東京古本屋巡り~神保町から模索舎まで~
花の都・大東京、メガシティ東京、TOKYO・・・
ド田舎者の僕がそんな東京に何をしにいくか・・・それは古本屋巡りである。
趣味が読書→本集めになってしまったブックハンターの僕にとって、世界一の古本屋街「神保町」を率いる東京とは、まさに古本屋のメッカなのだ。
そんなメッカで立ち寄ったおすすめ古本屋と、そこで買い漁った戦利品をついでに公開してみる。
神保町
東京で一番好きな場所、それはもちろん『神保町』である!
渋谷でも原宿でもお台場でもなく、神保町である。
「世界一の古本屋街」の名にふさわしい古本屋ストリート。古本屋しかない。
「太宰治の人間失格の初版」から「手塚治虫の原画」まであり「薔薇刑の三島由紀夫」まで拝めてしまう。
神保町に行く時にブックマークしておいたほうが良いサイト
とにかく腐るほど古本屋があるのだが、店舗によってアートやスポーツ、中国古書などなど「得意分野」があるので、めざすジャンルの古本を手に入れたいのならば、ぜひとも事前に調べておくことが重要。
『BOOK TOWN 』では、PDFで地図をダウンロードできるので便利だ。
あと神保町の古本屋は10時や11時の開店が多かったり、定休日がバラバラ(日曜日休みが多い)なので、『神田神保町古書街書店リスト | きほんのき』でチェックしておきたい。
神保町でおすすめの古本屋
こんな感じで店舗の前にまで本がうず高く積まれている。
先程も書いたが、神保町は店舗ごとに得意とする本のジャンルがある。
お目当てのジャンルの店舗は人それぞれだろうが、僕のおすすめ店舗を紹介しよう。
※古本屋のマップリンクや詳細な情報は「神田神保町古書街書店リスト | きほんのき」を参照
写真集やアートは『小宮山書店』
ダイアン・アーバスやウィリアム・クラインを初め、ジョセフ・クーデルカなんかの貴重な写真集がじゃんじゃん置いてある。凄まじいラインナップとそれを超える凄まじい値段でたじろいでしまった。
アート関連は、古今東西の名だたるアーティストの本ならたいてい揃うであろう。他にも絵画やモダンアートが売られている。
大友克洋の原画が死ぬほど欲しかったけど・・・
写真集やアートは、ボヘミアン・ギルドもおすすめ。
映画パンフレットや雑誌は『vintage』
年代別の映画パンフレットが所狭しと詰まっている。
本当に所狭しなので、ジョジョ立ちしながら探す羽目になるがそれもまた神保町!
雑誌のバックナンバーもたくさんあるので、サブカルチャー好きにおすすめ。
山の本を探すなら『悠久堂書店』
料理本がかなり多いが、2階には登山関連の古本が山のように積まれている。
「アルプ」は1冊200円。もちろんラインホルト・メスナーや山野井泰史などの超人の記した名著を探すならばここへ。
・・・と、こんな感じで専門古書店が蠢いている。
正直な所、無数の古書店の森のなかで出たり入ったり迷ったりしているので、どこの店に行ったのか、どこの店で買ったのか、ほとんど覚えていない(笑)
ある程度、目的の本屋を調べておいて、あとは古本に引き寄せられるまま放浪するのがただしい神保町の歩き方だと思っている。
ちなみに古本屋巡り前の腹ごしらえは「さぼうる」のモーニングセット500円と決めている。
ロールパン2個とゆで卵とサラダと昔ながらも純喫茶コーヒーで身を清めることが、過酷な古本屋巡り前の行事となっておるのじゃ。
すごい渋い店内、この時代喫煙OKな渋すぎる店内だが、流れるBGMがスピッツだったりする。
フライングブックス(渋谷)
若者の町「渋谷」にて、えらいぶっ飛んだ古本屋がある。
ド田舎者にとって、「渋谷」というだけで気負いしてしまうので、とてつもなく入りづらいオーラが漂っている。だって渋谷だゼ!
