サンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼完全攻略~生活編~

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基礎編につづいて今度は生活編。

生活とはもちろんアルベルゲ(巡礼宿)のことについてだ。

アルベルゲは普通の宿と違い、巡礼者しか泊まれない。そしてたくさんの巡礼者との共同生活を行う場でもある。

いろんな国から集まった巡礼者たちとの暮らしは、慣れてくればとても楽しい時間になる。

しかし、はじめはやっぱり不安だ。アルベルゲという特殊な環境がどういうものかということを生活編として記す。

 

 

 

 

アルベルゲとは?

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アルベルゲ(巡礼宿)

巡礼で一番お世話になるアルベルゲ。
巡礼とはアルベルゲをたどる旅だと言っても過言ではなく、アルベルゲによって1日を左右される旅でもある。

それは、その日の予定をアルベルゲで決めなくてはならないからだ。

「今日はしんどいから20km先のこのアルベルゲに泊まろう」

「この町の教会は素敵らしいと聞いたから、今日はここのアルベルゲを目指そう」

「この区間はアルベルゲがほとんどなくなるから、今日は頑張ってここまで進んでおこう」

などなど、アルベルゲが旅の道標となる。

アルベルゲはだいたい5~10kmにひとつはある。最大は17km何もないところがあったが、かなり稀だ。

 

 

アルベルゲには公営と私営がある。

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公営はムニシパルと呼ばれる。
だいたい町の中心のカテドラル近くにあり、収容人数も多く、値段も安い(寄付制~6€くらい)
その分、施設が古かったりシャワーやキッチンがあまり良くないことが多い。
ベッドはドミトリー制で、一番すごかったのが1ルーム90ベッドという公営アルベルゲもあった。

 

私営はプライベートと呼ばれる。
料金は高めで、8~15€ほど。
公営よりも施設が整っており、部屋もきれいなことが多い。
収容人数は少なめなので、人気の私営アルベルゲはすぐに一杯になる。
また私営アルベルゲは電話で事前予約が可能。

 

アルベルゲは基本的に連泊はできない。初日に公営アルベルゲに泊まり、次の日に同じ町の私営アルベルゲに泊まるという裏技もある。
またアルベルゲに泊まらなければならないという決まりはないので、ホテルに宿泊もできる。
ホテルは安いところで20€前後。プライバシーのないアルベルゲ生活に疲れたらホテルでゆっくり過ごすという人もいた。

 

 

食事

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※写真はガリシア名物プルポ屋のおじさん

毎日過酷な運動量をこなす巡礼で一番大切なのは、やはり食事だ。
食事は外食派と自炊派に分かれる。割合的には7:3くらいかと思う。
一番多いのは朝食は自炊でそのあとは外食というパターンで、完全自炊派は少ない。

 

 

外食派

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スペイン人は日に4~5回に分けて食事を摂る。
巡礼路にあるカフェやバルもそのような時間帯に合わせてある。

 

 

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朝は簡単にクロワッサンやトーストとミルクコーヒーで済ます(3€前後)

 

 

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10時前後の休憩でボカディージョというスペイン風サンドイッチを食べる。(5€前後)

ボカディージョは生ハムやサラミを挟んだものや、厚切りのチーズを挟んだものがあり、ボリュームも結構ある。他にもトルティージャというスペイン風オムレツなども食べる。飲み物はコーヒーかビール。

 

 

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14時前後の到着後はレストランやバルで食事。
スペイン人は昼食を一日のメインにしている。
レストランやバルでは店先の看板に「MENU」と書いてあり、これが日本でいう定食セットのようなものだ。

 

 

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前菜(サラダ、パエリア、スープなど)メイン(牛、豚、鳥、魚から選ぶ)デザート(ケーキ、プリン、アイスなど。市販のものをそのまま持ってくることが多い)これに加えてワインが1瓶かその半分ついてくる。これで(8~15€)
かなり量が多いので、残す人も多い。他にも単品料理もある。

19時くらいから夜食。

非スペイン人はだいたいこの時間にメインを食べる。この時間にも上記のMENUはある。

 

 

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夜は少し値段が上がることが多い。食事を終えるとバルで酒を飲みながらピンチョスというつまみを摘んだりもする。

 

ということで、全部外食にすると1日20€くらいはすると思う。
僕らは10時の休憩でコーヒーなどを頼んでいた。スーパーもキッチンもないところでは、レストランで食事をしていた。

 

 

自炊派

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※写真は韓国人にもらったコチュジャンを使ったスタミナ自炊料理

自炊で大事なのは、「キッチン」と「スーパーマーケット」だ。
この2つが完璧に揃うことはそう多くはない。

 

