シーフード天国「チロエ島」

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バスは急に止まった。

すでに日常となりつつあるバスでの目覚め。

チリに入ってから道がだいぶ良いので、あまりリクライニングができない安席でもぐっすりと眠ることができる。

寝ぼけ眼をこすると、目の前に海があった。

バスは徐ろに巨大な船に突っ込んでいく。

海を渡るのだ。

 

 

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ボリビアでも湖を渡るためにバスを船に載せたが、今度は客を載せたままのバスを船にあげるのだ。それも何台もある。巨大な船にバスや貨物をしこたま乗せて、チロエ島カストロへ向かう。

甲板に出るとものすごく寒かった。

サンティアゴの真夏の気温に慣れた身体が悲鳴を上げる。

パタゴニアに近づいてきたようだ。

 

 

 

 

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バスは30分船に揺られ、チロエ島を走り行く。

カストロには昼間についた。

バスターミナル目の前に真っ黄色の教会があった。

チロエ島世界遺産である教会群の一つではあるが、ド派手な色はその粗末な作りを隠しているかのようにも見えた。

狙っていた宿は意外に高く、逃げ出すように飛び出たところをおばちゃんが勧誘。

バスターミナルからすぐの海側へ降る道にある景色の良い宿「EL MIRADOR」へ。

一人12500ペソ。2500円くらい。しかしチリはヨーロッパ並だ。

少し高いが部屋は綺麗で立地もよく、キッチンがすこぶる良かった。電子レンジまであるのだ。なぜなら世界遺産の教会群などどうでも良い。チロエ島はシーフード天国なのだから。

サンティアゴのシモン達曰く「そんなにシーフードが食べたいならチロエ島に行けばいいよ。シーフードがとっても安いし美味しいからね。」

日本人の悲しい性。魚が恋しいのだ。肉と芋ばかりの南米の旅路。普段なかなか食べられないお肉を存分に食いはしたが、所詮我々は日本人。魚への悲恋はかのシェークスピアでもわかるまい。

 

 

 

宿を出てすぐ目指すは市場。

地球の歩き方 アルゼンチン・チリ1415年版」を見ながら市場への道を行く。

この旅唯一の地球の歩き方持ち込みだ。2000円もするが、その分しっかり働いてもらおう。

が、市場が見つからない。なぜだ?2000円もした「地球の歩き方」が、新書が3冊は買える「地球の歩き方」が間違うはずがない!

行き交う人に聞くもここにはないという。当たり前だ。明らかな住宅地。

優しそうなおじさんに聞くとスーパーマーケットに連れて行ってくれた。かなり大規模なスーパーマーケットだったが、肝心の魚は売っていないではないか。

思案の末、アルマス広場まで戻りインフォメーションで地図をもらった。

 

 

ぜんぜん違う!

くりぃむしちゅーの上田なら加藤あい阿藤快ぐらい違うよ!」とキレるくらい違う。

本当の市場はGalvarino Riveros通りを地球の歩き方よりさらに西に登っていく。病院よりまだ坂を登ったところだ。Mercado Feria Yumbelといえば教えてくれる。

 

日本の旅行者は2つの災難を抱えている。

まずはバカンス休暇がないこと。このせいでめちゃくちゃな航空券を買わされ連休に短期弾丸での旅をするか、我々のように仕事を辞めての旅になってしまう。

そしてもう一つはガイドブックが「地球の歩き方」、別名「地球の迷い方」しかないということだ。

ロンリープラネットが読めるくらいの英語力があれば苦もないが、僕のような純正日本人は「地球の迷い方」しか情報源が無い時が多々ある。それも2000円だ。

めぼしい観光地の解説はわかりやすいが、迷宮へ誘う簡略という名の悪夢な地図、そして若者には考えられない値段のホテルやレストランしか紹介してくれない。以前は情報ノートのような作りだったらしいが、今や高額な広告集でも買わされている感じだ。

