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【やさしいインド鉄道入門】28時間寝台列車インド亜大陸打通作戦(チェンナイ~コルカタ)

8月27日

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我ら人生遊撃旅団(兵員2名)は広大なるインド亜大陸を突破するため、チェンナイからコルカタへ一気に鉄道にて進撃する。
その距離1600km28時間の道のり。
牟田口廉也先生もびっくりな補給線無視のグデーリアン先生も反吐吐きそうな電撃戦。なんせインドは広いのだ。
しかし我らには大和魂ならぬ貧乏根性がある。旅は精神論なのだ。

 

 

インド鉄道

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この1600kmをどうするかというともちろん鉄道だ。
インドといえば鉄道。イギリス統治時代から続く歴史ある鉄道大国でもあるインド。鉄道の歴史は日本よりも早い。

1日1800万人の乗客と200万トンの貨物を捌く神算鬼謀の働きを支えるのは、世界最大の会社の名に恥じぬ160万人もの社員である。その果てしなき線路の長さは総延長63327km(日本の旧国鉄は19000km)にも及ぶ。
インドの広すぎる国土には気が遠くなる距離の線路が引かれている。鉄道はインドの血管なのだ。

 

 

チケット購入

鉄道に乗るにはまずチケットを入手しなければならない。
入手方法は3つ。

 

①自分で買いに行く
駅に直接買いに行くのだが、これはかなりハードである。インド人は中国人よりも並ぶということを知らない。戦争のようなチケット売り場を一度体験したものは、日本のバーゲンセールなんか夜中のコンビニくらいに感じるという。
しかし、さすがはインド様。主要駅には外国人用のチケット売り場がある。そこは競争率も低く、エアコンガンガンの天国のような所。チェンナイ・セントラル駅にも外国人用チケット売り場はある。

 

②ネットで予約する
インドの鉄道は、意外にもオンラインで細かく、そして大胆に管理されている。
昔はインド国内の銀行カードなどでしか予約できなかったらしいが、今はVISAとかも使えるという。けれどもページはよくダウンするらしい。

 

③観光代理店で予約してもらう
無数にある観光代理店でチケットを頼む。これが一番簡単な方法だ。観光代理店用のチケット枠があるらしく、マンツーマンなのでこちらがほしい席やよくわからないことも教えてくれる・・・ところも多分存在するのだろう。
実際は相場を知らない外国人から豪快に札束をひったくる悪徳業者が多い。

 


実際に買ってみた

①は移動が面倒だし、②はもうオンラインビザ申請で懲りていたので、③にすることに。
南インドはWIFIがほとんど存在しないので、事前に相場チェックが出来なかった。まあモノは試しととりあえず聞きに行ってみた。

 

A店
「らっしゃい」
「あのコルカタ行きたいんですけど」
「・・・23時の便がありますな」
「ということは到着は深夜か。他にないですか?」
「ありまへんなあ」
「いくらします?」

 

ここでインド鉄道の席について
インド鉄道は席のバリエーションがたくさんある。
一番高いのはエアコン車の個室、次から2段ベッド、3段ベッドと続く。
安いのは非エアコン車で予約寝台(SLEEPER)、椅子だけ自由席などなど。
便によって席の種類が変わってくるが、だいたいこのように分かれている。

 

「AC(エアコン)の個室だけ開いてますわ。これはええでっせ。ファーストクラスですわ」
「お高いんでしょう?」
「3000ルピーですわ(5000円くらい)」
「むむむ、高いなあ。他の安い席は?」
「完売ですわ」
怪しい。なぜ安い席がひとつも残っとらんのだ。これは完全に高い席だけ買わせる気だな。
「深夜に着くのは怖いなあ。ちょっと考えてきます」
そういって退室。


