『SIGMA fp』のISO6の世界で表現の壁を超える
『SIGMA fp』というシンプルに撮影者のために生まれたカメラを片手に、秘密の沢へ向かう。
今回はfpのコンポジット低ISO拡張を利用して、ISO6という信じられない世界を体感してみた。
ということで、今回はISO6の世界で何が起こるのかというのを、作例多めでレビューしてみようと思う。
※写真はブログ用にリサイズしてます。
コンポジット低ISO拡張『ISO6』とは?
本来の設定ではISO100からスタートなのだが、コンポジット低ISO拡張機能を使えばISO6というよく意味がわからない世界へ没入できる。
ISO6なので、明るい日中でも長時間露光での撮影が可能となり、NDフィルターが不要なのだ。
fpは撮影者本位のカメラであり、そのために軽量でフルサイズなのだから、荷物を減らすというのは設計思想に準じている。
ちなみにISO6, 12, 25, 50での撮影は、複数枚の連写合成で実現している。写真を見てもよくわからないが、低ISOで複数枚撮影した写真を合成しているようだ。
例えばこの写真は、ISOオートで撮っている。
ISO640 シャッタースピード60/1秒
ISO6 シャッタースピード60秒
60秒の長時間露光ともなれば、この写真のように不思議な世界が現れる。
静(岩)と動(水の流れ)が、60秒という時を経ることでこの写真になるのだ。
あれほど動的で主張の強い水の流れが、まるで鏡のような滑らかな光の膜になる。
これこそ、長時間露光でしか表現できない世界、これが三脚さえあれば簡単に撮れてしまうのがSIGMA fpなのだ。
ISO6の静寂な世界
ISO6 シャッタースピード60秒 F22
キットレンズである『SIGMA 45mm F2.8 DG DN Contemporary』での撮影。
単焦点レンズがキットになっているところが、SIGMA愛を加速させるのは僕だけだろうか?
このレンズ、とにかく良い意味でキットレンズ。よく映る、派手さはないが、fpのらしさを結果に導く素晴らしいレンズだ。
絞るとカリカリの解像度で、長時間露光にはもってこいの優等生だ。
同じ設定で80秒。
ここまでくると目に見える違いはない。
露出補正がダイヤル式で簡単に行えるので、シャッタースピードと連携させるとかなり撮影での主観をめり込ませる範囲をマニュアル感覚で操作できる。
かなりアンダー気味でも、長時間露光なら黒潰れはなく、岩と苔の質感が均質的に写っている。
ファサ~
乳白色の滑らかな滝、天上の世界かな?
ISO6をライカレンズで堪能
Leica summicron-R50mmで同じ景色を撮ってみた。
なんて贅沢なんだ~これが夢だった。
なんて優等生な写り、パキパキ未満カリカリ以上のSIGMAらしい絶妙な解像度。
こちらがライカレンズ summicron-R50mm。
50mmで最大F16なので、SIGMAレンズとは少し違うが、写りはシャープだけではない個性がある。
ライカレンズの方が滑らかながら、透明感は強い。
あとライカレンズは光のグラデーションの描写が秀逸だと個人的に思っているのだが、まさしくこの感じ!な写真になった。
モノクロでも撮っちゃった!
ここからは作例を写真集的にただ並べてみる。
評価は皆様の感性に訴えかけるということで・・・
すべて撮って出し、カラーモードは風景、ホワイトバランスは晴れ。F値やシャッタースピードは撮影時に調整しているが、全てISO6で撮っている。
ブログ用にかなりリサイズしてもけっこうきれい、もちろんRAWでも撮れます。
まとめ
どうだったでしょうか?
ISO6の世界、これは撮影の楽しさを凝縮したような感覚。
結果はわからないまま、ひたすら感性と数学を駆使して撮影する。
結果が出るまで1分以上待つことも。その間、少しの不安を懐きながら静寂な自然の中で「時間」を意識したまま無為かつ然としてただ時の過ぎるのを感じる。
自然の中で現代社会の時間というストレス因子を、少しの間だが排除することができる。
そしてその結果が目の前に現れる。
この一連の行程を自然の中で行うことで、久しく感じていなかった子供の頃の時間軸を思い出すことができた。
ISO6は水の流れだけでなく、さまざまな環境でも結果のわからない体験ができる。
そこにあるのは時間と自然光、まさに生物の基本だ。
だからこそ、得られる写真は文明によって気付かれた技術の賜物、何とも人間らしいなあと思うのは僕だけだろうか?
NDフィルターを使ったことはないので一概にはいえないが、ともかく設定を調整するだけでこのような写真が簡単に撮れるというのは何とも楽しい。
fpの小さなボディは、不快な重さや取り回しを感じることがなく、撮影の機会損失という絶対避けるべき状態に陥ることもない。
動画と長時間露光撮影を4時間ばかり行い、10本ほどの動画と200枚ほどの写真を撮ったが、純正バッテリーがちょうど一本切れるくらいだった。
一応予備も持っていったが、けっこうバッテリーが持つのには驚いた。
レンズはSIGMAキットレンズ、ライカレンズを使ったが、どちらも優秀なレンズなので違いは個性の範疇だと思う。
SIGMAキットレンズはとにかく写る。軽量なのに記録と表現を両立できる優秀なレンズなので、さすがContemporary。
ライカレンズは絞れば最近のレンズ並みに写るし、開放すればライカらしい粘りのあるボケとなる。
沢で撮ったスナップは、また後日。
総評として、『ISO6は手軽に体験できる不確定要素』だ。
結果がわからない不安というのは、現代で最も排除されてきた事である。
しかし写真を愛するものは、不確定だからこそ敢えて撮りに行くという数奇もの。
長時間露光はスマホではできない、カメラならではの世界。
もう一度、カメラを初めて手にした時のワクワクが味わえる、そんな楽しい撮影でした。
SIGMAfpについて。
副題「なぜSIGMA fpはカメラを殺したのか?」