なので自然と自分で調べるしか無い。だから日本人の旅ブログが、結局は節約自慢化してしまうのは無理もない事なのだ。

 

 

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しかし今回のような、犬のお巡りさんにでもわかるようなことが間違っていようとは夢にも思わず、腹を空かせたまま1時間以上ほっつき歩いた。

やはり、まずはインフォメーションで地図をもらう。これにかぎる。

語学も知識も無いのだから、餅は餅屋。現地の情報だ。

2000円もした地球の歩き方のおかげで、空腹の絶頂に達した僕らは何とか本当の市場に辿り着いた。

 

 

 

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「さかなさかなさかな~♪魚~を食べ~ると~♪」

と幻聴がしてきた矢先の発見だったので、シュリーマンの気持ちがこの時よくわかってたまらなかった。

市場は小さいが、中はシーフードフェスティバルinカストロだった。

 

 

 

 

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サーモンやムール貝、ウニ、タコ、カニ・・・海の幸が溢れたる市場。

「嫁よ!如何とする?」

「イカ?」

「今宵の飯は・・・」

そこに見えたるは朱色の化け物。

しかと刮目したるに、そこには仰ぎ見るようなサーモンの半身があった。

「ざ・・・座布団が如し。」

古今東西、これほどの大物を目にしたこと未だなし。

「して、この化け物のようなサーモンはいくらじゃ?」

4000ペソ」

 

「え!?これ一匹で?」

 

この巨大なサーモンの半身が800円である。

さらにムール貝1キロ200円も買い、意気揚々と宿に帰る。

 

 

 

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嫁さんが意気込んで料理をするも、さすがは巨大なサーモンである。

えらく時間がかかって刺し身、チーズ焼き、マヨネーズ和え、鮭おにぎりに姿を変えた。

2日分はある。ムール貝のスープにワインも添えて、今日は豪華絢爛サーモンフルコースとなった。

でかいくせに味は濃厚で、おそらく一年分のサーモンを一夜にして食らったかのように思える。考えたらサーモンなんてたまに行く回転すしで食べるくらいだ。

これだけの料理で1600円くらいだから、郷里の母親に教えてやりたいくらいだ。

 

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・・・明日はちゃんとチロエ島観光をしよう。

  

 

 

 

 

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久しぶりの満腹のせいか、気づけば寝ていた。

こういう時はおかしな夢をよく見るので目覚めも良い。

しかも宿の朝食がかなり豪華&食べ放題で、急に冬眠することになった転勤族のリスのようにひたすら食ってばかりだった。

 

 

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今日はチロエ島散策。

カストロチロエ島最大の町で、チロエ島名物の家々が多くある。

まずはうろこの家だ。

神戸の異人館にある、あのうろこと同じだ。

町中いたるところにうろこのような板に覆われた家が多く見られる。

 

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たいていこじんまりとしており、庭も綺麗なのでメルヘンチックに仕上がっている。散歩だけでもかなり楽しい。

 

 

 

 

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もう一つがこれだ。

湾内にある東南アジアにあるような足があるノッポな家だ。

この可愛らしい家が数カ所にわたって密集しており、カストロの町を彩っている。

 

 

 

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おもちゃのような可愛い家が多い。

見てる分は良いが、住み心地ってどうなんだろう?

 

 

チロエ島はシーフードを喰らいに来たのだが、何でも近くの国立公園でキャンプができるらしいのだ。インフォメーションで知ったのだが、距離も近いし、トレッキングコースもあるらしいので久方の運動不足を解消しパタゴニアに意気揚々と向かうために行ってみることにした。

 

 

しかし難点が一つ。

宿の人曰く「街全体がダメなの!」という本当か嘘かわからない現象でWIFIが使えなかった。インフォメーションも英語があまり通じないので、雲をつかむような状態での国立公園行きになったのだ。

まあ、せっかくだし行ってみよう。