ライカR8とバリオエルマーR35-70/3.5のレビュー
ライカM3とライカR8が我が家に鎮座するとは、ほんの一年前までは想像もしませんでした。これぞ沼画。
ここに至る過程の詳細はこちらに譲るとして、ライカR8の情報が少なすぎるので久々にレビュー記事を書いてみました。
これほど需要のない記事に時間を賭けるのは、自己満足以外の何ものでもありませんがこれが快感になってくると結構キテます。
レビュー動画も作ってみました。
詳細の前に一度ご覧いただくとイメージしやすいと思います。
ライカR8への道
非常に簡潔に述べると、
・1954年にライカはレンジファインダーカメラのM3を発表
・当時M3は革新過ぎるカメラであり、圧倒的なスペックで他メーカーを圧倒
・世界中のメーカーが「M3に勝てない」とレンジファインダーカメラを諦め、一眼レフカメラへパラメーター全振りする。
・1970年代になると一眼レフカメラが主流となったが、ライカはM3の栄光に引きずられ、時代に先乗りしすぎて時代遅れとなる見事なウサギとカメ現象を起こす。
・日本のミノルタと提携し、何とか一眼レフカメラを販売継続するも業績不振となり会社は身売り。ライカ暗黒時代となりライカM4-2のような伝説を生む。
・ライカRは、ライカフレックス後にミノルタのカメラをベースとした一眼レフカメラであり、ほぼミノルタ製。R3~R7は、日本人の母とドイツへよく出張に行く日本人の父の子供、いわゆる日本人であった。
そして暗黒時代の地獄の底から東西ドイツ統一を見上げてちょっとしたあとの1996年、完全自社設計のライカR8が生まれたのである!!!!
ライカR8のご尊顔
開封の儀ってどうしてもやりたいよね?
カメラのナニワさんより購入。
丁寧に検品後、ホワイトな対応でゆったり送っていただけるので、だいたい一週間近く悶えさせてくれるドSなカメラ屋さんです。
いいわあ~中古フィルムカメラの『いきなりプチプチ状態』いいわあ~
もうシルエットからしてヤバい。
きゃあああ!ご尊顔!
これがドイツ生まれの高級バクダンおにぎり(Leica印)
見ておわかりのように、完全自社設計として世界中のライカファンが待ちに待って現れたのがこのバクダンおにぎりだったので、賛否両論というかギレン・ザビ並みに否!だったらしい。
そこがまたええのよねえ~
しかも買ったら5000円以上するストラップまで付いとるじゃないの。
レンズは後述。
またすごい迫力。
幅✕高さ✕奥行 158x101x62mm
重量 890 g
まさにバクダンおにぎりでしかないですが、後述するように人間工学デザインらしいのです。
ドイツの技術は世界一!さすがバウハウスを産んですぐ潰しただけある。
先輩のM3と比べたらこれですよ。
もう思想が違うねこれは。阿藤快と加藤あいくらい違うよ。
シャッターは電子式(16秒〜1/8000秒)
当時、8000分の1は凄かったようだ。
上下走行式金属羽根電子制御フォーカルプレーンのガッシャガッシャする所は、裏面を開けていつまでも眺められる機能美です。
パルパス割れあり。光漏れ防止のパルパス材が割れております。
モルトと同じようなもので、まあ古いカメラだといたしかたないか。
モルトは自分でも張り替えられるようですが・・・
おそらく史上最大級のシャッター速度ダイヤル。
もう、ぐりぐりの感触がたまりません。なんでこんなにデカいのかは検討も付きませんでしたが、実際にこのデカいカメラを覗き込みながら操作すると死ぬ程しっくり来ます。
「こ、、これが、、、独逸はんの人間工学っちゅうやつかいな」
手前は測光モード切替ノブ。
レバーを押して動かすタイプです。
スポット、評価、中央部重点平均測光が可能。
中古だと使ってみないとわからない露出計でしたが、案外大丈夫でした。
しかし昨今のデジカメレベルは求めないほうが良いので、脳内露出計を補助で使うと良いでしょう。
シャッター巻き上げレバーの感触は、M3のような耽美さはありませんが、それでも「ほわ~ん」ときます。
これはやってみた人にしかわからない「ほわ~ん」
M=手動、A=絞り優先、S=シャッター速度優先、P=可変プログラム自動制御
Fはストロボ連動のフラッシュモードですね。僕はまず使いませんが、さすがプロフェッショナルカメラ。スタジオ撮影とかで本来は使ってやるべきスペックです。
このアルファベットのフォントがホントに良いですよね。
Appleに通じますが、フォントってホント大事ですよ。
フィルム巻き戻しレバー。
至って静かです。NikonF3のジャコジャコ鳴る感じも好きですが。
三脚やモータードライブ(死語)も付けられます。
そして、電池を左側のレバーを倒してから入れるんですが、めっちゃわかりにくい。
よってYoutube様の力をお借りして、異国の有志によりご教授いただきましょう。
とにかくR8は情報が少なくていろいろ苦労しました。
Leica R8 (and R9) - Removing the Battery Compartment and Mounting the Motor Drive
けっこう力とコツとちょっとの勇気がいります。
「TOSHIBA CR2G 2P カメラ用リチウムパック電池」を入れました。
こんな電池初めて買いましたよ。
こんな感じになります。写真を見て思ったでしょうが、電池カバー、デカすぎますよね?
