ここは・・・天国?インド帰りを癒やす国ネパール

9月19日

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あれ?なんだこの和風な場所は?
ああ、ついに死んだのか・・・
どうやらインドに食われてしまったらしい。死ぬ前に神様が哀れな僕の願いを聞き入れて、日本食を食わせてくれるようだ。


ああ、神様!死ぬ前にトンカツが食いたいです。カレーの味のしない分厚い豚肉に食らいつかせてください。

 

 

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のわぁあ!ト、ト、ト、ト、トンカツじゃあございませんか!
うまい!あふれる豚肉のジューシーさ!何ヶ月ぶりだろうか!
白い米、箸、漬物に・・・味噌汁!
味噌汁だ。ああ、しょっぱい。これぞ僕の血が欲していた食べ物。味噌だ。醤油だ。我々のDNAはこの2つが螺旋状に絡まっているのだ!
神様、どうやら僕を天国へ連れて行ってくださったのですね!
そう、ここは天国。またの名をネパールという。

 

 

最後の関門『インディラ・ガンディー国際空港』

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いかんいかん、やっとネパールにたどり着いていたのを忘れていた。
インドという呪縛が体からなかなか抜けない。濃いぜ!インド!

リシケーシュという安穏な山の中で1周間も過ごした我々は、戦闘都市デリーに向かった。久しぶりの特濃インドの世界ですぐに消耗し、観光もそこそこ、次の日の昼には空港へ向かった。


ニューデリー駅からは100ルピーで空港まで一本の最先端な電車が走っている。インドらしくない最先端な電車は市民で混み合う地下鉄駅の奥の方にあった。
インドでいつも思うのだが、本当に金持ち優遇な国だ。飛行機に乗るインド人なんてほんの一握りだから、ここのホームを行き交う人はまばら。むしろ外国人のほうが多い。そのホームだが、インドでは富の象徴とされるエアコンがガンガンにかかっている。はるかに利用者が多い市民の地下鉄はエスカレーターさえ無いのにである。電車もかなり豪華で掃除が行き届いている。こういうところに金をかける前に、国内の何億人もいる最低限の生活をしている人たちに何かしてあげるべきではないのだろうか?
いや、お隣の一応社会主義国家ですら「先に富める者から富め」というスローガンのもと経済発展しているんだから、これは仕方がないことなのかもしれない。所詮、僕は貧しき時代を知らない日本人なのだ。ガラパゴス日本にいると、どうしても日本式の尺度でしか物事を考えることができない。それが日本の良い所でもあり悪い所でもある。最近は悪い方ばかり目立っているが・・・

 


空港に着いてもインドは黙っちゃいない。最後の難関が空港入場なのだ。
インドは非常に厳しいテロ警戒をしている。古くはシク教徒やパキスタンなどのイスラム教勢力から度重なるテロにもあっている。歴代首相も何人かは暗殺されているのだ。
空港に入るには、パスポートと航空チケットのチェックがある。しかもこのEチケット全盛時代にも関わらず、紙に印刷して持っていかなければならないらしい。普通の国なら、タブレットの画面でメールを見せればOKなのだが、ここはすべてが面倒臭いインドなので大事を取ってわざわざ印刷していった。
といってもスカイスキャナーからエクスペディア経由で予約したので、ありがたいことに日本語メールが送られてきた。これ見せてもわからないだろう。

普通は必要書類を揃えていれば、難なく入場できるのだが、僕らは少し事情が違う。
僕らの乗る飛行機は明日の朝7時発なのだ。現在は15時。なんかきな臭い匂いしないかい?

 


なぜこんなに早く舞い降りたかというと、安全だからだ。
まず第一段階として、空港シャトルトレインは夜中の運行はしていない。混みあうと噂のインディラ・ガンディー空港、3時間前には到着しておきたいのに。かといって空港周辺や空港内のホテルはすごく高い。
ならばタクシーしか無い。しかし早朝にタクシーを拾ってここまでくるなんて博打はできない。足元見られて特別料金をふんだくられそうな予感しかしない。
というわけで空港泊を選んだ。友人曰く、空港はものすごく綺麗で、入場規制があるからすこぶる治安が良いらしい。


ゲートは8つほどある。それぞれにライフルを持った軍人が立っている。
No.3のゲートに向かう。40歳位のおっさんだ。色褪せたライフルが鈍く光る。
「チケットとパスポート見せて」
おっさんは日本語だらけの紙を手に取る。
「なんじゃいこりゃ?」
ここは下手に下手に。
「すいません。わかりにくいっすよねえ。日本語なんです」
変に笑顔な日本人を見て、おっさっんは言った。
「あ?これ明日の便じゃん。だめだめ、明日おいで」
や、やはりそうくるか!「別にいいやんけ!」とは言えない。
「いや、朝早いじゃないですか。僕ら寝坊したら嫌なんで、空港内のトランジットホテル泊まろうと思ってるんですよ」(ウソ)
「はあ?意味がよくわからん!だめだめ!明日出直してきな!」
トランジットホテルがあるという調べはつけてきていたのだが、いらない言い訳だったか?
めげないめげない。ここはインド。ゲートは8つもある。長いインド滞在の経験上、おそらくどっかでひっかかる。