 

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アルベルゲにキッチンがあるといっても、ガスコンロがなく電子レンジしかないというところや調理道具がボロボロというところもあった。巡礼者はほとんどの人がマナーが良いのだが、たまにキッチンが大変なことになっているところもある。

完璧なキッチン(コンロ、冷蔵庫、食器)があるところは僕達が泊まったところでは6割くらい。大都市のアルベルゲとガリシア州にはキッチンがないところが多い。(※ほとんど公営アルベルゲ泊)

 

 

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スーパーマーケットが一番の難敵だった。日本ではどんな田舎にでもスーパーマーケットはあって精肉や野菜が売っているが、残念ながらスペインでは(というか日本が異常だと思う)そうはいかない。

小さな町だと個人商店しかなく、売っているものもパスタとハムやチョリソ、しなびた野菜や果物、缶詰くらいで、しかもスーパーマーケットより値段が高く、山の中では2倍近くすることもある。
大都市には立派なスーパーマーケットはあるが、郊外にあるためなかなか買い出しに行くのも難しい。なぜかというとアルベルゲは町のド真ん中の一等地にあることが多いからだ。しかも大都市ではその周辺には土産物店などしかない。
買っていけばよいかというとそうでもない。ちゃんとしたキッチンがあるかどうか見てみるまで分からないし、そこがすでに満員になっているかもしれないからだ。

 

結局、キッチンとスーパーマーケット(精肉も売っているチェーン系)がちゃんと揃っているところは、中規模な町(Astrugaなど)しかなかった。
なので、必然的にハムやチョリソなどとパスタくらいになってしまう。これはなかなか辛かった。
しかし、酒の品揃えはどこも素晴らしいのがスペインらしい。

 

 

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料理についてはだいたいは日本のキッチンに近いが、ガスコンロに火をつけるのがマッチだったりする時がある。アルベルゲによっては調味料が揃っていたり、調理器具が充実していたりするが、それはキッチンを見るまでわからない。
他の巡礼者が余らしたものが置いてあることもある。韓国人がよく米を置いていくので、要チェックだ。
料理時間は大事で、ピーク時間になると小さいキッチンに何人も詰めかけて大変なことになるので、できれば19時前後は外したほうが良い。
特に韓国人は写真のようにグループで韓国料理を一から作るため、キッチンを占拠することが多い。

 

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シャワー

残念ながらバスタブはない。
山間部のアルベルゲでは湯の出が悪い。シャワーは汗と疲労を流す無くてはならないものなので、「ここのアルベルゲのシャワーはどう?」とよく聞かれることが多い。それくらいシャワーは大切だ。
シャンプーや石鹸はついていないので、各自で持ってくる。
シャワーも混む時間帯がある。だいたい到着直後の13時~14時までは混みあう。 

 

 

洗濯

洗濯機はあるが、有料。洗濯と乾燥をすれば4€ほどかかる。
ほとんどの人は手洗いで済ませていた。アルベルゲではシャワー室の近くに手洗い用のスペースがあるので、そこでゴシゴシしていた。乾かすスペースもちゃんとある。

序盤のバスク地方と終盤のガリシア地方は雨ばかり降る巡礼者泣かせの土地。特に洗濯物が乾きにくいというのが難点だ。ほとんどの人が荷物軽量化のため必要最低限の衣類しか持ってきていないので、長雨はかなりキツイ。そんな時は乾かなかった洗濯物をバックパックに干しながら歩く。これで嫌な匂いを少しは軽減できる。

 

 

トイレ

なかなか大変なのはトイレ。特に女性は困ることが多いだろう。
巡礼路はほとんどのところで5km間隔に町があるので、カフェやバルのトイレを利用することができる。しかし山間部やLeon周辺の大平原などでは町が少なく、トイレはそこら辺ということになる時も多い。
特にLeon周辺は見渡す限りの麦畑の真ん中に一本道があるだけなので、茂みや隠れるところが少ない。男性ならちょいと済ませることができるが、女性は大変そうだった。
なので、その日の行程をトイレの事も含めてしっかり確認するようにしよう。

 


睡眠

寝袋は必須だ。寒さ対策だけでなく、シーツがないアルベルゲなどでも使える。寝袋がないと泊めないというアルベルゲもある。
基本は21時前後には寝始める。22時に消灯というアルベルゲが多い。

 

消灯すればみんな静かになるが、ここで困るのが「いびき」

いびきは晒される人だけでなく、する人も被害にあうという誰も得しない悲劇でもある。
特に恰幅の良いおじさんなどは要注意で、ひどい人は周りが怒り出すくらいのレベルのいびきもあった。しかし、本人はただ寝ているだけなので誰も文句は言えない。