「え?どこまで外れるの?」という問いと向かい合いながらカバーを外します。
なのでちょっとした勇気がいります。
お背中、デカいわ!そのくせ独居房のような小窓液晶。
でもMADE IN GERMANYですべてが赦せる。
左の小窓はフィルム確認用、右の小窓はフィルム巻き上げ確認用、デジタルとアナログの二刀流です。フィルムカメラ初心者にはありがたい。
パカッと開けるとISOやセルフタイマー調整ができます。
ISOはフィルムを入れると自動読み取りしてくれます。すごい!
自動読み取りの場合は、液晶に撮影枚数とDXの文字が出ます。
中華スマホ撮影なので画像が悪いですが、ファインダーを覗いた感じ。
ファインダー倍率0.75倍。
ファインダー内は若干青味がかっているというレビューが多かったですが、なんか黄緑っぽい気もします。
さすが一眼レフカメラなので、ボケが見えるのはなんとも嬉しい。M3使ってると、そこの所は頼もしく感じます。
でもこのピント合わせ、中心の円の中の円が上下に割れていて、そこのズレを合わせることでピント調節します。
少々癖があるので、慣れるまで時間がかかりました。
M3、F3、バルナックライカⅡfと並べてみました。
壮観!観艦式のようじゃないか!まさにお財布星の屑作戦!
底面写真を見て、ライカ沼先輩たちはピンときたと思いますが、このR8は恐怖の初期型です。R8初期型は故障率が異様に高い欠陥品であり、完全自社設計してこれかよ!ってなった曰く付き。
でもですね、このシルバークロームがどうしても欲しかった。
亜鉛ダイキャスト素材の軍艦部のシルバークロームがクール過ぎます。
他にはブラックもありますが(そっちのほうが人気ある)、僕はシルバークロームにドーパミンドバドバです。
ということですが、現在R8シルバークロームはネット上でもほとんど見当たりません。
なぜならR8が電子シャッターだから。
もともと人気がないのもありますが、電子シャッターだと壊れた際に修理できない場合が多いです。電子部品や基盤部分の破損の場合、もうパーツがないからです。
機械式シャッターの場合、修理できる熟練工がいる限り、わりとなんとかなるようですし、そもそも機械式シャッターは壊れにくいです。
しかも初期型も後期型も値段がそんなに変わらないので、ネットの海で数少ないB判定のR8シルバークロームを手にしたわけです。
しかし、初期型は無償補修してくれたケースが多いようで、希望的観測でメーカーによる整備を受けたカメラであると思って(恐る恐る)使い倒します!
バリオエルマーR35-70/3.5
ライカ、ライカ言うてますが、このレンズを買いました。
これは日独ハーフというか、限りなく日本に近いドイツ、謂わば東京ドイツ村です。
光学系はミノルタの設計、機構系はライカの設計。
ライカRレンズは、Mレンズに比べると安いですがそれでも最近はオールドレンズ遊びユーザーのおかげで値上がり中。
M3でsummicronの50mmをすでに持っているので、欲しかったのはRレンズのsummicronの35mm、しかしこれが高い。
M3は単焦点一本勝負なので、あとR8にズームを付けて二刀流にすれば最強じゃないか!と思ったこともあり、何が最強かは結局わからないままですが、ズームレンズに食指が動く。
なんせバリオエルマーは安い!なんせほぼ日本製。マニアには偽物呼ばわりされていますが、ライカの皮を被ったひとつ上の日本レンズだと思えば上等じゃないか!
