな安くてうまくてカオスなフナ広場の屋台街。
すべての店は回りきれないくらいあるので、まだまだ美味しい料理がたくさん眠っているかもしれない。
他にも美味しい店を見つけたという人、ぜひ教えて下さい。