B店
「らっしゃい」
コルカタ行きたいんですけど」
「今日なら23時の夜行があるね。到着は4時だね」
「暗いうちに着いちゃうの怖いんで嫌なんです」
「じゃあ明日の朝8時半に出るやつだね。これなら次の日の昼に着くよ」
「おいくらですか?」
「エアコン席で4000ルピーだね」
「は?」
完全にボッタクっている。というか相場がわからない。
愛想笑いしながら逃げ出すように店を出る。

 

そのままネットカフェへ。
インド鉄道公式ホームページ
このサイトで相場をチェック。一番高い席のAC2段ベッドが2500ルピー、AC3段ベッドが1700ルピー、SLEEPERが600ルピー。
手数料で~100ルピーほど取るとは聞いたけども、危うく思いっきりふんだくられるところだった。

 

 

外国人用チケット売り場

もう誰も信じられない碇シンジくん状態なので、自分で買いに行くことに。
チェンナイ・セントラル駅に向かい、2階にある外国人用チケット売り場へ。
久しぶりのエアコンの心地よい風の中で待っていると、インド人にしては上手な英語を操るおじさんが現れた。
「Youたち日本人?コンニチワ~だね。じゃあパスポート見せてねえ」
チケット購入にはパスポートが必要だ。
コルカタ行きねえ。明日の朝8時半の便があるね」
「あのAC席の一番安いのが良いんですが・・・」
「もう埋まってるね。YOUたち、SLEEPERにしちゃいなよ」
・・・しまった。ちんたらしていたせいで本当にAC席埋まってしまったみたい。
SLEEPERとは予約寝台席。天井にファンが付いている簡易ベッド席だ。
「ACないと嫌なのかい?」
違う。エアコンなど30°越さないとつけさしてもらえない家に生まれた僕からしたら、大した問題ではない。
怖いのだ。治安が心配なのだ。一応予約席だが、変な輩がいる確率はAC席よりもグッとあがる。
昔よりはマシになったらしいが、インドの列車は決して安全なところではない。よく物を盗まれたとか、強盗にあったとか聞く。
しかし仕方がない。これでもう1日何もないチェンナイで過ごすのは嫌だ。
ということでSLEEPER席を購入。ああ、不安だ。

 


いざ乗車

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※写真はSLEEPER席

明朝、早めに駅に向かう。
インドの駅はものすごく広くてものすごく変な人達がいっぱいいる、まさにインドらしいカオスな空間だ。駅に着いてみると、普通に駅構内で人が寝ている。床に寝ている。気持ちよさそうに寝ている。
たくさんの寝ている人たちの隙間に道がある。モーゼもちょっと引くに違いない。ちなみにインドでは空港や鉄道駅内の写真撮影は禁止である。なぜならインドは準戦時体制国なのだ。パキスタンや中国とは犬猿の仲である。床で寝ている人たちを見ると、全くそんな印象を感じないけど。


念には念をで早く来たけど、早く来すぎたようだ。電光掲示板には直近の便しか表示されない。もちろんチケットにはどのホームの列車に乗るとか書いてないので、掲示板に出るまで待たなければならない。
そんな時にはACルーム。1時間わずか30ルピーでエアコンガンガンの部屋でゆったりできる。

ACルームで待っていると、やっと僕達の便が掲示板に出た。
9番ホームまで向かう。インドの列車はものすごく長い。何両あるのか数えるのが面倒なくらい長い。
ホームは貨物車に荷物を載せる人たちが大げんかしながらワイワイやっている。荷物といっても野菜から調味料から何かの機械からゴッチャゴチャだ。それをバンバン放り投げていく。

 

やっと自分の列車を見つけて中に入る。
もちろんすでに汚い。
年代モノの車内はサビやらカビやらで暗いグラデーションがかかっている。そこに蠢く人、人、人。

 

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なんとか自分の席を見つける。
普段は椅子になっているが、夜になると背もたれを倒して3段ベッドにする。
イスラム教徒の家族と同じ席だ。すぐにキレる親父さんと完全にボケているおばあちゃんと無口な娘さんの家族。

