日本よ!これがラオスだ!

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遥か中国の奥地から流れ行くメコン川に架かる橋を越え、アジア最後の秘境と呼ばれるラオスに入る。
ラオスと聞いて何を思うだろうか?


そう、何も浮かばない。

 

ラオスは東南アジアにあり、東南アジア唯一の内陸国であり、東南アジアらしく大国の思惑に翻弄された歴史を持ち、東南アジアでも飛び抜けて貧しい。

ラオスはアジア最貧国の一つで、国民の半分以上が一日二ドル以下での生活をしており、GDPは鳥取県よりも少ない。

 

 

 

 

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だがラオスの面白いところは、国民の八割が農業に携わっており、貧しい割に餓死者や物乞いはいないと言われる。インドやネパールなどで見たゾッとするほどの貧しさは感じられない。よく戦後すぐの日本の景色と例えられるように、素朴で何もない農村が広がっている。
なので人々は温厚かつやる気が無い。世界のどの国に行ってもNo.1の鬱陶しさを誇るタクシー(ここではトゥクトゥク)の客引きですらまるで押しが弱い。


「・・・あのぅ・・・トゥクトゥク」
くらいである。

 

ちなみにインドは、
「はよ乗らんかいワレ!今日は駅が全部ストライキでホテルは全部クローズで他のリキシャは全部ボッタクリだ!はよ乗らんかい!500ルピーよこせ!」
である。

※インドはいい迷惑である

 

なので押しの弱さに逆にイライラするバックパッカーも多い。
「もっと来いよ!もっと来いよ!なぜだ?もっと本気で当たって来いよ!」
と、気づけば松岡修造のようになってしまう。

 

 

 

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そんなラオスにはタイの最北部にあるチェンコーンから橋を渡っていった。
昔はボートで国境を渡れたのだが、今は立派な橋を渡っていくようになった。
ちなみにここの国境が僕が今まで体験したどの国境より楽ちんである。


ラオスの入国なぞ本当に確認したのかしてないのかわからないくらいの早業でスタンプを押してくれる。

エジプトやネパールの入国管理局の皆様に見せてやりたいくらいである。

 

 

 

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タイからラオスに入ると、まさにタイムスリップしたかのような感覚に陥る。
道はアスファルトから土に変わり、バスは大いに揺れ、風景は一面の深緑と畑と掘っ建て小屋。人々は日焼けした顔で天秤棒担いでせっせと歩き、4人乗りバイクでのんびり走り、子供たちは一様によれた服で鼻水を拭く。


そのくせ、物価は高い。
ポテトチップスやジュースなどはタイよりも3割ほど高い場合もある。それもそのはず、ラオスはほぼすべてのモノというモノをタイから輸入している。なので農産物以外はすこぶる高い。自国内には工場など殆ど無く、唯一売れるものといえば、水力発電で得た電力ぐらいだ。

なのでラオスは「東南アジアのバッテリー」とも呼ばれているらしい。せめてブレーカーとかにしてあげて欲しい。


深々とした山林の中をグネグネボコボコと走る。
寝れたもんじゃない。バスはまあまあのシロモノだが、メイド・イン・チャイナの中古である。

宇宙飛行士の初級コースみたいなGを身体に受けながら、12時間もの夜行バスの旅。
これぞ東南アジアだ。

 

 

 

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朝5時、ルアンパバーンにやっと辿り着いた。
薄暗い朝のしんしんとした空気の中、乗合バスでホテルに向かう。
ルアンパバーンは町が世界遺産として登録されているラオスの古都である。
町は古い寺だらけで、というか寺しか無い。


ここの名物といえば早朝の托鉢である。オレンジ色の僧衣を纏ったたくさんの僧侶が、大行列を成して托鉢に向かう。
そんな風景を尻目に宿に辿り着いてすぐにベッドに倒れ込む。
それはまた後日。

 

 

 

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世界遺産といってもそこはラオス。
とくにびっくりするものがあるかというとそうでもないと言ったら失礼になるかもしれないがそうなのである。
寺もタイの寺院とそこまで変化はなく、巨大な大仏があるわけでもなく、近郊にきれいな滝とか洞窟があるくらいだ。

 

正直・・・どうでも良い。

 

もう世界中で嫌というほど寺院などを堪能してきたので、もはや我らが求めるのは「安息」の二文字である。
異国の地でそこの雰囲気にタプタプに浸りながら過ごす。
これぞ旅の真髄だ!ということにして、暑い日中は読書と妄想に耽り、夕方からナイトマーケットに繰り出す、という修行僧と真逆を行く生活。

 

これぞラオスの過ごし方なのだ。
なんせラオスに群がる欧米バックパッカーたちはこれに「お麻薬」が加えられる。
そう、何もないのんびりラオスタイムとお麻薬の組み合わせは、ビールと枝豆、スイカと塩、キン肉マンとテリーマン、翼くんと岬くん、マナとカナくらいナイスなマッチングなのだ。

 

ラオスは知る人ぞ知るゴールデン・トライアングルの一角であり、お麻薬の一大生産地。今は政府も厳し目らしいが、夜中にハッピーな顔でゆらゆら揺れている白人の若い兄ちゃん姉ちゃんたちを見るとそうでもないようだ。