続いてNo.4のゲート。
なんか死亡遊戯みたいになってきた。
目の前にはがっしりしたお兄さんが待ち受けていた。
「パスポートとチケット確認します」
お兄さんが日本語だらけの紙とにらめっこしている。
横のゲートで東洋人グループが守衛と何やらもめている。ヤンヤヤンヤとケンカしていたが、そのうち追い返された。
「これ、明日の便ですよね。明日来てください」
「いや、あの明日朝早いんで、空港の中で寝ちゃおうかなあなんて」
「ダメだね。入場させられない。あっちの方にホテルがあるからそこに泊まりなさい」
そこはクソ高いんだよお兄さん。
僕らはお礼を言いながら、その場を去る。
まだまだあと6つもゲートがあるんだ。希望はある。


一つ飛ばしてNo.6のゲート。
同僚とぺちゃくちゃおしゃべり中な若い兵士がいた。
紙を手渡す。彼は同僚と話を続けながら、紙に目をやる。
カトマンズ行くんですか?」
「はい、そうです」
「お気をつけて」

 

は?

 

すんなり入場。こ、これがインドだ!!!
そのまま空港内で時間をつぶす。めちゃくちゃ高い喫茶店で充電しながら読書なんかをして過ごす。
WIFIは30分だけ無料だった。無料WIFIと充電スポットがたくさんある空港は素晴らしいんだけど、なかなかないのが実情だ。
3時に起きてイミグレーションへ。ついにインド出国だ。

 

28日間。長かったような、短かったような。もう疲れたような、そしてまだまだ見たいところがあるような。もう二度と来るか!と何度も思いながら、たぶん半年くらいしたらまた来たくなるインド。これぞ、インド最大の不思議。あれだけ喧嘩して、あれだけ騙されて、あれだけ待たされて、あれだけ不快な気分にさせてくれるインドだが、気づけばそんな生活を懐かしく思う自分がいる。
インド、たぶん、また来る。

 

 

天国へようこそ

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そんなこんなでやっとたどり着いていたネパール。
ネパールの別名「天国」とは、主にインド帰りの旅行者が名づける。
なぜならここはウザい客引きもいないし、詐欺師もいないし、飯はうまいし、優しい人達しかいない。
いや、客引きも詐欺師もいるのはいる。しかし一度インドのレベルに浸かったあとでは、ネパールのそれはまるでフリーザヤムチャくらいの違いがあるのだ。


インドというナメック星で鍛え上げた不滅の精神は、栽培マンにやられるようなネパールの客引きなんぞ相手にならない。
むしろ物足りなさを感じる。
「おい、それで終わりなのか?もっとグイグイ来いよ!肩を掴めよ!嘘八百並べよ!ああ・・・」
ネパールの客引きはすぐに諦めて行ってしまう。

なんだか、寂しい。だってインド帰りなんだもん。

 

 

 

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そんな天国カトマンズの天国ぶりといえば、一番は「食」であろう。
世界中から押し寄せる人々を満足させるために、最大の安宿街タメル地区にはありとあらゆる料理と酒があるのだ。


特に我々日本人にはうれしい和食の店。このクオリティが高いのだ。
中南米、ヨーロッパ、中東、南アジアと周ってきたが、そこにある日本食とはお世辞にも美味いとはいえないものが多い。もちろん一流レストランなんかに行けばそれはもう美味しいのだろうけど、僕らのような貧乏旅行者なら門番にぶん殴られそうなところばかりなのだ。それくらい日本食レストランは高級である。
かといって安い日本食の看板を掲げる食堂に向かえば、そこには生まれてはじめて食べる日本食なる幻影が待ち構えている。しかも、だいたい中国人経営の店なのだ。

 

特にインドで食べた日本食は、もはや料理界の新境地と言っても過言ではない。日本の甘口カレーをインド人に食わせたらひっくり返るだろうが、それと同じことがインドの自称日本食レストランでも起きている。
例えば、バラナシにある「中国・韓国・日本・メキシコ料理」を出すグローバルなレストランで嫁が頼んだ唐揚げ定食。メニューには「KARAGE TESYOKU」と書かれている。それはケチャップが染み込んだ分厚い衣を纏った骨だらけのチキンであり、そいつがこれまたケチャップが染み込んだライスの中に埋もれていた。味は想像を絶する。

 

 

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しかし、カトマンズの日本食はホントに日本食なのだ。
これは「ふる里」という店の豚キャベツ味噌炒め。味噌だ。本物の味噌の味がする。
醤油はよく見る。どこの国にも売ってあった。それは醤油というにはかけ離れた味だったが。キッコーマンの醤油はよくみたが、かなり高級なシロモノだった。でも、醤油風味な料理はなんとか見つけることはできる。


だがしかし、味噌はない。その辺のスーパーにはどこにも売っていない。味噌を何ヶ月も食わないと、何を食べてもなにか物足りないような気分になる。旅に出てから9ヶ月、唯一味噌を摂取できたのはモロッコの「ノリコさんの家」だけだった。
そんな待ちわびた味噌汁が目の前にある。

5ヶ月ぶりの味噌汁は、胃袋の底にあるといわれる「おふくろの味器官」へと達し、久しぶりの満足感を得るのであった。

 


楽しい楽しい天国ネパールは、世界の頂きヒマラヤ山脈を抱くトレッキング天国でもある。
そんなことで明日から1週間ちょいほどアンナプルナ国立公園に行ってきます。
旅の最後のトレッキング。はたしてどうなるものやら・・・