「サピエンス異変」を読んで現代生活のヤバさを知る

サピエンス異変――新たな時代「人新世」の衝撃

サピエンス異変――新たな時代「人新世」の衝撃

要約すると、「現代人を苦しめる肥満、糖尿病、腰痛、近眼、歯痛などなどは、全て現代の生活・・・特にデスクワークによる座りすぎが原因」であり、このブログでおなじみの『人間=狩猟採集生活に適した生き物説』にピッタリの内容だ。

 

 

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結局のところ、「サピエンス全史」でもあったように我々人間はマンモスを追いかけ、木の実や果物を拾い集め、日が昇ったら起きて日が沈めば眠る生活に適合するようにポンと生まれる。

だが、生まれてみたら世界は一変していた。

学校教育では45分黙って硬い椅子に座り続けることが求められ、スマートフォンやパソコンを使いこなし、満員電車で通勤し、仕事に時間を拘束された生活を送っている。

食べ物はとても改善した。いつでもどこでも24時間カネさえ払えば何でも食べることができる。だが炭水化物多めの柔らかい添加物まみれの食べ物は、いくら喰っても本来の満足感はなく、かわりに異常な糖質の摂取により内蔵が制御不能となり肥満や糖尿病になる。

これでイカれないのが不思議だ。というのが僕の信ずるところでもある。勝間和代もびっくりしたことは言うまでもない。

 

座り過ぎや栄養の偏りによる弊害という現代のミスマッチ病に対して、どう対処すればよいのかを要約して書いてみたいと思う。

 

 

 

 

狩猟採集生活時代の生活に近づけるためには

現代人を苦しめる病の総称は『ミスマッチ病』である。

狩猟採集生活に適応した脳や体は、本質的に現代生活には合わない。

なので狩猟採集生活に近づけることが単純明快な解決方法である。

実際に野山を駆け巡り狩猟採集生活をしようものなら、それが本質的な生き方であるにもかかわらず現代では不可能に近いが、本書に書かれている解決方法をまとめてみる。

 

とにかく歩け!

初期人類は一日8~14km歩いたという。

人類は二足歩行で歩くことにより進化した(※詳細はこちらから)

現代人はほとんど歩かず、長時間座りっぱなしになっている。

そのため背骨と大腿骨を繋ぐ腸腰筋という太い筋肉が短縮し、骨盤が前傾してしまう。

骨盤が前傾すると重心を戻すために背中が曲がり慢性的な腰痛を発症する。

この腰痛は薬や手術をしても意味はない。身体の土台が崩れているのだから、水道管が壊れているのに必死で床を拭いているようなものだ。

 

トレーニングはいろいろあるが、一番効率が良いのは「早歩き」だ。

早歩きをすることで、腸腰筋や大殿筋という二足歩行や姿勢を維持する筋肉が鍛えられ、骨や靭帯に刺激がいき骨密度などを高めてくれる。

特に椎間板の健全性を高めてくれるのがポイントだ。筋肉と違って代謝が遅い骨や関節は、適度な刺激を与え続けることで骨密度等が強くなり、血流が促されることで衝撃にも強くなる。

なので軽めの有酸素運動を長時間することがベストだ。

歩行の場合は、目安として一日1万歩といわれている。これはもちろん初期人類の一日8~14km歩いていたからだ。1万歩なら7kmはあるので、現代人の目安としてはちょうどよい。

ちなみにウエイトトレーニングは荷重が強すぎ、水泳や自転車は骨密度を上げるような刺激はない。が、しないよりはマシ。

 

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そこでおすすめはトレイルランニング。

他の本でも一番人間に適した運動としてあげられている。

不整地の地面を走ることは脳や足に適しており、自然の中を走ることは最高のマインドフルネスだ。まさしく狩猟採集生活にタイムスリップなのだ。

もちろん強度のランニングは、膝などの関節に負担は強い。

一番理想的なのは、山の中を走ったり歩いたりするインターバルトレーニングだろう。これなら筋肉と心肺機能を効率良く鍛えられる。

 

だが早歩きだけをすれば腰痛が治るとは限らない。

腰痛は腸腰筋や椎間関節だけでなく、全身状態は影響しているからだ。運動やストレッチは効果的だが、長時間座り続ける生活をどうにかしなければならない。

 

 

 

座りっぱなし生活をやめよう!

本来人間の座り方というのは、俗にいう「うんこ座り・ヤンキー座り」らしい。

椅子に座って作業するのが一般化されたのは、産業革命以後たった数百年である。

これを裏付けるのは、おしりを触ってみると良い(注:自分のケツにしましょう)

手や足の裏のように荷重のかかる部位は「淡明層」と呼ばれる摩擦に強い特殊な層でできている。踵がザラザラするあれね。

でもおしりは違う。本来座る生き物であったなら、おしりも淡明層になっているはずだ。

 

そんな人類は、デスクワークという拷問にあえいでいる。

長時間座る場合、正しい座り方なんてものはない。なぜなら人間は本来長時間座らないからだ。

長時間座ると、前述の筋肉が短縮するだけでなく、全身が弱くなり、身体の動かし方がおかしくなってしまう。血流も低下するため、糖尿病や心臓病のリスクも高い。

実験では、長時間座っている人のテロメア(染色体を守る保護キャップ)が短くなるという結果もある。また長時間座る仕事をしていた人は、引退後老人ホームに入る割合がそうでない人に比べ40%高い。

著者は運動や食生活以上に大切な腰痛対策とは、「週40時間から50時間も一箇所にいなければならないような仕事には就かないこと」と述べている。

そんな事も言ってられないので、他には立ち机を利用する等の対策もあるが、日本人には結構厳しい?

