巡礼1日目 St-Jean-Pied-de-Port~Roncesvalles 26km
5月22日
巡礼1日目 St-Jean-Pied-de-Port~Roncesvalles 26km 9時間
初日いきなり「巡礼中最難関」と呼ばれる魔のピレネー山脈超え。
毎年行方不明者が出るといわれる難所で、映画「星の旅人たち」の主人公の息子が亡くなった場所である(ちなみに息子役はお父さん役マーティン・シーンの実の息子エミリオでこの映画の監督、ちなみに弟はチャーリー・シーン)
神はなぜいきなりそんな無体なことをなさるのか?おそらく、ここで心弱きものをふるいにかけてしまうのだろう。
かの皇帝ナポレオンも進んだ峠道が初日の僕らを待ち受けていた。
朝6時、嫁に起こされる。
「ねえ!ほとんど人いないよ!」
朝飯は6時半と聞いていた。それに同じ部屋は陽気な白人のおじちゃんおばちゃん達ばかり。というか巡礼参加者の平均年齢は60近い。(僕らは最年少っぽい。)
今までのドミトリーで出会った白人は皆昼間にやっと起きだすような人たちばかりだったので、いくら山越えといえども7時位に楽しそうにブレイクファーストかと思っていた。
のび太のように急いで朝食をかきこみ、6時半出発。
慌ただしいスタートをなったが、いざ780km先のサンティアゴ・デ・コンポステーラへ。
サンジャンピエドポーの歴史ある通りを行く。
時計台を越え
この道を左に行けば、ナポレオンを同じ道
白人のお年を召した方はむちゃくちゃ速い。いくら荷物が軽かろうが、年の差のハンデを考えれば僕らのほうが優位なはずだ。白人は特に登りに強い。我々と違うエンジンを積んでいるかのようだ。
今日の延々と続く登り道で、結局50人以上に抜かれた。みんな僕の両親と変わらない、もしくはもっと上、さらに何人かは仙人のようなおじいちゃんにまで・・・
きついとはいえ、この巡礼路の景色は素晴らしい。
ヨーロッパの美しい田舎の原風景がすぐそこにある。
これがこの後ずっとお世話になる道標
九十九折で辟易。世界一周用の装備を積んだ荷物は15キロを超えている。これでもけっこう減らしたんだけど・・・
Orissonのアルベルゲに救急車。やはりこの登りはきつい。縁起でもないが乗せてほしいなんて思ってしまうのはまだまだアマちゃんだということか。でも「あまちゃん」はかかさず見ていた。
峠道に差し掛かる。
ここからが本当の神の試練。
美しい景色見とれていると、突如猛烈な大風が峠の稜線を舐めるように吹き荒れる。
目も開けられない。パイネ国立公園で世界最強の風を感じたつもりであったが、この風はそれに匹敵するくらいの威力だった。
1430mまでの登道を台風以上の風で叩きのめされる。さらに小雨と小石がマシンガンのように撃ちこまれてくる。
峠道は山の稜線沿いにあるため、遮蔽物は一切ない。人が進めないほどの風で、転びそうになる人多数。岩の窪みをやっと見つけて皆でペンギンのようにただただ震える。
この道を冬の時期の登る人もいるという。遭難の危険があるので、素人は暖かくなるまで待つほうが懸命だ。
まさに神に祈るしかできない・・・
なんとか本日最高峰1430m。地図を見たところ、あとは下るだけかとおもいきや世の中そんなに甘くない。ミシュランの大雑把過ぎる等高線図に、この後何度も温泉卵みたいな心を握りつぶされることに。
水飲み場。癒される。
ここからスペインに。純粋に歩きのみの国境越えも初めてだが、国境に誰も居ないのも初めて。さすがEU。
ここから雨が強くなってくる。さらに上りと下りが繰り返される反吐道になる。ここいらで見せかけの体力は限界値を超え、精神力の勝負になってくる。
まだまだ先は見えない。
嫁が半泣きだ!!!
15時30分、ついについにRoncesvalles到着。
コースタイム8時間のところ、9時間もかかってしまった。
ここRoncesvallesは山奥にあるにも関わらず、立派な教会がある。
そしてここの人口は30人。教会とアルベルゲなどの施設の従業員しか住んでいない。ここは巡礼のためにあるような場所だ。
アルベルゲは100人収容という巨大施設。
まだ新しく、ずらーっと2段ベッド×2の4人部屋が並ぶ。
キッチンも電子コンロなどなんでも揃っている。
自動販売機でジュースから冷凍食品まで買えるが、お値段は神様価格。
半死半生のままパスタを作って晩御飯。
かなりのエネルギー消耗で、パスタ一袋を2人で食べきってもまだ腹が減る。
湯加減最高のシャワーを浴び、なんとか意識がスッキリしてきたのでミサへ。
立派な教会でミサ。
全編スペイン語でいまいちルールもわからず、ただ周りに合わせるだけだが、この極限疲労の状態で美しい装飾品に囲まれた巨大な教会にたたずめば神様が見えそうだった。
8時頃には皆就寝しだす。疲労の為、首が折られたように眠る。難所ピレネー山脈超えは本当にハードだった。