中古のライカM3の選び方と少しでも安く買うにはどうすればよいか
ということで、前回記事でも書いたとおり清水寺からムーンサルトプレスする覚悟でライカM3を購入する決意を固めた・・・んですけど、伝統あるM3はそれ自体にさらに複雑怪奇な悲喜こもごもが隠されていました。
今回はM3の選び方とその理由、購入した店、安く買うにはどうすればよいかなどなどすべて書き連ねてみます。
行けライカ!悩ましき記憶と共に・・・
そもそもライカM3とは
ライカとは世界で最も長い歴史とブランド力を誇り、そしてコスパとか気にしない人向けのドイツのカメラメーカーである。
昔は顕微鏡がメインであったが、といっても日本でいう幕末くらいからある会社。
オスカー・バルナックという天才が和名「バルナックライカ」を完成させたのが第一次世界大戦前、その量産が開始されたのが1925年であるからライカA型を買ったあとに「戦艦ポチョムキン」を映画館で観てその帰りに「我が闘争」を立ち読みした通もいたに違いない。
その後カメラ、レンズともに世界でもトップレベルのメーカーとして君臨したライカが、1954年即ちジョン・トラボルタがニュージャージー州イングルウッドで生まれた年にライカM3が発表される。
フォトキナという写真見本市で突如ベールを脱いだライカM3は、その圧倒的な技術力により他のカメラメーカーを大きく引き抜き、そしてそのあと大変なことになっちゃうのだがそれは後述する。
要するにライカとは歴史あるカメラメーカーであり、カメラ作りよりもブランドストーリーとマニアックな小ネタを作るのがうまいドイツの中小企業である。
M型ライカとは
M3はM型ライカシリーズの元祖である。
M型ライカはMマウントを持つレンジファインダーカメラ。
マウントとはカメラとレンズの接合機構のことでこれが合わないとレンズが付けられない。NIKONはF、CANONはEF、京セラはAFのように各社色々ある。詳しいことは中古カメラ屋でジャンクコーナーを漁っている親父に聞いてみると良い。
レンジファインダーカメラというのは、簡単に言うとレンズとファインダーが分かれているカメラ。ファインダー(覗く所)と距離計が連動していて、ピントが合わせやすかったり、被写体を心行くまま見つめることができる。
反対に現在主流の一眼レフカメラは、ミラーを駆使してレンズから見える景色をファインダーで覗けるようになっている。こちらはレンズに合わせた構図が取りやすいが、ミラーを組み込むためカメラサイズが大きくなったり、ブレやすかったり、シャッターボタンを押してから少しラグがある・・・が現在はほぼ問題ないレベル。
M3が出た時代はレンジファインダーカメラが人気で、NIKONやCANONも作っていた。
しかしM3の圧倒的な性能を前に、日本メーカーはレンジファインダーカメラでは勝てないというか採算が合わないことを悟り、一眼レフカメラに全力を注ぐことになり、ひいてはライカ倒産への道の出発点ともなる。
この辺のストーリーテラーぶりがたまらんね。80cm列車砲グスタフや超重戦車マウスの系譜を見事に引き継いでいる。
余談だが、日独のWW2兵器と戦後カメラの思想が変わってない気がする。
M3の買い方
そんなM3だが65年も前のカメラであるからして、もちろん中古での購入となる。
ここで気をつけるポイントは2つあるので、順に紹介してみよう。
①安物買いの銭失い
神戸の中古カメラ屋の主人やネットや本でもとにかく口を酸っぱくして言っているのは、「ちゃんとした店のちゃんとした店でオーバーホールされたちゃんとしたM3を買え」ということだ。
オーバーホールとは専門家が一度分解して隅々までチェックすること。
当たり前だけど機械式カメラは構造が複雑なので素人はできるだけ分解しないほうが良いぞ!