おばあちゃんがしょっちゅうどっかに行っては行方不明になったり、席がわからなくて素通りしてしまい、その度に親父さんが「何しとんじゃワレー!!!」的なことで怒鳴り上げるというのを繰り返す楽しいご家族。

 


インドの車窓から

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インドの雄大な自然を楽しみながら、静かな空気の中で、悠久の歴史を感じる。
そんな旅がしたいあなた、SLEEPER席は全くオススメしません。
窓は鉄柵付きで開けっ放し。排ガスと塵と埃が舞い込み、おばあちゃんが30分に一回見事な痰を吐き飛ばす。

車内は物売りがひっきりなしに往復し、その間を物乞いが這っている。大晦日のアメ横みたいな状態だ。とても歴史など感じることができない。
「チャイ~チャイ~チャイ~」とチャイ売りが通ったと思えば、「カフィカフィカフィ~」とコーヒー売りが走りぬけ、弁当持ったおっさんやお菓子を持ったおばちゃん、ジュースが入ったバケツをガラガラ鳴らして歩く兄ちゃんに発光する謎の玩具を振り回すガキ。
食べ物や飲み物には困ることはない。他にも玩具、制汗スプレー、鍵、チェーン、接着剤なんかも売っている。そこに需要はあるのか?
そのチンドン屋の行列は夜の9時過ぎまで続く。

 


物乞い

やっと喧騒に慣れ(慣れとは怖いものである)寝ていると、トントンと肩を叩かれる。
「なんじゃい」と眼を開けるとそこには、垢とホコリまみれの汚い子供、片足の爺さん、子供に乳を飲ませている母親、見たことのない奇形の人・・・
その差し出された汚れた手を見ると、同情を禁じ得ない。
僕は同情するのもされるのも嫌いだ。ニーチェを読むまでもなく嫌いなのだ。
しかし、ここインドの貧しさ、哀れさは圧倒的だ。
インドの貧しさと哀れさは想像を絶する。そこにはカーストの問題もあるが、日本という豊かな国に生まれたのならおそらく一生出会うことのない人たちだ。


もはやボロ雑巾のようなランニングを着た垢まみれの子供。髪はべとべとでところどころ束になって固まっている。体は切り傷や吹き出物だらけ。真っ黒な顔を見ると、青白い眼だけがギョロッと僕を睨んでいる。
僕はすぐいたたまれなくなる。豊かな国に生まれ仕事もせずに遊んでいる僕の前にいるこの子は、このあとどんな人生を歩むのだろう。

 

そんな子供が僕の前に手を出したまま動かない。小銭をジャラジャラ鳴らしながら、ずっとこちらを睨んでいる。インドではバクシーシ(布施のようなもの)を行うことは良いこととされている。

なので、この物乞いたちは「俺達のおかげでお前らは徳をつめるのだ」という感覚らしい。だからインドの物乞いたちはものすごく横柄な態度である。


彼らは金をもらうか、ずーっと無視されるか、殴られるまで手を引っ込めない。
僕はこういう時はただ無視する。いちいち払っていたらそれこそきりが無い。でもその間、ずっといたたまれない気分になる。

お金をあげるときもある。お金をもらうと軽く会釈をしてすぐ隣りの人に移っていく。
「やっといってくれた」と緊張がほぐれる。でも、お金をあげる時とあげない時の違いは何なのだろうと考える。何回かお金をあげたが、それは子どもや子連れの母親が来たときだった。
ヨボヨボのじいちゃんや盲目の兄ちゃんが来た時はあげないで、なぜ子供にはあげるのか。
足にすがり泣きながら無心するばあちゃんには?
横柄な態度で手だけグッと差し出す兄弟には?
地面を這ってくる背骨がグニャグニャなおじさんには?
インドではそんな「問い」が日常の中に混ざり合っている。

 


