サンジャンピエドポーまでの24時間大移動&クレデンシャル発行

5月20日

 

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9日間もぼーっとしていたエッサウィラから、気づけばカサブランカに舞い戻っていた。

いつもはあまり予定を立てずに旅行をしているのだが、今回は20日発の航空券をすでに取っていた。

行き先はフランス

花の都パリを優雅に楽しむ・・・わけもなく到着して空港でちょっと寝たら国内線に乗り換えスペインとの国境近くにあるビアリッツへ。

何をしに行くかというと、サンチアゴ・デ・コンポステーラ巡礼路」という大層な名がついた路を歩きに行くのだった。そう、この路を歩くためにモロッコであんなにゆっくりしていたのだ。(本当は南米とスペイン南部でもっとゆっくりするはずが、思った以上の物価で早めに退散してしまったのでモロッコ滞在が1ヶ月半にもなったのだ!!)

 

 

サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路

フランス国境の町サンジャンピエドポーからスペイン北西部サンチアゴ・デ・コンポステーラまでの780㎞を1ヶ月以上かけてひたすら歩く。

これはキリスト教3大聖地の一つであるサンチアゴ・デ・コンポステーラまでの道を行くという古から続く巡礼である。四国の八十八ヶ所巡りとほぼ同じような意味合いがある。

そしてこの「道」自体が世界遺産でもある。世界遺産は掃いて捨てるほどあるが、道が世界遺産なのはサンチアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼道と我が国の熊野古道しかない。

 

なぜそんな苦行を行うか?もちろん僕らが敬虔なキリスト教徒だからとかスピリチュアルに目覚めたとかそういう意味ではない。

それは①人生で1ヶ月以上もただただ歩き続けるような経験は普通に生きている上ではありえないからであり、②西ヨーロッパを唯一格安で旅行できるからであり、③そして宗教心というものは果たしてどんなものかということを味わうためである。

 

 

①人生で1ヶ月以上もただただ歩き続けるような経験

現代に生きている上で1ヶ月以上ただ歩くという事はまずない。今や、1日あれば地球の裏まで飛んでいけるし、金さえあれば宇宙にまで行ける時代だ。

そんな時代でも、この巡礼は古から脈々と続いている。それが達成できたからといって何か利益があるわけでもなく、誰かに褒められるわけでもなく、履歴書に書けるわけでもなく、強いて言えば足の裏が豆だらけになることくらいである。

こんな無駄なことをする生き物は人間くらいだ。だがそこに人間の歴史とロマンがある。

そこで、古から続く人間のチャレンジ精神をひとつ体験してみようと思ったのだった。

 

 

②西ヨーロッパを唯一格安で旅行できる

古来から巡礼者であふれるこの道は、巡礼者を迎え入れる環境が備わっている。

宿泊はたくさんある教会でできる。それも宿泊料は高くても10ユーロ程度でほとんどが寄付だ。教会といってもキッチンもシャワーもあり、ユースホステルのような施設が備えてある。

そうなると宿代は寄付で自炊ができて移動はもちろんタダなので、格安で物価高の西ヨーロッパを旅できるということになる。

しかも巡礼道は北部スペインの美しい景観のただ中にあるのだ。

 

 

③宗教心というものはどんなものか

日本人は無宗教といわれる。

正式には無宗教というより宗教に対して柔軟であるといったほうが良いようだが、キリスト教イスラム教のような厳格な一神教が芽生えなかったという歴史を持つ。

当の僕も正月には神社に初詣に行き、クリスマスにはサンタさんにプレゼントをもらい、法事にはお寺に行く典型的な日本人だ。

ということで宗教とはかけ離れた生活をしてきた。

なので宗教観というものがまるで無い。だから世界にあふれる宗教戦争テロリズムが理解できない。ニュースで見ても「またやってらあ」という程度である。十字軍の残虐行為も9.11テロもそこに何があるのかは表面上のことしかわからない。

宗教とはなんぞやというところも感じられれば良いと思う。

 

 

と、簡単に言ってはいるが一日30km近く歩き続けなければならない。

バスや自転車を使う巡礼も許可されているが、せっかく来たんだから完歩したいのが旅というもの。

無事怪我なく歩き通せるか?これが目下最大のテーマである。

 

 

 

サンジャンピエドポー

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そして最初の難関がサンジャンピエドポーまでの移動。

フランスの最南端の山の中にある小さな街サンジャンピエドポーが、「フランス人の道」という巡礼路の一つを歩く人のオーソドックスなスタート地点となっている。(パリから歩く強者もいる)

サンジャンピエドポーまでの道のりは、モロッコでのんびりしていた身体にいきなりのハードなトランジット移動が待ち構えている。

 

19:30 カサブランカ

22:30 パリ・シャルルドゴール国際空港着

空港泊

07:00 パリ・シャルルドゴール国際空港発

08:30 ビアリッツ空港着

 

キーボードで打てばすぐなのだが、これがなかなか辛かった。

まず、サンジャンピエドポーへなぜ飛行機乗り継ぎで行ったのかというところ。

サンジャンピエドポーへはパリかマドリードからのアクセスが良い。とくにパリからは飛行機でも高速鉄道でもバスでも行ける。マドリードからはバスが主な移動手段となる。

モロッコからだと、パリ経由ビアリッツ着が一番安かった(18000円位)

※数ヶ月前からフランス高速鉄道TGVを予約しておけば格安で行ける

 