M3は採算度外視の史上最高のファインダーであるからこそ、めちゃくちゃ複雑でその修理はかなりの技術と費用が必要となっている。
「ちゃんとした店」とは、ライカの扱いに長けた店。
間違っても買取したのをそのまま並べるような店ではない。でもちゃんとした店って素人にはわからない。
複雑な機械式カメラなので実際使ってみないと不具合がわかりにくいので、ちゃんと保証がある店がベター。
ヤフオクやメルカリだと安く買えるが、もちろん保証はない。
「ちゃんとした店でオーバーホールされたちゃんとしたM3」とは、複雑な機械式カメラの修理やメンテナンスに強い店でオーバーホールされたM3ということだ。
機械式カメラはデジタルカメラと違って細かなメンテナンスが必要。グリス塗ったりとかね。もちろんデジタルカメラと違いメンテナンスしやすいからこそ何十年も使い続けることができる。
デジタルカメラはメーカーが電池や修理サービスを辞めてしまったら最後、不動品になってしまう。
ちなみにちゃんとしたオーバーホールができる店とは、関東カメラやウメハラカメラなど。
オーバーホールは4万円くらいだが、状態が悪ければさらに上乗せとなる。
なので安いM3を買ったら壊れていたから修理に出してみると、実はかなりの負担となってしまうのだ。
なのでヤフオクやメルカリで買う場合は、せめてオーバーホール済みのものがよい。
オーバーホール済みの証明書があれば尚良し。
ネットショップや中古カメラ屋だとオーバーホールやメンテナンス状況の説明が聞けるので、割高でも信頼性は高い。
②M3のマイナーチェンジ地獄
M3は1954年から1966年まで作られたのだが、その間にマイナーチェンジを繰り返している。
そのマイナーチェンジも最近の車のようにデザインがちょっと変わる程度ではなく、ガッツリ機構が変わるレベルのものまであるので要注意。
ということで、「シャッター2回巻き上げが欲しい!」とか「ドッグイヤーのアイレットがかっこいい」なんて思ったらどうすればよいのか?
そこでライカのうまいところが発揮される。
ライカは全カメラに製造番号を刻印しているのだ。
なので製造番号を見れば、いつ作られたかがすぐに分かるので、マイナーチェンジ情報と比べれば自分の欲しいM3が買えるというわけ。
こういう小憎らしい小技がマニア心を悶えさせるわけだなあ~
こちらのリンクで番号確認ができる。
ネットでの購入でもカメラ上面の写真を見れば製造番号が確認できるので安心!
僕の選んだM3
M3のマイナーチェンジについてはカメラのナニワさんのコラムで確認。
細かな変化はあれど、一番悩むのは巻き上げの違いではなかろうか?
シャッター巻き上げの際にレバーを引くのだが、これがダブルストローク(2回巻き上げ)とシングルストローク(1回巻き上げ)の2種類ある。
ダブルストローク(1954年~1958年)
こればっかりは動画を見ないとわからないと思うので、マップカメラさんのYouTubeで確認させてもらいましょう。
ダブルストロークはM3初期の仕様。
なぜ面倒なダブルストロークになったかというと、あんまり早くシャッターを巻き上げると静電気が発生してフィルムに良くないという懸念があったためと言われている。
メリット
・巻き上げ感覚が最高
このダブルストロークのシャッター巻き上げ感覚が一番良いと言われている。
別に写真撮るのに関係ないやんけと思うでしょうが、たぶんライカ買う人はこういうのが気になって夜眠れない人種なのだ!
これはスプリング式巻上げを採用しているからで、ゆるくも固くもない絶妙な巻き上げ感覚となっている。
これが機械式カメラでできるんだから、末恐ろしい技術。
デメリット
・初期型かつメンテナンスが難しい
初期型なので古いのは当たり前だが、ダブルストロークという構造上、シングルストロークよりも複雑でメンテナンスし辛くなっている。
なので壊れやすく、修理も費用がかかるというデメリットがある。
シングルストローク(1958年~1966年)
続いてシングルストローク、1958年からのマイナーチェンジで変更となる。
静電気問題は特に悪さをしないということが判明したため。
メリット
・巻き上げが一回で済む
そりゃそうだ。
・構造がシンプルで実用的
ダブルストロークより壊れにくく、後期モデルなので状態の良いM3が多い。
デメリット
・ラチェット式なのでカチカチ音がなる
これです。スプリング式からラチェット式に変わったことで、カチカチ音がなってしまう。
さらに巻き上げた感覚も固めになっている。
その他のマイナーチェンジは形状やちょっとした機能の変化なので、ストロークの違いが一番の悩みどころ。
商品紹介でもストロークの表記があるくらいですからね。
個人的にはダブルストロークの感覚が捨てきれないが、実用性も欲しいしシングルストロークの方が少し安く購入できてしまう。この辺がライカらしい。
そんなことでまた数日悩んでいると、ライカ本にこんな事が書いてあるじゃありませぬか。
『シングルストロークの初期はスプリング式だよ』
なんとシングルストロークに変更となった1958年の製造番号No.919251〜No.929000くらいのM3だけ、シングルストロークでスプリング式という良いところ取りらしい。
「これっきゃない!」と生まれてはじめて言い放ったのは言うまでもない。
しかも偶然お気に入りに入れていた10数台のM3の中にNo.920962があるではないか!