要するに、妥協して経済性と利便性を取ってバリオエルマーにしました。
35-70mmという中途半端なズーム域、そして何より最短撮影距離が1mというコミュ障レンズです。
絞りは3.5-22で羽根の枚数は6枚。
「シュッ!」とフードが飛び出ます。
フィルターサイズはE60。希少なサイズなのでキャップやフィルターがほとんど売って無く、あってもめっちゃ高い。
70mm
35mm
割と伸びます。どういうわけか、広角だと伸びて、望遠だと縮みます。
だれか原理を教えて下さい。
3カムレンズ。分かりづらいですが、手前のはみ出したパンツみたいなパーツが3カム目です。
R8は3カムレンズかROMレンズしか使えません。
それ以前のRレンズは接続も不可。
ROMレンズはR8、R9専用レンズですが、かなりお高いのにレンズ情報の伝達くらいしか違いはないです。
でかい!ごつい!
バリオエルマーは他にもシグマが作っているモデルもありますが、ミノルタエルマーはその中でも歪曲などが少なく使いやすいレンズです。
バリオエルマー兄弟はどれも一長一短あり、ミノルタエルマーはやはり最短焦点距離1mがネックなようです。
なのでコミュ障な優等生レンズって感じですね。
でもレンズの意匠はどうみてもLeicaですねえ。
シルバークロームにブラックレンズ、たまりません!
大艦巨砲好きな国民同士の共作。
Nikon D750+Nikon AF-S NIKKOR 24-120mm f/4Gのコンビと比べました。
最大径x長さ:84x103.5mm 重量:710gの巨砲と比べると小さく感じますね。
それにしても日独のデザイン思想が顕著に現れてるなあ。
このバクダンおにぎり、信じてもらえないと思いますが「すっごい持ちやすい」です。
レンズ付けて重心が変わっても、とにかく手にフィットしますし、各種操作がしやすい。
まあ、僕は手がかなり大きな方なのもあると思います。
ですが、これが人間工学デザインってやつなんでしょうかね?
フィルムの入れ方
フィルムの入れ方の情報がほとんど無くて、途轍もなくなりました。
英語サイトの説明を見たり、YoutubeでR8ストリートフォトしている動画をコマ送りして見たり・・・
実際は至って簡単、まず左側にフィルムを逆さに入れ、右下の赤いマークのところまで伸ばします。
このままフィルム巻取りの歯車のようなパーツにフィルム穴を合わせ、閉じてからシャッターを2,3回切れば良し。
最初、赤マークのところにフィルム先端を深く差し込んでしまい、中でフィルムがたわんで巻き取れなかったりしました。
実際は赤マークのところにフィルム先端を置くだけで良かったです。
撮影終了後は、シャッターボタン横のRボタンを押して、巻戻しレバーを回すだけで良いです。
ライカR8作例
作例はnoteでまとめました。
まとめ『ライカのデザイン』
いやあ~M3で満足すると思ったんですがね、人間の欲というものは果てしないです。
僕みたいなのはスターリン時代のソ連に生まれればよかったんでしょうが、そうもいきません。
ライカ=あえてのLeicaが欲しくなるのは、ブランドもありますがやはりデザインですね。
ただの見栄っ張りなデザインとは違い、考えつくされた機能美です。一見わからないところがドイツ流でしょうか?
このバクダンおにぎりも、手に取って一度シャッターボタンを押してみたら考えが変わります。
M3も長方形のカメラに見えますが、手に持った瞬間に製作者の意図がブワッと伝わってくるんですよね。
Leicaの中の人「貴様にはわかるかい?うん?」って感じ。
日本製カメラの中の人「え~とですね、この機能は〇〇でして、ここが当社の技術の粋を集めて作りました・・・」という感じ。
道具として使いやすいのは迷わず国産機です。日本製カメラは撮影手段としてのカメラと捉えれば最高品質だと思います。
Leicaはカメラをカメラ足らしめるデザイン、イデオロギー的な工業製品です。ここにブランドイメージが生まれ、所有欲を満たしてくれる源泉があるように思います。
ここに何度も潰れそうになっても蘇り、バカ高いのに必死でついてくる強烈なファンを抱える理由があるのだと思います。
中古になっても値が下がらないLeica製品を支えるのは、こういう沼の中で将棋させるくらい余裕のある先人たちのおかげです。
以前も書きましたが、こういうのに弱い僕のような人間がズルズル沼にハマっていくんですよねえ~
た・ぶ・ん、当分カメラ買いません。
当分は吉川M3と小早川R8の両川体制で行こうと思います。
それにしても、カメラって素晴らしいですよねえ~
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これで最後だと思ったのに・・・