治安

もはや当たり前のことだが、荷物はチェーンで鉄柵や柱に結びつける。さらにサブバックは体に巻き付け、チャックは南京錠で閉じ、抱きながら眠る。これだけやっても少し不安なくらいが調度良い。
とにかく人の出入りが激しく、駅に停車した時は外部の物売りなんかが押し寄せてくるので、荷物は大変危険だ。インド人も座席の下に隠したり、席を立つ時は周りの人に荷物を見ておくように頼んでいく。
泥棒対策はチェーンなどでしっかり固定することと、周りの人たちと仲良くなっておくことだ。これに限る。

 

 

トイレ

うわさ話ですらモザイクとピー音を入れたいインドのトイレ。
とくに列車のトイレはそりゃもうすごいと聞く。どれだけすごいかというと・・・やめておこう。
僕らは世界一トイレのきれいな国からやってきた(TOTOさんありがとう)
日本の公園の公衆便所ですら、海外から見ると美しい部類に入る。なんせ公衆便所すらない国が多い。犯罪の温床になるんだとか。


そんなことでインドの列車トイレだけは絶対に使いたくなかった。ああいうモノは一度見てしまうと一生レベルのトラウマになる。
しかし、いくら水分補給を節制しようが小さい方を28時間も我慢できたらゴルゴ13にでもなれてしまうだろう。
夜9時、ついにダム決壊危険水域まで達し生理現象に屈した我が膀胱は悲鳴を上げた。
恐る恐るトイレに向かう。ああ、神よ。もしトイレがおぞましくやばかったら、列車のドア開けて走行中に外に放出しますけど許してください。


禁断のドアが開く。ん?きれい?
いや、日本人的にはかなり汚いが運良く掃除直後だったらしい。トイレはいわゆるアラブ式。足を置くところの間に穴があり、処理は蛇口から水を注いだカップでチョイチョイとやる。なのでだいたいアラブ式トイレは水浸しである。
とにかくトラウマと悪夢にうなされることはなかった。

 

 

就寝

夜の10時も回ればだんだんうるさい乗客も寝始める。
時折忘れていたかのように訪れる激しい揺れと、開きっ放しの窓から(雨戸はある)鳴り響く轟音を夢の中に引き込めれば眠ることができる。
コルカタは終電なので気にしないでも良いが、途中で降りる時が非常に困る。駅到着のアナウンスもないし、目立った看板なども見当たらないので、今どこの駅にいるのかわからない時が多々ある。
到着予定時刻前に起きておくのはもちろん、周りの人たちに自分が降りる駅のアピールをしまくっておくと教えてくれる。普通のインド人はとっても優しい。

 

 

到着

もううんざりしたのを3回繰り返したくらいで、コルカタに到着。
顔は疲労とススのせいで亡者のようだ。
またしてもひろ~いホームを歩き、やっと駅の外へ。

そこにハゲタカのように押し寄せるのはタクシーの運ちゃんたち。
「コンニチワ~トモダチ~ヘイ、タクシー?サダルストリート?カモンカモン」
疲労困憊の中、押し寄せるオヤジ達のウザさといったらない。
「サダルストリートまでいくらよ」
「600ルピーだよ!」
この瞬間の殺意は「クリリンのことかー!!!」をちょこっと超える。
貴様等はサラ金か?ウシジマくんか?なんじゃいそのボッタクリかたわ!!!!
と毎度のごとく腹はたつけど元気はない。
「ハイハイ、そんなに高いわけ無いじゃん。さようなら~」
「ちょっと待ってトモダチ!じゃあ550ルピーだよ。トモダチプライス!!」
(実際の相場は100ルピーしないらしい)

・・・こうしてインドでは輪廻の如く同じことを延々と繰り返していく。

 

 

以上、インド鉄道について。

インド鉄道は奥が深く、そして浅はかでもある。

そんなインドの本当の姿を感じたいのなら、ぜひ鉄道へ。そしてできれば一番安い自由席に乗ってもらいたい。そこにこそインドがあるはずだ。

 

僕は遠慮するけど。