マップカメラで在庫あり!
しかも某有名店でオーバーホール済み!
お値段20万円!
た・・・高い。
10年前の2倍近いぞ。
なぜか脳内で銀河万丈が叫ぶ!
「媚びぬ!退かぬ!顧みぬ!」
そうだ!スプリング式シングルストローク、ここで逃せばまたとない機会。
「買ってみせますよ…ヒットラーの尻尾の戦いぶり、ご覧下さい。」
「圧倒的じゃないか!我がM3は!」
M3を少しでも安く買うならマップカメラでYahooショッピングか楽天市場経由で買うべし
ということで、ちょっとおふざけが過ぎましたが本当に買いました。
20万円だったが、オーバーホール済みベストコンディション、ファインダーはVRかと思いましたよ。
実機レビューはまたいずれしますが、今回はM3を少しでも安く買うならどうすべきか・・・です。
まず言えることは、東京や大阪近辺にお住まいなら、ライカの品揃えの良い中古カメラ屋さんに行くべき。
やはり実機を触らないと詳細な確認はできません。
ですが僕のような秘境住まいはネットで買うしかない。
交通費で外付けファインダー買えちゃうしね。
そこでおすすめはマップカメラ。
品揃えが良い、商品紹介が細かい、連絡も可能、保証あり、と田舎者に優しい。
マップカメラのオンラインショップもあるが、Yahooショッピングと楽天市場にも出店している。
マップカメラのオンラインショップもポイントがあるが、Yahooショッピングや楽天市場の方が圧倒的にポイントが溜まりやすい。
Yahooショップならポイントアップキャンペーンが頻繁にあるし、楽天市場ならお買い物マラソンでフィルムカメラ用品一式揃えればけっこうなポイントになる。
今回、僕はYahooショップのマップカメラでM3を買ったのだけど、マップカメラオンラインショップ、楽天市場、Yahooショップの全てで同じ機種が売られていた。
しかしその日のセールやキャンペーンなんかでポイントの変化がとにかく激しい。
そんな時は商品コードをコピペして、各サイトで検索すれば同じカメラが見つけられる。
今回はYahooショッピングのポイントアップキャンペーンで1万円分のポイントが手に入りました。
このポイントでフィルム買うんだ!
まとめ
ライカのうまいところはちょっとしたマイナーチェンジを連発することだろう。
最近は誠心誠意資本主義にどっぷりハマった限定モデルを連発しているが、フィルムカメラ時代はユーザーの要望に応じて少しずつ改良を重ねた結果がこのマイナーチェンジ地獄であるからして、そこらへんがウケが良いのだろう。僕みたいなやつには。
M3はマイナーチェンジが多いほうだが、M4やM6はある時期の生産カメラはヤバいみたいなババ抜きもあるので要注意。
実店舗で買えないライカファンはかなり多いと思うが、大手中古カメラ店のオンラインショップであれば、細かな連絡ができたり初期不良に対応してくれるなど不安感が多少マシになると思う。
だがその分、値段は2割増しくらい。ヤフオクやメルカリで買えば安くなるのはもちろんだが、少ない情報からアタリを引くのは経験が必要だろうと思う。
あとこれはどこで買っても言えるのだが、悪質な改造品や偽オーバーホール証明書なんかもあるらしい。
まあそういうところもマニア心をくすぐるというやつなのかもしれませんね。
今回は「安く買うにはポイントを狙え作戦」でしたが、これにも弱点があります。
Yahooや楽天市場のポイントは有効期限があって、早めに使わないとパーであります。
よってせっかく貯まったポイントを早く使わなければという強迫観念が、またカメラやレンズ沼へ引き込もうとする懸念が大いにあるのです。
まあ僕はフィルムと露出計買うって決めてますけどね。
次回は実機レビュー!
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