だが一度入ってしまえばそこは宝の山。ド田舎じゃ一生お目にかかれない「シブヤ」な本が立ち並ぶ。
そんな「シブヤ的」に洒落たサブカルチャーやアートや写真集や洋書なんかがどっさりあるので、「おおっ!」となる本に出会える。
僕は後述するが、ここでずっと探していたある本に出会う。
ちなみにジャック・ケルアックなどのビートニクな本の品揃えは日本一だとか。
僕は「オン・ザ・ロード 」や「麻薬書簡」や「ギンズバーグ詩集」なんかも一通り揃えてみたが完読したものは一つもない。それで良いのがビートニク。
COW BOOKS(中目黒)
またまたド田舎者には歩くだけでも嗚咽しそうな中目黒にやってきた。
日本車がレクサスしか走っていない。うちの田舎は外車なんてゴルフくらいだぞ。
生まれて初めてロールスロイスを近くで見た。乗っている人の顔は怖くて見なかった。帰ってピケティの本を読もう。
COW BOOKSは「松浦弥太郎氏セレクトの書店」である。
セレクト書店というのが、非常にナウかったらしい。近くに代官山蔦屋書店があるのだが、ここはそんな流れの源流というわけだ。
だいたいこういう先駆的なナウい人というのは、いつまでたってもナウいらしい。洒落た雑誌にちょくちょく名が出るこの本屋に行ってみた。
たしかに渋いセレクトである。これ見よがしなセレクトである。セレクトするためのセレクトであった。
「辻まこと」とか本当にセレクトらしいセレクトである。
例えるならば、BOOKOFFがスターバックスコーヒーならば、COW BOOKSは渋いオヤジが10分位かけてネルドリップしてる純喫茶である。
新宿の死ぬほど入りにくい本屋
死ぬほど入りにくい店というのは古今東西たくさんあるが、魔窟新宿にある本屋は僕の人生でもトップクラスに入りにくい店であった。
あまりに入りづらいので、写真を撮るのも忘れてしまった。
模索舎
店構えから他者を受けつけない非常に入りづらい本屋。
扱っている本は、マルクス的で毛沢東的でスターリン的なレイシストしばき隊的の三里塚闘争的かつアナキズム的で大杉栄も逃げ出しちゃう的「つげ義春」である。
新宿騒乱が目の前で起きているような錯覚の中、奥まで入っていくとここでしか見れないような活字が・・・
でもでもそこまで偏っているわけでもなく、月面での軌道修正的に右寄りな本も置いてあるのでご安心を。
僕は趣味である本の収集で、とりわけご贔屓にしているのがこの「左翼本」である。特に学生運動時代の本は、表紙や題名や写真だけで胃液が出てきそうな濃厚かつ三次元殺法的表現ばかりなので大好物である。読む気が一瞬で失せる剥き出しのエゴイズム、それが学生運動本である。また暇な時に紹介してみよう。
模索舎はそんな左翼本のガチモンのガチモンが揃っていた。店を出たあと、公安が付いてこないか二回ほど振り向いてみた。気分は学生運動。
今回の戦利品
基本的に大衆向けの文庫本が大好きだ。
今回の文庫本ちゃん達のラインナップを見てもらえば、「サピエンス全史」に感銘を受けたであろうことは、賢明な皆様にあっては即座に察しがつくだろう。
「本の収集」というのは知識欲と共にある。それはWikipediaのように枝分かれして増殖するアメーバのようだ。最近はアメーバが太りすぎてAKIRAの鉄雄くんのようになってしまい嫁からデコ助野郎と罵られそうだが。
サピエンス全史のせいで、今まで脳内ブックマークに控えていた梅棹忠夫先生やウォーラーステインなんかがヒットした。今西錦司や川北稔の名があるのはそういうことだ。
木田元先生は、調子に乗ってハイデガーを手に取り12ページで放り出した僕に哲学的愛の手を差し伸べてくれた恩師である。もちろん会ったことはない。木田元先生は梅棹忠夫と読んだ時期がリンクしており、サピエンス全史→梅棹忠夫→今西錦司という流れに割って入った感じだ。
そう、こんなことはよくあるのだ。
ペドロ・パラモや枯木灘は小説である。正直な所、小説はあまり読まない。
「百年の孤独」を四苦八苦して読んだあと、「もう小説はこれだけでいいや」と心底痛感したからだ。
だが、この2冊はおそらくBRUTUSかなんかのオススメ本に載っていたのであろう。こう、なんつうか、ああいう都会的なニヒルな著名人が「これ知ってるよね」って感じでさらりと差し出す本に弱い。彼らは正直、知識人でもなんでも無くそういうポジションに上手く居座るヤクザみたいな存在なのだが、BRUTUS的知識人というのは僕のような体系的な学のない本の収集家にはうってつけな指標になっている。
「中上健次を薦める俺、かっこいい!」みたいな?
神保町で集めた映画パンフレット。
これが300円とかで売っているのは、まさに異常である。ありがとう神保町!
とりあえず好きな映画を揃えてみた。やはりタランティーノのような部屋に飾ってカッコイイ作品のパンフレットは高かったり在庫切れでした。考えることは同じようだな。
昔のパンフレットのカビ臭さや見辛いカラー文字なんかがたまらない。
登場人物紹介の写真のチョイスに時代を感じるのであった。
写真集はこちら。
ウィリアム・クラインはこの記事にあるように、ちょうど写真展に行ったあとだったので探していた。
もちろん、ウィリアム・クラインの写真集は犯罪的にバカ高い。先程の小宮山書店やボヘミアン・ギルドにも置いてあったが、一冊数万円というお値段には参ったの一言。
左の写真集は、30年ほど前に日本で行われた写真展で売られていたようだ。お値段、1500円。印刷も紙もチープではあるが、おそらく世界中探しても僕に一番近いウィリアム・クラインであろう。
右の植村直己の写真集。
フライングブックスで見つけた瞬間、久しぶりに「おおっ!」と声が出た。
本の収集家であれば、お気持ちはわかっていただけるであろう。
数年に一度、声が出るような出会いがあるのだ。これが麻薬中毒のように本を集め続ける原動力になっている。
この本は日本が誇る冒険家・植村直己の冒険を詳細にカラー写真と共にお送りする素晴らしい写真集である。
植村直己は戦後日本人でもトップクラスな傑物であると思っているのだが、最近の人達にはあまり知られていないのが悲しいところ。
かなり探していたのだが、定価7000円、1991年発売の大型本は、巷にもオンライン上にもほとんど出回っていなかった。
これは我が蔵書でも特等席に鎮座していただこう!
これがあるから本集めはやめられない。
まとめ
BOOKOFFの良いところは、「本は見た目が九割」なところである。
最近はせどり対策のせいでだんだん価値がわかるようになったようだが、昔は古かったり黄ばんでいたら迷わず100円だった。
神保町などのガチの古本屋は、価値がよ~くわかっているので、値段もそれなりにする。
そこが悩ましい所だがBOOKOFFやオンラインで買えないようなものに『出会えること』が古本屋巡りの醍醐味でもある。
そして古本屋巡りは、東京こそメッカだ。地方ではなかなか見られない本がわんさか積んである。もちろん9割は高すぎて買えないのだが、それもまた古本屋巡りの醍醐味なのだ。
次行くときは、もうちょっと大きなバックを持っていこう。
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