僕らはもちろんお麻薬には興味が無い。
酒だ!酒持ってこい!冷えたビール持ってこい!となるのだ。こう見るとやはり酒もタバコもお麻薬も大差なく思える。

※覚醒剤はダメ絶対

 

 

 

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ラオスにビールなんてあるのか?
あるんです!というかビールしかない。
ラオスに唯一ある企業とまでいわれるのが「ビアラオ」である。
ビアラオは瓶一本100円ちょいという超低価格ながら、その味は世界から押し寄せる旅行者を唸らせる。
ということでもちろん僕らも唸った。

 

 

 

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・・・メコン川のほとりで。
こんな贅沢はあるのだろうか?
大河メコンのほとりで飲むビール。静かなラオスの川べりでメコンを眺めながら冷えたビールを飲む。
ちょっとこの感覚は森見登美彦くらいじゃないと文章には出来ない。

 

 

 

 

 

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ナイトマーケットは町のメインストリートを歩行者天国にして行われる。
メインストリートといっても、せいぜい500mくらいか。
ラオスにはたくさんの山岳民族がおり、こちらのマーケットではそんな山の民がせっせとこしらえた布やバックなどが並んでいるらしい。他の所でも同じようなものをたんと見るので詳しいことは分からないが、とりあえず『ハンドクラフト』と書かれたポスターが貼ってある。
でも一番多いのは土産用のTシャツ屋である。

 

 

 

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ラオスの食といえばこの食べ放題。
200円くらいでこの中から好きなモノを好きな分だけ食べても良い。と思ったら肉類は別料金。
なので田舎のばあちゃんが作りそうなベジタリアン料理を摘んでいく。
ラオス料理は薄い中華料理という感じで、日本人には調度良い味加減だ。
ほとんどが冷えて萎びてテカテカしているが、味はともかく物量で勝負というところはさすが農業大国。


ラオスは貧乏な若者のバックパッカーが多いので、この物量作戦はありがたいところだ。かくいう僕もその構成員の下っ端なので、ガツガツとよくわからない料理をかきこんだ。

 

 

 

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これだけではあんまりなので、ちょっとした小高い山にある寺院に重い腰を上げて行ってみる。
ラオスの魅力を伝えなければ!となぜか使命感を感じてしまう辺りがこれまたラオスらしい。
急な階段をなんやかんやで登っていく。中国人団体観光客の太ったおばさんによる長征が行われているのを尻目にひたすら登る。


山の中に突如現れる金ピカ寺院はさすが上座部仏教の流れを感じる。上座部仏教寺院は、何の前触れもなく突如としてキンキラキンでお出迎えというのがポリシーのようだ。だから僕はそんな岡本太郎っぽい上座部仏教寺院が好きだ。

 

 

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キンキラキンのお山の上では、なぜか若いお坊さんがうんこ座りしてスマホをいじったりしている。
日本のコンビニ前とほぼ同じスタンスだが、こちらの方はなぜかありがたい気がしてならない。

 

 

 

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山の頂上からはルアンパバーンの景色を一望できる。
それにしてもドレッドノート級の緑の濃さである。

 

 

 

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ちょうど夕日が沈む頃合いなのだが、美しい景色とは裏腹に狭い頂上は大混雑。
柵を乗り越えて夕日と写真を撮るのがここだけの一大ブームとなっている。
どれだけ人が待っていようが、満面の決めポーズで長い間そこを占領するのはやはり白人の姉ちゃんと世界のオバちゃんである。

 

 

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白人の姉ちゃんという生き物は、おそらくこの世のすべてが自分のためにあるとうっすら確信しているに違いない。それくらい傍若無人であり天真爛漫であり唯我独尊なのだ。
そしてそれを超えるのは世界共通オバちゃんだ。
オバちゃんという生き物は、おそらくこの世のすべてが自分のためにあると天啓を受けたに違いない。それくらい、というかもはやである。

オバちゃんはどこの国でも最強なのだ。

 

 

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僕らはあんなオンステージに立つ勇気などさらさら無いので、ちゃっちゃと夕日を眺めて下ることに。
そんな時、チャラい日本の若者が上がってくるなり「なんだよ~あのバアさんたち。早く消えろよ。死ねや!」と大声で叫んだ。どうやらタイ人のオバちゃんが占領しているオンステージで写真を撮りたいらしい。

 

日本人は、日本語という難解かつマイナーな言語なぞ、ガイコクジンは誰も理解できないだろうという固定概念がある。逆にガイコクジンの中に一人でも日本人がいると急に無口になったりする。

 

でも若者よ・・・君は気づいていない。

君のすぐ後ろにいるのは日本人の団体さんだということを・・・

 

 

 

 

 

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まあルアンパバーンはこんなところだ。
ラオスは気が抜ける。インドやボリビアのようにバリバリに気合いを入れて歩かなくても良いので、道の真ん中でボーっとしてしまう。そこがラオスの良い所であり、またラオスの魅力でもある。


暇すぎて宿のテレビで「トムとジェリー」をずーっと見ていたり、Youtubeで昭和プロレス名勝負を延々と視聴したり、いつもより入念に耳掃除とかしてしまう。

 

ふと気づいた時、「ああ、ラオスしてるな」。

そう思うのである。