だが一番効果的なのは、軽度で長時間の全身運動と座りっぱなし環境を辞めることだ。

 

 

ベアフットシューズを履こう!

BORN TO RUN 走るために生まれた ウルトラランナーVS人類最強の“走る民族

走ることが大嫌いな僕がランニングを始めるきっかけになった本」の中で紹介した『BORN TO RUN』という本で書かれていた内容と全く同じ。

現代人はランニングシューズのおかげで快適に走れるようになった。靴底の高密度で柔らかいクッションのおかげで衝撃を感じなくなったからだ。

しかし、そのせいで本来の足の動きが制限されている。

著者曰く「ランニングシューズ=ギプス固定」

 

本来人間の足は弓のようなアーチがあり、曲げる/伸ばす以外にも回旋ができる3次元の関節構造を持っている。

しかしランニングシューズはこの動きを制限し、本来の筋肉や関節の動きを阻害してしまい、扁平足を量産している。

詳細はリンクに書いてあるのでどうぞ。

 

 

対策としては裸足で歩くことが一番なのだが、それでは完全狂人扱いなのでベアフットシューズがオススメ。

靴底(アウトソール)が薄くてできるだけ平らなものが良い。

ビブラム ファイブフィンガーズ」のような5本指タイプが一番良いが、日常使いはなかなか難しいデザイン。

ベアフットシューズで歩けば、ふくらはぎがすぐ筋肉痛になるだろう。

そして普段、シューズによってどれだけ足が甘やかされているか知ることになる。

僕もベアフットシューズでいきなり8km走って一週間まともに動けなくなった。

ベアフットシューズを履けば、足の3次元の動きをすべて実施でき、体重移動をスムーズに行うことができる。なのでランニングフォームの改善にも役立てる。

まあ、こればかりは体験しないとわからないだろう。かなり驚きます。

 

 

 

肥満にならない生活習慣を!

肥満は万病の元だが、現代生活では避けがたい病気になってしまっている。

現代は狩猟採集生活ではありえないくらい簡単に食べ物が手に入る。

狩猟採集時代の人類は、繰り返される寒冷化により人口が世界で1万人になるまで激減したことがある。その原因は間違いなく飢餓だ。

しかし今は飢餓で死ぬことは稀で、食べ過ぎによって人は死んでいく。

 

狩猟採集生活に適応した人間は、食べ物の誘惑に弱い。

しかし現代の高カロリーで砂糖まみれの食べ物に身体は適応していない。狩猟採集時代の人間が一年で食べる量の砂糖を、現代人は一日で摂取している。

内臓が対処できないのは当然で、糖尿病患者が増え続けている。

 

肥満の原因は一口には言えないが、現在新たな問題が指摘されている。

現代の食物は、一昔前と比べると全く別物になっているのだ。

例えば人参は、サイズがかなり大きくなっているが栄養素が大きく偏ってしまった。

これは二酸化炭素の増加や品種改良など様々な要因があるが、現代の食物はカロリーだけがやたら多くなりその他の栄養素は減っている。

なので、この偏った栄養の食べ物を腹いっぱい食べても、ミネラルなどのその他必要な栄養素が摂取できていないと更に食べたくなってしまう。これはマウス実験でも立証されている。

 

対策としては、腸内フローラの改善だ。

腸内細菌が人間の脳と情報をやり取りしており食欲などを操っているという説が最近話題(仕組みの全貌はわかっていない)

なので肥満対策として腸内フローラ改善はかなり効果的だという。

生の野菜や果物、アブラナ科の野菜(ブロッコリー、ケール、キャベツなど)、発酵食品が良い。

またカルシウムも骨だけでなく、腸内フローラに良いとのこと。

 

肥満対策としては、その他にも加工食品や添加物を避ける、上述のウォーキングなどの運動が挙げられている。

う~ん至ってシンプルかつそれができれば太らないよという感想が多そう。

 

日光を浴びよ!

日光にあたりすぎは良くないが、全く日光にさらされないのは有害だ。

骨を強くするビタミンDの摂取は日光からである。

現代人は、学生時代から社会人に至るまで、極力陽の光が当たらない空間に押し込められる。

 

 

 

まとめ

サピエンス異変――新たな時代「人新世」の衝撃

サピエンス異変――新たな時代「人新世」の衝撃

  • 作者: ヴァイバー・クリガン=リード,水谷淳,鍛原多惠子
  • 出版社/メーカー: 飛鳥新社
  • 発売日: 2018/12/20
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログを見る
 

「人間=狩猟採集生活に適応している説」を色んな角度から攻めて現代病を斬るスタイルで非常に面白い本だった。

また外国人のこういった本によくある話が脇道にそれまくる問題(ジャレド・ダイアモンド、スティーブン・ピンカーなど)がほとんどないので読みやすかった。

 

だが現代病の原因が現代社会の生活にあるのは重々わかったが、その対策については至ってシンプルの極み。

まあ僕は個人的に運動もしているし仕事柄けっこう歩くのでまだマシだが、普通の生活をしている人にはかなり難しいだろう。

筆者も述べている通り、農耕定住生活が始まった頃からすでこの兆候が現れており、現代まで延々と苦しんできたことでもある。

なので人間本来の営みを考えると、現代ではそんな生活を送っている人ほぼ絶滅しているといえるだろう。

食生活や運動習慣は何とかなるかもしれないが、仕事や学校で急に立ち上がって走り回ったりすれば社会不適合者扱いだ。

現代への適応が人間本来の生活への反逆となってしまっているところが、現代人の悲劇かもしれない。

 

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