しかし、カサブランカ発のeasyJetLCCらしく一時間平気で遅れた。さすがのモロッコ人もLCCなので誰も文句は言わない。ダイソーの真理と同じ「格安だから仕方がない」

easyJetLCCの王道だった。預け荷物はお金を取られるし、手荷物の大きさチェックはかなり厳重、タラップまでバスで行きそこから歩かされ、もちろんジュースや食べ物は有料、おまけに映画や音楽といったサービスもあるはずがない。さすがLCCの本場ヨーロッパである。

 

 

 

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0時30分にパリに着き、スタバの横の椅子で仮眠。せっかくの花の都パリだが、老後に来よう。

なんとも寝にくい椅子でなんとか寝ての朝4時半。ぼんやりしながらチェックインに向かうと・・・

 

 

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さすがLCCの本場第2弾。この時間でも大盛況。

修学旅行なのかしらないが、学生の列が大蛇のごとくのたうつ。

ふらふらしながらやっとチェックインして5時半。

そのまま7時に小さな飛行機にタラップを歩いて乗り込み、そのまま飛び立った。

寝たり起きたりを繰り返す意識朦朧の中、8時半にやっとビアリッツ空港着。

 

 

 

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ここで気を許す間もなく、空港発14番のシャトルバスでバイヨンヌ駅まで向かう(1€)

 

 

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色んな物に乗り揺られ、常時乗り物酔いの中、40分でバイヨンヌ駅。

サンジャンピエドポーまでの列車は本日バスになっていた。混みあう時以外はバスになるという。

 

 

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11時7分のバスチケットを買ってやっとゆったりできた。(9.8€)

フランスは物価が高いので、駅のキオスクなんかで物が買えない。コーラ500mlで3€。

 

 

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近くのスーパーで食料を買い、バスに乗り込む。バスは6割ほど埋まった。ほとんどが巡礼者だ。白人の老夫婦が目立つ。

1時間ほどでサンジャンピエドポーだ。

 

フランスの田舎道は驚くほど日本に似ている。木々の合間を縫うように走る道路、ボロボロの看板、

つぶれたレストラン、まさに田舎道。

田んぼが麦畑、家がレンガ作り、車線が右なのをのぞけば、まるで日本の田舎に帰ったかのような風景だった。

 

 

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サンジャンピエドポーには12時半に着いた。

生憎の雨模様。降ったり止んだりを繰り返す。もうヘロヘロだが道がわからないので先行く皆様を追いかける。

それにしても白人の歩く速さは凄い。日本人は歩くのが速いといわれるがそれは街歩き。トレッキングになった時の白人の速さは老若男女問わずいつも驚かされる。

サンジャンピエドポー駅から500mほどまっすぐ登って行き、古城の門をくぐる。そこからは看板通り左折して坂をひたすら登って行くとやっとこさ念願の巡礼事務所に辿り着いた。

カサブランカの宿を発ってちょうど24時間。巡礼の前にかなり疲れた。

 

 

クレデンシャル発行

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巡礼事務所でクレデンシャル(証明書)を発行してもらう。

これがないと、巡礼が始まらず、アルベルゲにも泊まれない。

昼休憩後の13時半に事務所が開くまで待っていたが、雨でずぶ濡れの我々を見て早めに開けてくれた。

 

 

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教会のようなところかと思っていたが至って普通の事務所。田舎の農協みたいだ。

ついに緊張のクレデンシャル発行。なんせキリスト教徒ではないしフランス語も英語もできない。

小太りのおじいちゃんに呼ばれ、長机に座る。

クレデンシャルを僕らに渡し、名前と住所とサインを書かせ、

「はい、一人2€ね。あとここのアルベルゲに泊まる?だったら一人8€だから合わせて10ずつで20€ね。」

下ろしたてピン札20€を渡すとスタンプを押して終了。

 

え、終わり?

 

 

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なんかすごい緊張してたのに何も宗教的な質問とか無かった。

と思ったら横のドイツ人のおっさんはめちゃくちゃ質問攻めされているではないか。

 

 

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スタンプGET!

どうやら、受付の人によるみたいだ。僕らの担当のおっちゃんはその後も、ひよこの性別分けのようにひょいひょいクレデンシャルを発行していった。

 

 

 

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やっと落ち着いたアルベルゲ。

中は意外に綺麗で広かった。僕らの部屋は16人部屋。2段ベッドがズラッと並ぶさまは圧巻だ。

基本的な備えはユースホステル並だった。

 

 

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サンジャンピエドポーの街は、絵に描いたようなヨーロッパだった。

「こういう所に憧れていたんだよなあ」と思いつつ散歩に繰り出す。

カリオストロの城、名探偵ホームズ、魔女の宅急便紅の豚ハウルの動く城、宮﨑駿先生のせいで僕はなんとなくヨーロッパっぽい雰囲気に憧れを抱いている。

 

 

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サンジャンピエドポーは狭い古城内に古くて洒落た建物が立ち並ぶ、カリオストロの城でルパンが次元とスパゲティー取り合いしたあと伯爵の家来に追い回されるあの城下町のような雰囲気に満ち溢れている。

 

 

 

巡礼グッズショッピング

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金もないくせに高い高い巡礼グッズを買ってしまった。

ビートルズが文句言ってきそうな巡礼Tシャツ(13€)、ホタテの貝殻(2€)、地図(6,5€)

巡礼者のシンボル、ホタテ貝はやはり外せない。

 

 

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近所のスーパーで買物。久しぶりのビールを買い、意気揚々と宿に帰るとまさかのガスコンロ無し。キッチンがあるのだからと確認もせずに買い物をしてしまった。なので泣く泣く電子レンジで卵や野菜をチンしまくって胃に押し込んだ。

 

 

明日は序盤にして最強のピレネー山脈超え。