だが「いびきブラックリスト」入りしてしまうと、「おい、あの人いびきすごいらしいぞ。同じアルベルゲだったらどうしよう」とか言われてしまうこともある。
これは日々大変な巡礼おいて、睡眠とは非常に重要なことだからだ。

 

なので、目が覚めやすい人は耳栓を買っていくことを薦める。またいびきをしてしまう人は健康にもよくないので医師に相談を。

 

 

足の痛みとマメ

巡礼中ずっとついて回るのが、足の痛みとマメ。
ある程度の町に行けば薬局は必ずあるので、湿布や軟膏などを買うことができる。(僕らは貰い物で済ませた)

 

足の痛みはだいたい慣れてくるので、ひどい時は休憩するのが一番だ。
足の痛み対策としてよく見たのは、湿布、アンメルツ系の軟膏、膝や足首のサポーター、オイルマッサージ。
やはり巡礼の前後にしっかり準備体操をするのが一番良いと思う。特に巡礼後の体操は重要で、足の裏やふくらはぎなどは重点的にマッサージしているとだいぶ和らいでくる。

 

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マメはもはや巡礼中一番の相棒である。
マメ対策として僕らが教えてもらったのは、足の裏にワセリンを塗ること。マメができやすい指や踵の方にワセリンを塗りたくる。僕らも序盤はマメに悩まされたが、ワセリンを塗り始めてからだいぶマシになった。ワセリンは薬局で売っている。他にもマメ用の絆創膏などもある。

 

正しいマメの潰し方
ベテラン巡礼者に「マメはできたら即潰せ」と教えてもらった。放っておくと歩いている時に潰れて激痛に襲われる。
用意するものは安全ピンと消毒液とティッシュ。
安全ピンを消毒し(ライターで炙っても良い)マメにチョイチョイと穴を開け、ティッシュで中の水分を出す。マメには乾燥が一番なので、早めに水分を抜いて乾かす。
長い巡礼路では、何回か目を疑うような巨大なマメにも出会える。

 

 

治安

スペインではマドリードやバルセロナはスリや強盗が多いといわれるが、巡礼路は田舎なのでほとんどそういった話を聞かなかった。
アルベルゲでもみんな貴重品をベッドの上に置いたままだったり、カメラやiPadなどを充電したままバルに飲みに行ったりしている。
僕らは貴重品だけはしっかり管理していたが、あとはベッドに置いたままだった。
外国なので油断は禁物だが、そこまで気を張ることはない。
海外での危険な時間帯は夜間だが、だいたいのアルベルゲが22時門限であり夏季は21時くらいまでは明るいので、普通に過ごしていれば出歩くこともない。

 

 

マナー

巡礼路は何だかんだいっても聖地であり世界遺産でもある。
色々な思いを抱きながら歩く巡礼者は、皆マナーが良い。
とくにこれといったマナーは少なく、日本で暮らしているときと同じ気持ちで良いと思う。
巡礼特有の決まり事は少ない。
・あいさつ
・門限を守る
・ベッドの上にバックパックを置かない
・山間部は節水
・教会に入る際は帽子をとる
くらいだ。

 

 

電源

コンセントは日本と違うのでコネクタは必要。
差込口が各ベッドについているところもあれば、食堂に何個かあるだけというところもある。
なので充電競争が激しいアルベルゲもある。中にはトイレのコンセントまで使われているところもあるほどだ。
できるだけ充電しやすい時に済ませておいたほうが良いので、どうしても不安なら予備の電池を幾つか持っていったほうが良い。

 

 

インターネット

WIFI完備のアルベルゲは公営で5割くらい、私営はだいたい備わっている。
アルベルゲにインターネット用のパソコンを置いているところもあるが、有料で1時間2~4€くらい。
巡礼者のほとんどがスマートフォンやタブレット端末を持っている。驚いたのは高齢の巡礼者もけっこうスマートフォンなどを使いこなしており、Skypeで孫と話している姿をよく見た(ゲスト出演したことも多い)
アルベルゲにWIFIがなくても、近くのカフェやバルに行けばWIFIがあるのでそこまで困ることはなかった。
しかしスペインのWIFIは総じて遅い。

 

 

巡礼情報リンク 

以上が生活編でした。

tabing.hatenablog.com

つづいては装備編↑
質問などございましたら、どんな簡単な事でも良いのでコメント欄にお書きください。

 

 

tabing.hatenablog.com

基礎編はこちら。