ウユニ塩湖 サンライズ編

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AM1時半、目覚ましを止める。

結局眠ることができなかった。

サンセットツアーメンバーで食事に行き、帰って仮眠を取ろうと思ったが、初めての遠足を待つ子供のように僕はこういった時寝れたためしがない。

静まり返った午前2時のウユニの街。野犬がゴミを漁る横でツアー会社前にて待機。

いるのは日本人と韓国人だけ。

朝方だからだろうか。テンションという言葉は胸糞悪くなるくらい大嫌いであるが、ここにいる人たちはテンションガタ落ち状態だ。

少し遅れてランドクルーザーが何台も押し寄せる。ランドクルーザーの暴走族があったらさぞかし荘厳であろう。

運転手に名前を呼ばれる。やはり日本人と韓国人の名前はわかりにくいらしい。

「リ、リカちゃん!!」

まさかの僕らの運転手は先程まで一緒だったリカルドだった。

 

 

リカちゃんは暗闇の中爆走する。さっきはめっちゃ安全運転だったのに、夜のせいでドライビングハイなのだろうか?

夜のウユニ塩湖といえば、星空だ。

3800m近い標高で、何もないウユニ塩湖の上は星が燦々ときらめき、それが例の鏡張りに反射することでさしも宇宙にいるかのような光景に身を委ねることができるという。

しかし、こちらの条件は日中よりも遥かに難しい。

日本の山の天気同様、高所では夕方から天気が崩れやすい。

さらに月の明かりが強すぎると星が見えにくくなるため、新月の時期がベストなのだ。

擬似宇宙遊泳にはかなりの強運が必要なのだ。

 

 

リカちゃんランドクルーザーが湖についた。

やはり、宇宙はそこにはなかった。

なんせ今日はほぼ満月なのだから。

我々、じつは宇宙遊泳体験はそこまで興味がなかった。星はサンタ・クルス谷トレッキングで首が痛くなるほど眺めたし、これから向かうアタカマ砂漠のほうが星は綺麗だと聞いていたからだ。

天気もよく星もしっかり見えたが、月の明るさは星のつぶらな瞳を閉じさせてしまったようだ。

朝まで暇なので、写真撮影だ。

この写真撮影もなかなか難しい。

というか、新月を皆が望むのはこの写真撮影が原因である。

満月であろうと肉眼ではそれなりの星の煌きはみえるのだが、カメラとなるとなかなか難しい。

 

 

一応設定は、

オートフォーカスOFF

F値最大

・シャッター開放30秒~60

ホワイトバランス「日陰」

ISO1600くらいからノイズが酷いので、できるだけシャッター開放時間を増やしてみたが、なかなか綺麗に撮ることができない。

三脚は持っていないので、リカちゃんに椅子を借りた。

シャッターを押す際のブレもかなり影響するので、レリーズ(集合写真で使う点滅して何秒後かにシャッターを切るあの機能)で撮影する。

 

 

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結局、上手く撮れなかったので月を使って嫁さんを神々しくして遊ぶ。

 

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しかし寒い。

上はヒートテックTシャツ、ダウン、登山用ウインドブレーカー。下はボリパン、倒産する前に買ったEDWINカーゴパンツ。毛糸の帽子までかぶったが、風が吹くとかなり寒い。ツアー会社で見知らぬ人に聞いた「東京の冬くらい寒いですよ。」という言葉もあながち嘘ではなかった。

一緒のツアーの女子大生達は車に避難。外にいるのはカメラ小僧ばかりという状態に。

夜の撮影は何かと時間がかかるので寒空の下ひたすら耐えるしかない。

60秒開放撮影後カメラ内で画像処理なんか待っていると一枚撮るのに3分くらいかかるから当たり前だ。

もっと高性能なカメラが落ちていないかあたりを見渡すも、見つけるのは塩ばかり。

 

 

 

 

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4時半くらいに月が沈み始めた。

と、同時に星がドバッと浮き出てきたのだ。

月が沈みきってもなかなか太陽が出ないため、少しの間だが新月状態になる。

星が空に湧き上がり、流れ星が走り去る。

暫し寒さを忘れて、呆然と眺める。

 

 

 

 

 

 

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日が昇り始めると風もやみ、見事な鏡張りの上にいた。

朝日の昇る反対側がピンク色の帯のようになると、湖はすべてを反射する鏡になった。

これこそ、僕達が見たかった景色だ。

 

 

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あらゆるものが空に浮いているように見える。生まれてから一度も見たことがない、一面が錯覚の世界にたたずむ。

あまりの情景に脳が混乱しまいか心配なほどの世界。

白い鏡の大地と淡い桃色の空、その狭間は引き込まれるようだ。

 

 

 

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しばらく感動を反芻し、嫁さんと写真を撮る。

下手くそカメラ小僧でも、この光景では美しい写真が取り放題なのだ。

 

 

 

 

 

 

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鏡の大地は朝日を吸い込み、白い六角形を浮かび上がらせる。

どこまでも続く白き大地は地球という存在を感じさせない、一切のしがらみから開放される世界であった。

自然に没入し、ただ眼前の光景に己の意識を捧げる。

あらゆる事象を超越した空間では、感動どころかただただ圧倒させられることしかできなかった。

ウユニ塩湖はそんなところ。

 

 

 

214日、15日はひたすら食って飲んで寝た。

ウユニ塩湖を無事終え、どっと疲労が出たからだ。

クスコからここまで移動の連続であったし、ウユニ塩湖ツアーをぶっ続けでやってしまったのもある。

 

ウユニの町は何もなく、物価も高いとよく言われる。

確かに何もない。

しかし、一つだけ素晴らしいスポットを発見したのだ。

鉄道駅からまっすぐ行くと広場がある。そこの先の十字路を右にひたすら真っすぐ行く。

午後6時。そこで焼肉屋3軒一斉にオープンするのだ。

そこでは、炭で焼かれたお肉ちゃんたちから失神しそうなくらいウマそうなニオイが漂っている。

僕らも教えてもらって一緒に行ったのだが、分厚いリャマの肋肉や牛のステーキ、丸々した鳥のもも肉なんかが300円くらいで食べることができる。

僕らは次の日も向かい、たらふく食べた。

食欲が止まらなくなり、僕はこの日食欲のないワニくらい肉だけを食べたのだった。

そして神様はそんな無駄食いするやつを許してはくれなかった・・・

 

 

※夕日ツアーはこちら。